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2005年11月05日
それがぼくには楽しかったから
■ 書籍情報
リーナス トーバルズ, デビッド ダイヤモンド (著), 風見 潤 (翻訳)
価格: ¥1,890 (税込)
小学館プロダクション(2001/05/10)
本書は、LINUXの生みの親であるリーナス・トーバルズ氏本人が語るLINUX誕生の秘話、そして当事者の目から見た「LINUX革命」の姿です。
本書は、リーナス自らの口から語られる生い立ちから現在彼の目から見える世界の姿までと、その間に挿入される、インタビュアーのデイビッド・ダイヤモンド氏から見たリーナスの飾らない人柄の叙述とによって構成されています。リーナスの口から語られる生い立ちは、まさに「オタクの王様」が出来上がるまでの姿に他なりません。
11歳でヘルシンキ大の統計学の教授である祖父のコモドールVIC20でベーシックによるプログラミングに出会った著者は、マニュアルや雑誌を見ながら次々にプログラムを書き、他の子どもたちがサッカーをしている時期に、コンピュータに夢中になってしまいます。その後、高校、大学とコンピュータとともに過ごした著者は、人生を変える一冊の本、『オペレーティングシステム―設計と理論及びMINIXによる実装』に出会います(後に著者はMINIXのニュースグループでこの本を書いたタネンバウム教授と激しい応酬をすることになります。)。
その後、著者は自宅から大学のコンピュータにアクセスする機能でMINIXに不満を持ち、ゼロからターミナル・エミュレータをプログラミングします。これが、後に世界を席巻するLINUXの第一歩だったのです。最初は、メールを読んだりするだけの単純な機能しかなかったものに、ダウンロードしたファイルをディスクに保存するための機能が追加するのですが、このために「プログラム――寝る――プログラム――寝る――プログラム――食べる(プレッツェル)――プログラム――寝る――プログラム――シャワー(短時間)――プログラム・・・」という生活を送ることになります。
一人のオタクがこのターミナル・エミュレータを新しいOSに育てようとしていることが、世間(と言ってもMINIXのニュースグループという狭い世界ですが)に明らかになるのには時間がかかりませんでした。ちょっとした質問から多くの人が著者の企てを見抜き、UNIXの仕様書を送ってくれたり、大学のサイトを提供してくれ、世界中のオタクの共同作業によって新しいOSが歩き出します。
この後のLINUXの作業そのものについては、『伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト』などに詳しく書かれていますのでそちらを読んでもらえればと思いますが、本書のおもしろいところは、共同作業以前の著者の生い立ちや作業が語られている点、そして、それ以上に著者のキャラクターが非常に魅力的な点です。
OSやオープンソースに関心がある人のみならず、社会起業家的な新しい時代の仕事観として読んでもおもしろい一冊です。
■ 個人的な視点から
リーナスのオタクの生い立ちは、コンピュータの世界にのめりこんだ変人の生活だとの非難を受けることが多いのではないかと思います。はまった時期には、ほとんど表に出ず、コークとジャンクフードという「オタクの健康食」を常食する「ハッカー」達の生活は、世の常識人にとっては常人にはなかなか理解しがたい「非社会的」な生活スタイルです。自分の子供には「ああはなっては欲しくない」姿ではないかと思います。
しかし、私達が子供のころ親に奨められて読んだ多くの偉人の伝記、特に科学者や学者の伝記で語られる姿は、親にほめられるタイプというよりも、むしろリーナスの生活に近い方ではないかと思います。学校に行かず母親に自宅で勉強を教わったエジソンや、何日も研究室にこもりきりになるキュリー婦人をはじめとする多くの科学者の生活は、子供のワクワクを多いにひきつけたものです。
親に読まされる偉人の伝記と、親から生活習慣のことで言われる数々の小言、学校に遅刻してはいけません、時間になったら読みかけの本を置いてご飯を食べなさい、夜更かししないで早く寝なさい、などとの間のギャップに子供たちは板ばさみになり、「それは特別な偉い人たちの話なの」と言われて、自分は凡人なんだ、ということを思い知らされることは、子供の成長にとって望ましいことではないのではないかと思います。まあ、偉人の伝記の陰には、「変人」のままで一生を終えた何万もの人々がいて、親の小言くらいを乗り越えられなければ偉人にはなれないのでしょうが・・・。
■ どんな人にオススメ?
・新しい時代の仕事観に関心がある人。
■ 関連しそうな本
エリック・スティーブン レイモンド (著), 山形 浩生 (翻訳) 『伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト』 2005年10月22日
リチャード・M・ストールマン (著), 長尾 高弘 (翻訳) 『フリーソフトウェアと自由な社会 ―Richard M. Stallmanエッセイ集』
ペッカ ヒマネン, リーナス トーバルズ, マニュエル カステル (著), 安原 和見, 山形 浩生 (翻訳) 『リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神』 2005年10月29日
金子 郁容, 松岡 正剛, 下河辺 淳 『ボランタリー経済の誕生―自発する経済とコミュニティ』 2005年08月29日
渡邊 奈々 『チェンジメーカー 社会起業家が世の中を変える』 2005年08月11日
A.S. タネンバウム, A.S. ウットハル (著), 千輝 順子 (翻訳), 今泉 貴史 『オペレーティングシステム―設計と理論およびMINIXによる実装』
■ 百夜百音
【サンデー・モーニング】 ジェイク・シマブクロ オリジナル盤発売: 2002
井上陽水との対談の中で、自分は日本人の性格を持っているから感情や情熱を内に内にこもらせてしまう、それを表現する方法がウクレレなんだ、と語っていました。
ケイン・コスギの番組「からだであそぼ」で子どもたちが踊っている曲を作曲したのもこの人です。頭に残ってぐるぐる回ってしまって仕方ありません。
投稿者 tozaki : 2005年11月05日 11:00
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