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2005年11月17日

入門ミュージアムの評価と改善―行政評価や来館者調査を戦略的に活かす

■ 書籍情報

入門ミュージアムの評価と改善―行政評価や来館者調査を戦略的に活かす   【入門ミュージアムの評価と改善―行政評価や来館者調査を戦略的に活かす】

  村井 良子, 上山 信一, 三木 美裕, 佐々木 秀彦, 平田 穣, 川嶋-ベルトラン 敦子
  価格: ¥1,890 (税込)
  アム・プロモーション(2002/02)

 本書は、近年日本でも話題になっている博物館の評価について、学芸員自身や社会調査や経営改革の専門家など様々な視点からアプローチしたものです。元々は、2001年に東京と江戸東京博物館で行われた「博物館における評価と改善スキルアップ講座」のセミナーの内容を元に編集されました。
 本書の構成は、読み物としてもおもしろい「実践編」である第1部と、博物館の評価や来館者調査の手法の詳細を解説した第2部の「基礎編」との2部構成になっています。
 著者の一人、上山信一氏は、「博物館経営の4つの心得」として以下の4点を挙げています。
(1)博物館はもっと自由闊達に経営すべきである・・・現場で工夫すれば現状より必ずよくなる。
(2)稼げるのであれば稼いだ方がいい・・・お金を稼ぐ経験が組織風土を革新的にする。
(3)経済的に自立しようとは絶対思うな・・・最初から儲けるつもりで建てていないものに急に儲けろと言う方が間違っている。
(4)パーソナルな色彩をもっと出しましょう・・・定評のあるサービス業は結局は誰か個人に支えられている。
 そして、まずはお客様の生の声を聴くことからはじめ、現場の職員がおかしいと思っていることをしっかり集めることが重要であると述べています。
 また、大阪の水族館「海遊館」のオープニングからの10年間の経営に携わった平田穣氏が自ら語るマーケティング・リサーチは、手探りでとにかくお客様の声を聴こうとしている姿に臨場感があります。お客様の一番の反応を聞くことができるのは、リラックスできるトイレだ、ということで、トイレでの会話から入館料の手ごたえ(2000円は「ええ値とりよるな。そやけど金かけとるな」。)をつかむ辺りの話からは、著者のガッツポーズが目に浮かぶようでした。
 第2部の「基礎編」は、博物館評価や社会調査の基本的な手法や課題が押さえられ、この分野に関心を持つきっかけになるのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 行政の中では、博物館は「ハコモノ」と捉えられることが多く、作りさえすれば後は中の学芸員が適当に運営してくれる、という程度の関心しかもたれていないことが多いのではないかと思います。川崎市の市民ミュージアムでは、現場のスタッフが必死で改善の努力をしても、経営の構造自体が抱える問題が大きすぎ、「親」(川崎市)による「子」(市民ミュージアム)に対する「ネグレクト虐待」、作ったまま世話をしない、という話さえ出ています。
 本書のような出版物が多く出回ることによって、ミュージアムに対する市民の関心が高まれば作りっ放し、ということも減ってくるんじゃないかと期待するのですが。


■ どんな人にオススメ?

・ミュージアムに評価は適さない、と思ってしまう人。


■ 関連しそうな本

 上山 信一, 稲葉 郁子 『ミュージアムが都市を再生する』
 三木 美裕 『キュレイターからの手紙―アメリカ・ミュージアム事情』
 上山 信一 『「行政評価」の時代―経営と顧客の視点から』 2005年01月21日
 上山 信一, 玉村 雅敏, 伊関 友伸 (編) 『実践・行政評価―事例、解説、そしてQ&A』
 デビッド ディーン (著), 北里 桂一, 山地 有喜子 , 山地 秀俊 (翻訳) 『美術館・博物館の展示―理論から実践まで』
 P・H・マン (著), 中野 正大 『社会調査を学ぶ人のために』


■ 百夜百マンガ

国立博物館物語【国立博物館物語 】

 『アフター0』や『緑の黙示録』にしても科学ネタとストーリーとの噛み合わせがよいのがこの作者の特徴です。「極限状態の人間の目」が怖い部分は、藤子・F・不二雄のSF(少し不思議)作品にも共通しています。

投稿者 tozaki : 2005年11月17日 06:00

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