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2005年04月21日

電子自治体―パブリック・ガバナンスのIT革命

■ 書籍情報

電子自治体―パブリック・ガバナンスのIT革命   【電子自治体―パブリック・ガバナンスのIT革命】

  榎並 利博
  価格: ¥1,890 (税込)
  東洋経済新報社(2002/06)

 本書は、『電子自治体』というタイトルはついていますが、「IT化でこういうことができるようになりますよ、便利になりますよ。」ということを書いているものではありません。むしろ、IT化という切り口から、自治体や自治体を取り巻く環境における問題点を浮き彫りにして行くことに主眼が置かれています。その意味では、2000年に出版された前著『自治体のIT革命』での著者の主張をさらに展開したものになっていると言えるでしょう。
 なかでも、特に筆者が力点を置いているのは、市民参加と幸福感というテーマです。本書では、スイスにおける州ごとの直接民主主義の度合いと幸福感に関する調査を引用していますが、それによると、「直接、行政や政治へ参加できる制度や地方分権が整っている州ほど、市民はより多くの幸福感を感じている」という結論が指摘されています。
 シンクタンクのコンサルタントという著者の職業柄、他の章では、自治体経営の概念やCRMの事例なども紹介されていますが、これらの帰結は、ITをツールとして市民参加、市民へのエンパワーメントを実現しよう、という部分に集約されています。自治体のIT化そのものよりも、ITをツールとしてどのような社会を実現したいか、ということに関心がある方にお奨めしたい一冊です。


■ 個人的な視点から

 IT(Information Technology)やICT(Information and Communication Technology)によって社会はどう変わるのか、というテーマは様々な領域に波及する問題で、政治学や経済学以外にも社会学や心理学も絡んでくるので非常に奥深いのですが、政治や行政に限定してみても、近年多くの研究成果が出版されるようになりました。以前は日本語の文献が少なかったことを考えるとうれしい悲鳴です(特に財布が悲鳴を上げています。)。
 現実の政治においても、インターネットが投票行動、特に国政選挙の投票行動に与える影響は大きいと思います。また、市民が行政に関する情報を探す場合、例えばゴミの捨て方から子供の予防接種についての情報を探す場合には、以前ならば自治体の発行している広報紙を読むか、市役所に電話して問い合わせていましたが、最近は市役所のホームページから調べるか、その他の情報源、例えば個人サイトや掲示板から情報を得ることが多くなりました。
 「市民参加」という言葉からは、自分とは関係のない特殊な世界、一部の物好きな人たちがやっている活動、という印象を受けてしまいますが、現実に私たちが行っているネットでの情報収集という行動の一歩先くらいには「市民参加」の方法が整いつつあります。例えば、パブリックコメントや自治体の電子会議室など、探せば事例はいくらでもありますので、関心のある方は藤沢市や三重県の会議室などをのぞいてみてはいかがでしょうか。


■ どんな人にオススメ?

 ・ITをツールとして社会変革を実現したいと思っている人。
 ・市民参加なんて自分には縁がないと思っている人。


■ 関連しそうな本

 榎並 利博 『自治体のIT革命』
 D.ヘントン, J.メルビル, K.ウォレシュ (著), 小門 裕幸, 榎並 利博, 今井 路子 (翻訳) 『社会変革する地域市民―スチュワードシップとリージョナル・ガバナンス』
 岩崎 正洋 (編) 『サイバーポリティクス―IT社会の政治学』 2005年04月09日
 岩崎正洋(編) 『eデモクラシー』
 横江 公美 『Eポリティックス』 2005年02月11日


■ 百夜百マンガ

菫画報【菫画報】

 作品の一応の舞台は高校の新聞部なんですが、R・田中一郎君が光画部の部長だったことくらい部活とは関係のないところで進んでいく会話の「間」がたまりません。
 全体に白っぽい、気の抜けた、力の抜けた線で描かれたエピソードの数々は、読み出すと止まりません。

投稿者 tozaki : 2005年04月21日 07:00

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