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2005年07月22日
ベンチャー企業の「仕事」―脱日本的雇用の理想と現実
■ 書籍情報
太田 肇
価格: ¥714 (税込)
中央公論新社(2001/01)
本書は、日本の雇用問題の「救世主」とされているベンチャー企業について、そこで働く人の仕事面からその実態に迫り、また、ベンチャー以外のいわゆる「日本的雇用」に対してのヒントを提供するものです。
まず前半部分(第1章~第3章)では、ベンチャー企業の「光」の部分を取り上げ、閉塞感のある大企業では得られない仕事のやりがいや、地方・女性・高齢者という大企業では「周辺」に追いやられてきた条件をプラスに転じさせることができること、「組織人」ではなく個人を軸にした「仕事人(しごとじん)」としての働き方、「公私融合」的な私生活とのバランス、より市場を指向した「インフラ型組織」などが語られています。
人が職業生活に求めている価値は、Goalに関する「G価値(夢や目標)」、Processに関する「P価値(仕事のプロセス)」、Stability(安定)やSafetyに関する「S価値(生活の維持)」の3つに分類することができるとされています。ベンチャー企業ではこのうち、G価値とP価値に関して高い満足を得る代わりに、一般的には生活の安定に関するS価値の面では不利と考えられがちですが、「仕事以外の生活との両立」という点でS価値を捉えると、融通の利く勤務時間や転勤の少なさは不利とは言い切れないと述べられています。
また、ベンチャー型のワークスタイルとして、一般的な仕事のスタイルが「行動→成果」という結びつきを持つのに対し、創造的・革新的な仕事の場合は、(1)「行動→思考→成果」または(2)「思考→行動→成果」という結びつき方をすることが述べられています。そのため、組織主導で「行動」をコントロールするやりかたでは創造的・革新的な仕事の成果には結びつきにくく、この点でも個人主導のベンチャーの強みが述べられています。
一方、ベンチャー企業の「影」の部分については、実態調査を元に、ベンチャー企業の厳しい実情が解説されています。まず、人材の不足・ミスマッチの問題や、「成果主義」の理想に対して日本型能力主義になってしまう現実、社員にとっては「ハイリスク・ローリターン」な報酬体系、「ベンチャー」という理想はよそに現実にはサラリーマン出身のガチガチの組織人である中高年が社長になっていること等が述べられています。
本書は、「起業家精神」の一方的な礼讃でもなく、逆にベンチャーの影の部分だけを取り上げるのでもなく、両方のバランスがよく取れていると思われます。今は組織に属しているけど「いつかは起業」を考えている人や、実際にベンチャー企業で働いている人のどちらにもお奨めできます。
■ 個人的な視点から
ベンチャーに関する文献・情報は、国策としての企業支援やフランチャイジーを集めたい企業の思惑が透けて見えるようなものが多かったり、逆に「ベンチャー残酷物語」的に軽々しく起業することを戒める内容のものが多いような気がします。また、学術的・客観的な文献も、「ベンチャー企業」という組織の外観を分析対象としたものが多いようです。
本書の特色は、ベンチャーで働く人の「やりがい」や「価値」など、内面の部分に着目している点です。ベンチャーで働く人にあって大きな組織で働く人に無いものは何か、逆にベンチャーに欠けているものは何か、それぞれの立場の人にとって、自分の姿を映す鏡になるのではないかと思います。
■ どんな人にオススメ?
・「ベンチャーで働く」という生活が想像できない人。
■ 関連しそうな本
田尾 雅夫 『成功の技法―起業家の組織心理学』 2005年04月23日
ダニエル ピンク (著), 池村 千秋 (翻訳), 玄田 有史 『フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか』 2005年02月02日
秋山 進, 山田 久 『インディペンデント・コントラクター 社員でも起業でもない「第3の働き方」』 2005年04月11日
■ 百夜百マンガ
「へなちょこ」というタイトルどおり、ヘタレ系のギャグマンガです。続編?の「へなちょこ大作戦Z」と合わせて10年以上マガジンに4コマを連載し続けるというのは、考えてみればものすごい快挙なのかもしれません。
投稿者 tozaki : 2005年07月22日 07:00
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