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2005年02月25日

学校評価―情報共有のデザインとツール

■ 書籍情報

学校評価―情報共有のデザインとツール   【学校評価―情報共有のデザインとツール】

 本書の基本的スタンスは、「学校を「与えられたもの」と考えるのではなく、「いい」学校をみなでどう作っていゆくかを「コミュニティの問題」として捉える」というところにあります。編著者が、教育改革国民会議の委員をしていたときに聞いた「公立学校は、「お客が来ることが決まっているまずいラーメン屋」のようなもの」というのは、「与えられたもの」としての学校の「まずさ」を表していると思われます。そして、学校をコミュニティの問題として捉えた内外の事例や自らの活動を交えながら、「コミュニティと教育」の問題について論じています。

 本書では、文部科学省から提示された「学校教育への批判」を次の3グループに分けています。

 ・問題点1:硬直的、画一的、柔軟性に乏しい
 ・問題点2:閉鎖的、地域や保護者との連携が不十分
 ・問題点3:自ら改革に取り組む意欲が不足している

そして、これらに対する教育改革を次の3つのキーワードにまとめています。

 ・キーワード1:多様な選択肢
 ・キーワード2:信頼される学校・アカウンタビリティ
 ・キーワード3:開かれた学校

 これらを踏まえて、学校評価が必要になった理由を、政府(国・地方)の独占状態に教育を任せておいてのでは上手くいかないのではないかと皆が気づきだしたので、「顧客」に十分な情報が与えられることが必要となったためとしています。そして、3つのキーワードの背景にある教育改革の潮流の原点を「顧客起点」と「成果起点」の発想にあるとしています。

 本書は、学校評価システムのデザインにあたり、新しい社会運営についての以下のモデルが有効だとしています。

○3つのソリューション・モデル
 ・権限に基づく問題解決―――ヒエラルキ・ソリューション
・市場を通じた企業活動による問題解決―――マーケット・ソリューション
 ・コミュニティによる問題解決―――コミュニティ・ソリューション

 教育問題に対するソリューション・モデルとして、本書が最も重点を置いているのが3つ目のコミュニティ・ソリューションのモデルです。

 本書には、「コモンズ型学校評価システム」という言葉が登場しますが、「コモンズ」とはどのような意味でしょうか(田中康夫知事が関与しているのでしょうか・・・?)。本書ではコモンズを以下のように位置づけています。
 「コモンズ」:メンバーの間に自発的に協力したという体験や様々なルール(=社会規範)が自発するプロセスを共有することによって「コミュニティのメモリー」が蓄積され、ソーシャル・キャピタルが形成される。そのようにして蓄積された「情報の共有地」
 そして、コミュニティ・ソリューションを機能させる力として、ソーシャル・キャピタルが重要であるとしつつ、この議論は、「鶏と卵」の議論になりやすいことも指摘しています。それは、「いいコミュニティ(ソーシャル・キャピタルの蓄積)があるからいい学校ができるのか、いい学校を作ることを目的にしたネットワーク活動があればソーシャルキャピタルも高まるのか」ということです。

 最終章となる第4章の評価システムの部分では、「コモンズ型評価」の二つの実践事例を取り上げていますが、これらは、まちづくり全般にも応用可能な汎用性を持っています。「あまり教育には関心がない」という方もぜひご一読ください。特にSQS(Shared Questionarie System)のパワーは実際に体験してみるとビックリしますよ(私も先日行政経営フォーラムの例会で「実演」してもらいました。)。


■ 個人的な視点から

 なぜ「学校」なんでしょうか? なぜ「教育」なのでしょうか?
 もちろん著者らがこの問題にかかわったきっかけや動機は様々だと思いますが、行政経営の観点から考えたときに、このテーマは非常に示唆に富んでいます。
 著者らが「コミュニティ・ソリューション」の適用対象として教育を選んだ、という逆読みを敢えてすると、以下のような点が指摘できます。

フリーライダーが生じにくい:
「教育」は、一方的にサービスの受け手になっているだけではその効果が減少するので、行政サービスの中でもフリーライダーが生じにくいこと(フリーライドしようと思えばある程度はできるんですが。)。

誰もが当事者意識を持ちやすい:
「福祉」は将来誰もが世話になるサービスであるとは言え、若い世代には実感が湧かない他人事と思われやすいのに対し、「教育」は人生の初期において誰もがサービスを受けており、自分のこととしてイメージしやすいこと。
ソーシャル・キャピタルと結びつきやすい:
小学校区、中学校区というエリアが元来コミュニティのエリアと重複することが多く(小学校を運営できる人口に集落が集まったのが明治の合併でできた「村」、新制中学校を運営できる人口に村が集まったのが昭和の合併でできた「町」という元もとの自治体の成り立ち上)、学区の単位でソーシャル・キャピタルが蓄積していること。

 これらの理由から、「コミュニティ・ソリューション」が最も適用しやすいのが学校の問題であると言えるのではないかと思います。

 以上、うがった見方をしてしまいましたが、著者らが目指しているのは、この学校評価をきっかけにしてコミュニティ・ソリューションを地域の問題解決に拡大して行くことにあるという点は、普段の話からも間違いないと思います(金子教授以外は千葉商大の同じ研究会でお世話になったので・・・)。


■ どんな人にオススメ?
 ・「学校教育を何とかしなきゃ」と思っているお父さん、お母さん
 ・「教育なんて専門じゃないから関係ないよ」と思っている公務員


■ 関連しそうな本

 金子 郁容 『ボランタリー経済の誕生―自発する経済とコミュニティ』
 小塩 隆士 『教育を経済学で考える』 2005年02月13日
 フィリップ コトラー, エデュアルド L. ロベルト (著), 井関利明(監訳)『ソーシャル・マーケティング』 2005年02月14日
 ダグラスC. ノース (著), 竹下 公視 (翻訳) 『制度・制度変化・経済成果』
 ロバート・D. パットナム (著), 河田 潤一 (翻訳) 『哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造』 2005年03月03日
 ローレンス・レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳) 『コモンズ』


■ 百夜百マンガ

コータローまかりとおる! 【コータローまかりとおる!】

 せっかく教育の話なので学園モノです。でも部活(というか格闘)と生徒会の話ばかりで授業のシーンなんてあるのか?
 少年マガジンの「こち亀」と言われた『まかりとおる』ですが、連載開始は1982年!
 googleで調べてたら「オヤジマンガ図鑑」というblogを見つけました。なんともネタがかぶりそうです。

投稿者 tozaki : 2005年02月25日 06:00

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