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2005年10月15日

インターネットの心理学

■ 書籍情報

インターネットの心理学   【インターネットの心理学】

  パトリシア ウォレス (著), 川浦 康至, 貝塚 泉 (翻訳)
  価格: ¥3,360 (税込)
  NTT出版(2001/09)

 本書は、社会心理学の立場から、インターネット上の人間の行動を分析したものです。実社会では普通の人が、インターネット上ではなぜ奇妙な行動をとるのか、温厚な人柄の人がネット上では過激なフレーム戦に巻き込まれると攻撃的になるのはなぜか、などの疑問を社会心理学の研究成果を元に解説しています。
 本書で扱っているのは、一般的なWWW(World Wide Web)や電子メールの他、非同期型ディスカッション・フォーラム(メーリングリストやニュースグループ、掲示板など)、同期型のチャット、そしてMUD(Multiuser Dungeon)と呼ばれるテキストベースのバーチャル・リアリティの世界、グラフィカルなアバターが行き来する「メタワールド」など様々です。
 これらの世界において、まずは、オンライン・ペルソナ(オンラインで出会う人に自分がどんな印象を与えているか)に関する印象形成を印象操作に関する研究、特に年齢を偽ったり異性に成りすます(ジェンダー・スワッピング)などを扱った研究を取り上げます。
 また、オンライン上における集団力学の問題を、集団の凝集性や同調、過度の集団成極化、集団間競争、エキスパート偏重などの観点から、ドッキリカメラやリスキーシフトの実験、子供たちの集団間の葛藤の実験などを紹介しながら解説しています。
 この他、ネットの世界でたびたび発生する「フレーミング」(激しい罵倒や激昂)がどのようにしてエスカレートするのか、そして、なぜネット上では人間が攻撃的になりやすいか、などを解説したり、逆にネット上で生まれる友情やロマンス、ボランティアが持つ愛他精神の分析、ネット上のポルノやネット中毒の解説などを行っています。
 原書の出版は今から6年前の1999年ですが、現在でもネットの世界の中心はキーボードで入力した文字を読むテキストベースのコミュニケーションが中心です。一部のマニアや若者だけでなく、携帯電話も含めれば、子どもからお年寄りまで、かつてない人数が膨大なテキストでコミュニケーションをとっている現代において、本書が紹介している研究分野は重要性を増しています。


■ 個人的な視点から

 日本では本書出版当時のアメリカとは多少事情が異なり、ニュースグループは一般的ではありませんが、変わりに「2ちゃんねる」に代表される電子掲示板や、最近では「mixi」に代表されるSNS(Social Networking Service)上のコミュニケーションが活発化しています。また、チャットに状況が似ているものとしてケータイメールが浸透しています(ギャル字や顔文字の文化は、チャットにおける短縮語(cuやbtwなど)やスマイリーの日本独特の発展形態ということができるのでしょうか。)。
 よく、「2ちゃんねる」は、その匿名性のために、人間の低俗な部分や攻撃性が前面に出ている汚らしいもの、下らないもの、という見方をされることがあります。私も5~6年前に初めて2ちゃんを読んだ時は暗澹とした気持ちになりましたし、その後にネオムギによるバスジャック事件が起きたときは、「やっぱり危ない人たちが参加しているのでは」という気にもなりました。しかし、慣れてくると、汚い言葉やお決まりの煽り、意味のないアスキーアートを読み飛ばして議論の文脈をつかめるようになります。そうなると膨大な「板」ごとの参加者や議論のキャラクターも分かるようになり、無数のスレッドの中から良質な議論や質の高い情報、親切な物知りがいる「良スレ」と呼ばれるスレッドを探し出すこともできるようになりました。
 ネット上のコミュニケーションは、そのアーキテクチャや性質が大きく変化する流動的なものではありますが、本書のような社会心理学の研究成果に裏付けられた分析が進むことによって、「匿名でしか議論できないような連中は下らない奴らだ」といった無用なバイアスを排除し、顕名と匿名のバランスの取れた使い分けができるようになるのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・メールや2ちゃんねるはなぜ荒れるのか、を知りたい人。


■ 関連しそうな本

 アダム N.ジョインソン (著), 三浦 麻子, 畦地 真太郎, 田中 敦 (翻訳) 『インターネットにおける行動と心理―バーチャルと現実のはざまで』
 ローレンス レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳), 柏木 亮二 (翻訳) 『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』 38384
 井上 トシユキ, 神宮前.org 『2ちゃんねる宣言 挑発するメディア』
 吉田 純 『インターネット空間の社会学―情報ネットワーク社会と公共圏』
 鈴木 淳史 『美しい日本の掲示板―インターネット掲示板の文化論』
 池田 謙一 『ネットワーキング・コミュニティ』


■ 百夜百音

DISCO-ZONE ~恋のマイアヒ~【DISCO-ZONE ~恋のマイアヒ~】 The O Zone オリジナル盤発売: 2004

 2ちゃんといえば話題の「のまネコ」ですが、こういうアスキーアートに対する思い入れや愛着って心理学で分析すると面白そうです。特に集団でエスカレートするところは分析し甲斐がありそうです。誰か本出してくれないかな。

投稿者 tozaki : 2005年10月15日 14:00

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