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2005年10月24日

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く

■ 書籍情報

新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く   【新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く】

  アルバート・ラズロ・バラバシ (著), 青木 薫 (翻訳)
  価格: ¥1,995 (税込)
  NHK出版(2002/12/26)

 本書は、世の中の様々な事象を「リンク」という観点で捉えなおすことで、ハリウッドの共演関係や電力供給網、インターネット、エイズやコンピュータウィルス、遺伝子工学、そして企業活動まで、「ノード」や「ハブ」からなるダイナミックなネットワークの構造を見出すことができ、要素還元的な手法ではたどり着けない解決へのブレークスルーを手にすることができる、という「新しい世界の見方」を読者に提供するものです。
 例えばハリウッドの共演関係のネットワークである「ケビン・ベーコン・ゲーム」や、偉大なる数学者との共著関係で数えた距離を次数で表した「エルデシュ数」などの人間関係やインターネットなどは、まだ直感的にネットワークという考え方を当てはめやすいものの、細胞内のタンパク質の働き方や生態系の食物連鎖をノードやハブのリンクとして捉えなおすことは大きな知的興奮を呼び起こします。
 本書でキーとなる概念は、「スケールフリー・ネットワーク」という考え方です。これは、大半のノード(点)がほぼ同数のリンクを持ち、その分布が釣鐘型になるような「ランダム・ネットワーク」と異なり、大半のノードはごく少数のリンクしか持たないのに対し、ごく少数の「ハブ」は膨大なリンクを持った右肩下がりの分布を持つネットワークのことです。スケールフリー・ネットワークの例としては、膨大なサイトからリンクが集中する少数の超有名サイトが存在する一方で、どこともほとんどリンクされないサイトが大多数であるWWWや、少数のハブ空港と多数の地方空港からなる航空会社のルートマップ、生涯で数人との性的関係しか持たない人が多数いる一方で、生涯に数千~数万人との性交渉を持つ人(エイズの「ゼロ号患者」と呼ばれるガエタン・デュガや伝説のNBAプレイヤーであるウィルト・チェンバレンなど)が性感染症を拡大させる男女の性関係ネットワーク、ごく少数の論文だけが多数の研究者から引用される学術論文の引用ネットワークなどがあります。
 この分布は、「ベキ法則」に従っていて、よく「パレートの法則」として使われる「80対20の法則」の背後にもベキ法則があります。本書では、パレートの研究でも問題になった「金持ちはより金持ちに」という社会で新参者が成功するにはどうするか、米国の電力供給ネットワークで起きた大停電事故を防ぐには、ハブに対するテロにどう対応するか、などの様々な問題も同時に投げかけています。
 本書全体を通して、サイエンス・ライターをやっていたという著者の平易な語り口(と読みやすい訳)が光ります。文系・理系を問わず、「ネットワーク」という思考体系への入門書としては最適の一冊ではないかと思います。
 千円冊二枚ででお釣りが来る値段で、複雑な世界を捉える視点を一つ手に入れることができる本書は大変お買い得です。


■ 個人的な視点から

 個人的に本書で印象に残ったのは、ウェブの世界の大陸の地図です。これは、WWWの世界をリンクの関係から4つに分けたもので、第1の「中央大陸」には大きなサイトがここに集まり、容易なナビゲーションが特徴です。第2、第3の「IN大陸」と「OUT大陸」は大きさは中央大陸と同程度なもののナビゲーションは困難を伴い、IN大陸から中央大陸に行くことはできるが、逆戻りはできず、同様に中央大陸からOUT大陸(住人の多くは企業サイト)に入ると出て来れません。第4は「半島」と「島」からなり、中央大陸とは孤立して存在しています。
 インターネットの世界の広さを誰もが夢想したことがあると思いますが、こういったWWWの地図やインフラとしてのインターネットの地図がこれから整備されて行くことが楽しみです。


■ どんな人にオススメ?

・世界を見る新しい視点を身につけたい人。


■ 関連しそうな本

 ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
 マルコム グラッドウェル (著), 高橋 啓 (翻訳) 『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』 2005年02月12日
 安田 雪 『実践ネットワーク分析―関係を解く理論と技法』 2005年10月04日
 安田 雪 『人脈づくりの科学 「人と人との関係」に隠された力を探る』 2005年10月05日
 スティーヴン・ストロガッツ (著), 蔵本由紀, 長尾力 (翻訳) 『SYNC』
 ローレンス レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳), 柏木 亮二 (翻訳) 『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』 38384


■ 百夜百マンガ

ヤサシイワタシ【ヤサシイワタシ 】

 結末を予め知ってしまうとつまらないのですが、こういう痛い話の作品より今の高校野球のほうが読みやすいです。

投稿者 tozaki : 2005年10月24日 07:00

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