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2005年11月15日

対立と協調の科学-エージェント・ベース・モデルによる複雑系の解明

■ 書籍情報

対立と協調の科学-エージェント・ベース・モデルによる複雑系の解明   【対立と協調の科学-エージェント・ベース・モデルによる複雑系の解明】

  ロバート・アクセルロッド (著), 寺野 隆雄 (翻訳)
  価格: ¥3,990 (税込)
  ダイヤモンド社(2003/06/06)

 本書は、「繰り返し囚人のジレンマゲーム」で超有名な『つきあい方の科学』の続編にあたるものです。本書は、『つきあい方の科学』で主に分析対象としていた2人プレイヤーのモデルを拡張し、「シミュレーションを用いる分析手法によって複雑な社会システムの特性を理解」するために「エージェント・ベース・モデリング」という手法を用いた分析を行っています。
 エージェント・ベース・モデリングは、実験データの中からパターンを発見する帰納法や、一定の公理を用いてその前提から導かれる結果を証明する演繹法に続く、第3の科学的アプローチであると解説されています。このモデルは、明白な一連の前提からスタートし、シミュレーション結果のデータを帰納的に分析することで、直感を助けることができるものです。
 本書は、7章と2つの付録からなり、囚人のジレンマゲームの発展である第1章、第2章と、規範の促進、味方の選択、標準の設定といったn人のプレイヤの下での協調が生まれるメカニズムを分析した第3章~第5章、新しい政治的アクターの出現を扱った第6章、文化の広がりと分極化などを扱った第7章という構成になっています。
 第1章、第2章では、囚人のジレンマゲームの分析に遺伝的アルゴリズムの手法を用い、生態学的シミュレーションの下での「しっぺ返し」戦略や互恵主義的な戦略の進化等を分析しています。
 第3章「規範の促進」では、規範が生まれて、それが安定するために必要な「メタ規範」の必要性を分析しています。これは、規範に違反したものだけでなく、違反者を罰しないものにも罰を与えるというもので、旧共産主義社会での弾劾の方法や、昔のアメリカ南部での白人によるリンチの慣習などが紹介されています。
 この他、新しい政治アクターの出現や文化の流布(著者が「伝播」という表現を用いない理由についても述べられています。)など、結論だけ見ると当たり前(中には直感に反するものもあります。)のシミュレーションの結果が導き出されるプロセスを追っていく知的興奮を味わうことができます。


■ 個人的な視点から

 数年前に『つきあい方の科学』を読んだ時には、2人のプレイヤーによる囚人のジレンマゲームという状況での比較的分かりやすいテーマで、他のゲーム論の入門書や一般書の内容と重複するものが多かったという印象を持ちました。これに対し、本書は、シミュレーションをさらに拡張し、社会そのものの分析になっているので、結論はごく当たり前っぽい話ではあるのですが、なんとなく世界の秘密を覗いているような面白さがあります。


■ どんな人にオススメ?

・社会の仕組みの元になっているメカニズムを理解したい人。


■ 関連しそうな本

 R. アクセルロッド (著), 松田 裕之 (翻訳) 『つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで』
 ロバート・アクセルロッド, マイケル・D・コーエン (著), 高木 晴夫, 寺野 隆雄 (翻訳) 『複雑系組織論』
 山影 進, 服部 正太 (編集) 『コンピュータのなかの人工社会―マルチエージェントシミュレーションモデルと複雑系』
 ロバート・D. パットナム (著), 河田 潤一 (翻訳) 『哲学する民主主義―伝統と改革の市民的構造』 2005年03月03日


■ 百夜百マンガ

俺と悪魔のブルーズ【俺と悪魔のブルーズ 】

 「悪魔に魂を売った」ブルーズマンのお話です。夜のシーンなど、読んでいると手が黒くなるような迫力のある「黒」は他にありません。

投稿者 tozaki : 2005年11月15日 07:00

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