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2005年09月15日

「話し合い」の技術―交渉と紛争解決のデザイン

■ 書籍情報

「話し合い」の技術―交渉と紛争解決のデザイン   【「話し合い」の技術―交渉と紛争解決のデザイン】

  ウィリアム・L. ユーリ, ステファン・B. ゴールドバーグ, ジーン・M. ブレット (著), 奥村 哲史 (翻訳)
  価格: ¥2,625 (税込)
  白桃書房(2002/06)

 本書は、石炭産業における労使紛争解決の経験を背景に、より低コストの紛争解決のための制度設計について解説したものです。特に、後半の「第2部 紛争解決制度の構築 石炭産業の事例」は、著者らが実際に炭鉱における紛争解決に携わった経験が生々しく描かれていて、経営学のテキストにあるようなケーススタディにはないリアリティに溢れています。
 紛争の解決には次の3つの方法があります。
1.利益(Interest):自分たちの主張の背景にある問題点から解決策を交渉すること。
2.権利(Right):契約事項の解釈を基準に誰に権利が有るかを決めること。
3.権力(Power):強制されなければやらないことをさせる能力(破壊行為やスト)。
 著者は、これら3つのアプローチを利益を中心に、権利、権力が外側に描かれる同心円状に描いています。そして、どのアプローチを取るべきか、次の4つの基準を設けています。
 ・取引コスト:紛争に関連する諸費用(ストによって失われる経済的な費用の他、時間や心理的エネルギーを含む)
 ・結果に対する満足度:結果に対する当事者各々の満足度。
 ・関係への影響:当事者間の関係への長期的な影響。
 ・再発可能性:特定のアプローチが持続可能な解決をもたらすかどうか。
 著者は、これらの4つの基準を合わせたものを紛争のコストとし、3つのアプローチのうち、利益型が最もコストが低く、次が権利型、最も高コストなのが権力型であるとしています。ただし、この前提はどの方法をとることがベストだとは必ずしも述べていないことに注意する必要があります。
 本書が目的としているのは、利害調整の方法がベストだと言うことではなく、現状の制度では、最後の手段であるべき多大なコストがかかる権力による解決が多すぎるので、より低コストの利益型で多くの紛争を解決できる紛争解決制度を構築すること、そして、利益型では解決しない(すべきでない)紛争のための低コストで権利や権力を決定する方法を提供すること、の2点です。
 本書では、効果的な紛争解決制度の設計の6原則として、
(1)利益を中心にする
(2)交渉への「ループバック(戻り道)」を整備する
(3)低コストの権利型、権力型の予備手段(バックアップ)を準備する
(4)事前協議(コンサルテーション)、事後フィードバックを組み込む
(5)諸手続を低コストから高コストの順に配置する
(6)必要な動機付け、技術、資源を提供する
を挙げています。個々の項目の解説は省きますが、この6原則は、現在の様々な紛争解決手段を診断するチェックポイントとしても有効です。
 後半の第2部は、著者の石炭産業における紛争解決の経験として、「レッド・アロー炭鉱」という仮名の炭鉱を舞台にした山猫ストの研究分析や、ケンタッキー州のクリーク炭鉱における労使紛争の解決制度構築の経験が生々しく(著者自身が炭鉱夫独特の通過儀礼である「ヘアリング(陰毛刈り)」を受ける話まで)語られています。
 本書は、様々な紛争を解決したいと思っている当事者にとって、経験豊かな実務者自身によって語られた「生きた技術」を伝えてくれる示唆に富んだ内容ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書は、生業として紛争解決に携わっている専門家だけのためのものではなく、顧客対応の担当者や経営者なども対象にしていますが、実は多くの個人にとっても大変ためになるないようではないかと思います。
 具体的には、多くの人が悩まされている夫婦げんかなどにも応用が利く内容です。さすがに調停会議を開催するほど大げさにする必要はないかもしれませんが、本書の6原則にあるような、利益を中心に考える、戻り道を用意するなどはすぐにでも応用可能です。特に印象に残ったのは、戻り道の具体例として、戯曲『プライベート・ライフ』に登場するカップルが口論がエスカレートしたときにどちらかが「ソロモン・アイザック」と叫べば必ず5分間会話を中断するルールを決めている、という話です。これなどはすぐにでも実行できそうです。


■ どんな人にオススメ?

・様々な紛争を抱えている人。


■ 関連しそうな本

 マックス H・ベイザーマン (著), マーガレット A・ニール (著), 奥村 哲史 『マネジャーのための交渉の認知心理学―戦略的思考の処方箋』 2005年07月04日
 印南 一路 『ビジネス交渉と意思決定―脱"あいまいさ"の戦略思考』 2005年6月28日


■ 百夜百マンガ

勇午【勇午 】

 交渉人といえばこの作品。粘り強い交渉や駆け引きは大変面白いのですが、インド、中国、ロシアなど行く先々で拷問に遭うのがお約束になっています。初期の頃の駆け引き中心の話のほうが好きですね。だんだん拷問がエスカレートしているような気もするのですが・・・。

投稿者 tozaki : 2005年09月15日 07:00

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