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2005年10月29日

リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神

■ 書籍情報

リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神   【リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神】

  ペッカ ヒマネン, リーナス トーバルズ, マニュエル カステル (著), 安原 和見, 山形 浩生 (翻訳)
  価格: ¥1,680 (税込)
  河出書房新社(2001/05/26)

 本書は、リナックスを作り出したような「ハッカー」の仕事観、倫理観を、マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』と対比する形で描き出したものです。原題は、邦訳で副題となっている『ハッカー倫理とネット社会の精神』に対応しており、内容からしても「プロ倫vsハカ倫」という感じの書きぶりです。「はじめに」にも「著者としては、これを日本語版でもそのまま使ってもらいたかったのだが、「ハッカー」と「クラッカー」の二語は日本ではひどくごちゃごちゃにされているから、「ハッカー倫理」というタイトルでは何のことかわからないだろう。」と書かれているとおりです。でも本音のところではリーナスがエピローグを書いているので、リナックスブームにあやかって適当につけたタイトルなのだと思います。結果オーライと言えば必ずしも批判されることではないですが。
 エピローグの中で「リーナスの法則」という3つの動機付け要因が紹介されています。「生き残り」→「社会生活」→「娯楽」という3段階がそれですが、ではハッカーに当てはめるとどうなるでしょうか。生き残りの段階は「プログラムで飯食ってます。」、次の段階は社会的な結びつきのために、そしてハッカーにとっては、コンピュータはそれ自体が「娯楽」である、と述べられています。
 プロテスタンティズムにおいて労働は義務であり、「労働は、あたかもそれじたいが究極の目的あるかのように、つまり神から与えられた使命であるかのようにおこなわれなくてはならない」とされているのに対し、ハッカー活動の精神には「情熱」という言葉が用いられ、ハッカーがプログラムを書くのはそれ自体が元々おもしろく、エキサイティングで楽しいことだから述べられています。
 金銭に対する感覚も、古い資本主義の精神の中心に「所有」の概念があり、近年情報にも拡大されているのに対し、ハッカーの倫理では元々公開性が重視され、フリーソフトの文化や「コピーレフト」という考え方が使われています。ハッカーの働く動機は、金銭(=生き残り)ではないことが強調され、ウォズニアック氏の言葉として「人生の定理はH=F^3(3乗)」という公式が紹介されています。これは、Happinessは、FoodとFunとFriendsが揃ったところにある、というものですが、プロローグでの「リーナスの法則」にそれぞれ対応しています。また、ハッカーの世界では「フリーソフト」の「フリー」という言葉は、「無料」という意味ではなく、情報を囲い込むことによる金儲けへの反対、すなわち「言論の自由」の意味で使われていることが述べられています。
 一部のコンピュータ・オタクの世界と思われていた「ハッカー」の倫理観が、新しい社会モデルとして世の中に大きなイノベーションを起こしていることを知ることができる一冊です。


■ 個人的な視点から

 ハッカーの倫理観は、田坂広志さんの著者で紹介されている社会起業家の職業観に通じるものがあると思います。本書の中でも、ハッカーの倫理観は必ずしもコンピュータ・ハッカーに限ったものではなく、より大きな社会現象の中であることが述べられています。
 本書で紹介されている「コピーレフト」という言葉に初めて出会ったのは、2年前にキャメル・ヤマモトさんのお話を聞く機会があった時に、資料に「copyleft」と書かれていたものを読んだことがきっかけです。しかもそのお話のテーマは社会起業家に関するものでした。後から考えれば、「社会起業家+copyleft」という組合せは、シリコンバレーに住んでいたキャメル氏らしいものと考えることもできます。


■ どんな人にオススメ?

・「ハッカー」は何だか怖い人のことだと思っている人。


■ 関連しそうな本

 エリック・スティーブン レイモンド (著), 山形 浩生 (翻訳) 『伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト』 2005年10月22日
 リチャード・M・ストールマン (著), 長尾 高弘 (翻訳) 『フリーソフトウェアと自由な社会 ―Richard M. Stallmanエッセイ集』
 リーナス トーバルズ, デビッド ダイヤモンド (著), 風見 潤 (翻訳) 『それがぼくには楽しかったから』
 マックス ヴェーバー (著), 大塚 久雄 (翻訳) 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
 ローレンス レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳), 柏木 亮二 (翻訳) 『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』 2005/02/01
 田坂 広志 『これから働き方はどう変わるのか―すべての人々が「社会起業家」となる時代』 2005年10月02日


■ 百夜百音

BABY,YOU'RE LOV【BABY,YOU'RE LOV】 INSTANT CYTRON オリジナル盤発売: 1993

 小気味良い打ち込みと切れのよいカッティングギターのバックに、かわいいヴォーカルが乗っかる、とてもポップなミニアルバムです。
 加藤けんそー氏のオムニバスにも参加していました。


『トロイの木馬~TROJAN H』トロイの木馬~TROJAN H

投稿者 tozaki : 2005年10月29日 06:00

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