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2005年04月19日

市場と企業組織

■ 書籍情報

市場と企業組織   【市場と企業組織】

  O・E・ウィリアムソン(著), 浅沼万里, 岩崎晃(訳)
  価格: ¥6,300(税込)
  日本評論社 (1980/11)

 本書は、階層型の企業組織に関して、取引コストの観点から分析を行ったものです。ロナルド・コースは、1937年の論文「企業の本質」において、企業組織が以下の2つの点で取引コストの削減に貢献していることを述べています。
 (1)適切な値付けを行う。
 (2)多数の完全な契約を単一の不完全な契約(雇用契約)をもって置き換える。
 著者は、本書においてこの分析をさらに展開し、階層組織の優位性として以下の点を指摘しています。
 ・限定された合理性:階層組織は、意思決定の専門化とコミュニケーション費用の節約とを可能ならしめることによって、合理性の限界を広げる。
 ・機会主義:階層組織は、追加的な誘因と統制の諸技法を、より選択的な仕方で行使することを可能ならしめ、それによって少数主体間の機会主義を抑制することに役立つ。
 ・不確実性:階層組織は、相互依存性をもった複数の単位が予期しなかった偶然事業に対して調整の取れた仕方で適応することを可能ならしめ、かつさらに不確実性を「吸収」することに役立つ。
 ・情報の偏在:階層組織は、監査を行う根本法規上の権限を拡張し、それによって(少なくとも見込みのうえで)自律的な主体の間に生じる情報ギャップを狭める。
 ・雰囲気:交換の市場型諸形態とくらべて、階層組織は、少なくとも若干の目的にとっては、より打算性の少ない交換の雰囲気を提供する。

 450ページの大著であり、翻訳も、とても読みやすいものではありませんので、かなり読むのに骨の折れるものではありますが、組織論の古典(原著の出版は1975年)として、一度は目を通しておきたい一冊です。


■ 個人的な視点から

 本書を読むことになったきっかけは、『ニュー・パブリック・マネジメント  理念・ビジョン・戦略』や『The New Public Management in Action』において、NPMの理論的背景として挙げられていたことです(さらに遡れば、Christopher Hoodの1991年の論文、“a public management for all seasons”で紹介されていました。)。
 6300円という値段にだいぶビビリましたが、いろいろな文献で参考文献として挙げられていたため、「読んでおけば使えるに違いない」と思って読み始めたのですが、非常に骨が折れました。最初は何のことやらさっぱり読んでも分からなかったからです。「古典」には往々としてあることですが、まだ概念が一般化されていない頃のものなので説明が冗長(本当は厳格とか丁寧ということなのですが)で、しかも著者自身もあれこれと思いを巡らせながら書いているので、教科書のようにコンパクトに効率よく読者の頭に流れ込んでくる、というものがありません。
 しかし、我慢して読み進めているうちに、著者の言葉や論理展開のリズムがつかめるようになると、著者の思考の過程が読者の頭に再現されることになるので、だんだんと理解のスピードが上がってきます。感覚的には読みはじめと終わりでは倍くらいスピードが違うのではないかと思うほどです。よく「読書術」などで、同じ著者の作品を続けて読みなさい、と言っているのはこういうことなのかと思いました。


■ どんな人にオススメ?

 ・NPMの基礎になっている組織論の古典を理解したい人。
 ・忙しい人にはあまりお奨めしません。


■ 関連しそうな本

 ロナルド・H. コース (著), 宮沢 健一, 藤垣 芳文, 後藤 晃 (翻訳) 『企業・市場・法』
 ハーバート・A. サイモン (著), 松田 武彦, 二村 敏子, 高柳 暁 (翻訳) 『経営行動―経営組織における意思決定プロセスの研究』
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳) 『組織の経済学』 2005年01月24日
 青木 昌彦 (著), 永易 浩一 (翻訳) 『日本経済の制度分析―情報・インセンティブ・交渉ゲーム』 2005年04月01日
 オリバー・E. ウィリアムソン (編集), 飯野 春樹 (翻訳) 『現代組織論とバーナード』
 大住莊四郎 『ニュ-・パブリック・マネジメント  理念・ビジョン・戦略 』 2005年01月23日
 Ewan Ferlie, Lynn Ashburner, Louise Fitzgerald, Andrew Pettigrew 『The New Public Management in Action』


■ 百夜百マンガ

ハッピーピープル【ハッピーピープル】

 この作品にはいろいろな人間の怖い顔が出てきます。追い詰められた人の顔や怒っている顔など様々なのですが、一番怖いのが笑っている人の顔です。血まみれの臓物を書いても乾いた平面的な描写で生理的な怖さはないのですが、鋭利な刃物のように乾いた笑顔を描かせたらこの人の右に出る人はいないくらいです。
 ストーリー的には思い付きっぽいものが多いのですが、悪夢系のビジュアル、しかも人間の怖さにこだわる作品は独特のものです。

投稿者 tozaki : 2005年04月19日 06:00

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