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2005年08月17日

ルポ地方公務員

■ 書籍情報

ルポ地方公務員   【ルポ地方公務員】

  中国新聞社編
  価格: ¥1,350 (税込)
  日本評論社(1976/12)

 本書は、当時表面化していた地方自治体の人件費紛争をきっかけに、地方公務員の姿をきちんと伝えることを目的に掲載された長期連載をベースに出版されたものです。何しろ、今から30年以上昔の取材に基づいていますので、勤続年数の長いベテラン職員は戦前に採用されている方であったり、原爆による広島市役所の壊滅から復興までが語られていたりと、時代を感じさせる記事がある一方で、現在の自治体職員の給与の問題を考える上で欠かせない基礎知識である人件費紛争の生々しい姿や、石油ショックを受けた苦しい財政運営、自治省からの天下り幹部職員の受け入れなど、現代の地方自治体の問題を考える上で大きな教訓となるべき材料が凝縮されています。まさに「歴史は繰り返す」という言葉がぴったりかもしれません。
 本書は、8章の本編に「地方公務員と住民~二つの意識調査から」というデータ解説編をプラスした構成になっています。
 「第1章 その群像」では、離党で孤軍奮闘する山口県桂島の保健婦や、漁業を捨ててゴミ戦争に携わった広島市の清掃関係職員、漁民の信頼をえることができたエビの栽培漁業を行う山口県内海水産試験場など、当時の様々な社会問題に対峙する自治体職員の姿が描かれています。
 「第2章 労働条件」及び「第3章 広がる争点」は、本連載のきっかけとなった人件費紛争に紙幅を割き、周南新産業都市の発展に合わせ、平均勤続年数8.1年で、男子職員が次々に大企業に転職していってしまったため、女子職員の比率が70%になった山口県大和町や、原爆のために「わだつみ世代の次の「うたつみ(卯・辰・巳)世代」の職員構成が突出してポスト不足に悩む広島県庁、両棲類的存在と言われる県庁内で働く地方事務官などが紹介されている他、町を二分した加計町紛争やスト権闘争の生々しい姿が描かれています。
 「第4章 火の車財政の中で」では、景気に大きく左右される企業城下町や宮島の公営ギャンブル、「東京大使館」と呼ばれる県の東京事務所などが紹介されていて、そこに語られている問題は、景気が良くなると忘れられ、不景気のたびに同じ問題が表れているように感じます。
 「第5章 天下り」には、中国地方の県庁を中心に、自治省からの天下り幹部に対する着任拒否闘争の姿や自治省人脈の結束の強さが描かれています。さすがに、近年大掛かりな着任拒否闘争のニュースを聞くことはありませんが、自治省人脈の結束の固さは変わらないようです。特に中国地方は自治省出身の県知事が多かったのでなおさらなのではないかと思います。元総務相の片山虎之助氏が岡山県企画部長(当時45歳)として、また、現千葉市長の鶴岡啓一氏が山口県財政課長(当時35歳)として、紹介されていました。
 「第6章 公僕のモラル」では、汚職に手を染めた職員の手口や県庁ぐるみの選挙違反の紹介とともに、厳然とした力を持つ地域のボスの存在感の大きさも合わせて描かれています。
 「第7章 住民サービス」では、松戸市役所の「すぐやる課」を拡大した岡山県井原市の「しんせつ課」の奮闘が、「第8章 歴史を踏まえて」では、戦時中の召集令状や戦死公報を届けた村の「兵事係」や、山口県職員研修所での「私の県庁史」講座、焦土と化した広島市の復興の姿などが描かれています。
 巻末の「地方公務員と住民~二つの意識調査から」では、当時のサラリーマン化する自治体職員と住民との意識の乖離が浮き彫りになっています。
 現在の自治体の問題を考える上で大変勉強になる一冊です。図書館などで探せば読むことができるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書は、8月1日に紹介した『地方官僚 その虚像と実像』に関連して、知人から紹介してもらったものですが、大変参考になりました。伊藤さんありがとうございます。
 人事関係者や組合関係者はもちろん、できれば全ての自治体職員に読んでもらいたい内容であるとともに、現在の自治体の姿を描いた『新・ルポ 地方公務員』があればぜひ読んでみたいと思います。


■ どんな人にオススメ?

・人事や組合の関係者
・全ての自治体職員


■ 関連しそうな本

 塩沢 茂 『地方官僚 その虚像と実像』 2005年08月01日
 稲継 裕昭 『日本の官僚人事システム』 2005年02月10日
 稲継 裕昭 『公務員給与序説―給与体系の歴史的変遷』


■ 百夜百マンガ

カバチタレ!【カバチタレ! 】

 「広島」のご当地マンガと言えばこの作品。『ナニワ金融道』に比べるとご当地っぽさは少ないのですが。大幅に設定を変えてドラマ化もされています。
 「行政書士」という地味な仕事に光を当てた作品でもあります。

投稿者 tozaki : 2005年08月17日 07:00

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