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2005年06月03日

ある理論経済学者のお話の本

■ 書籍情報

ある理論経済学者のお話の本   【ある理論経済学者のお話の本】

  ジョージ・A. アカロフ (著), 幸村 千佳良, 井上 桃子 (翻訳)
  価格: ¥2,940 (税込)
  ハーベスト社(1995/03)

 本書は、1970年に発表された論文"The Market for Lemons: Quality Uncertainty and the Market Mechanism"を含む8本の論文を収めた論文集です。「レモン」とは、質の悪い中古車のことを言います。アメリカでは、中古車の取引は専門業者を通さずに個人取引で行われることが多く(少なくとも当時は)、また、中古車の整備状況は外見からは見分けがつきにくいために、見た目は良いのに質の悪い車(=レモン)を掴まされることが多いそうです。そのため、レモンを掴まされるのを恐れて、成立するはずの取引が行われなかったり、本当に整備状況の良い車(「マロン」と言うらしいです。)が本来の価値よりも安い値段でした取引されない、ということが起きてしまいます。つまり、売主が持っている自動車に関する情報の量に比べ、買主が入手できる情報の量が少ないために、取引が阻害されているのです。
 著者はこの「情報の非対称性の問題」を上記の短い論文にまとめ、その後の情報の経済学や契約理論の発展に大きく寄与しました。本書に収められた論文は、中古車以外にもカースト制や「ラット・レース」(過酷な労働競争)など、それまでの経済学では分析の対象とされて来なかった非市場的な社会現象を経済学で分析する道を切り拓きました。本書は、経済学の可能性を大きく広げた記念碑的な一冊と言うことができます。


■ 個人的な視点から

 今ではミクロ経済学の教科書でも「レモン」の例がよく使われるようになりましたが、ところで、質の悪い中古車を「レモン」と呼ぶのはなぜでしょうか。本書の訳注によると、「アメリカ人の酸っぱいものを嫌う思考を反映している」のだそうです。著者本人にも確認したというこの訳注は本書の一つの見所となっていて、著者本人が日本語版の序文の中で言及しています。16ページの本文に対して訳注が10ページもあるのも異例ですが。
 ちなみに、質の良い中古車を「マロン」と呼ぶのは、「レモン」に対する韻も踏んでいるのかな、と思います。
 なお、情報の非対称性の問題への対策としてはどのようなものがあるのでしょうか。本書では、保証をつけること、ブランド、免許などに言及されています。現在の日本では、Yahoo!オークションやAmazonのマーケットプレイスが中古品に関する個人取引の市場として機能していますが、ここでは取引相手による評価が表示されるようになっています。このような評判のメカニズムも「ブランド」の一変形と言うことができるかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・ヤフオクで期待はずれのものをつかまされた経験のある人。


■ 関連しそうな本

 伊藤 秀史, 小佐野 広 『インセンティブ設計の経済学―契約理論の応用分析』 2005年02月26日
 神戸 伸輔 『入門 ゲーム理論と情報の経済学』
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳) 『組織の経済学』 2005年01月24日
 エドワード・P. ラジアー (著), 樋口 美雄, 清家 篤 (翻訳) 『人事と組織の経済学』 2005年04月05日
 伊藤 秀史 『契約の経済理論』


■ 百夜百マンガ

土曜ワイド殺人事件【土曜ワイド殺人事件 】

 「天才×天才」というと大げさですが、ボケるときの間の取り方が近い二人が競演しているのがとても楽しそうです。
 「脚本家や映画監督が、他の人の作品に俳優として参加してアドリブを飛ばしまくる」というような姿を連想してしまいました。

投稿者 tozaki : 2005年06月03日 07:00

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