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2005年11月18日
複雑ネットワークの科学
■ 書籍情報
増田 直紀, 今野 紀雄
価格: ¥2,520 (税込)
産業図書(2005/02)
本書は、バラバシの『新ネットワーク思考』やワッツの『スモールワールド・ネットワーク』を読んで、複雑ネットワーク理論に関心を持った人向けに、基礎知識から最先端の応用研究まで押さえることができる、日本語で入手できる良質な解説書です。前掲の2書では、経済、マーケティング、社会的流行、疫病の流行、生態系、遺伝子などの様々な社会的事象にネットワークが関わっていることを解説していますが、その「ネットワーク」とはどのような性質を持ったものなのか、を数理解析の結果を踏まえて基礎から解説しています。
本書は、複雑ネットワークの理解に不可欠なグラフ理論の入門的解説からスタートし、完全グラフ、格子、サイクル、木などの基本的なグラフの解説から、エルデシュとレイニーによって導入されたランダム・グラフの解説までがなされています(エルデシュは、世界の研究者のネットワーク研究の対象となる「エルデシュ数」の起点となっている数学者です。その個性的な人生と温かい人柄は『放浪の天才数学者エルデシュ』をご覧ください。)。
続いて、いよいよ複雑ネットワークの各モデルの解説に入ります。まずは、「スモールワールド・ネットワーク」のモデルである「WS(ワッツ=ストロガッツ)モデル」です。このモデルは、パラメータの少ない単純なモデルでありながら、現実の複雑ネットワークの本質を捉えたものとして、数多くの研究分野の論文で引用されています。例えば、新しい枝のランダムなつなぎ変えによってできる「ショートカット」は、社会ネットワークの理論で、グラノベッターが提唱した「弱い紐帯」に対応したものと捉えることができます。
バラバシとアルバートによって提唱された「BAモデル」(優先的選択型成長モデル)は、時間とともに頂点が次々に追加される「成長」と、新しく追加された頂点は既にたくさんの枝を持っている頂点を選択して選択するという「優先的選択」(金持ちはより金持ちに、モテる男はよりモテる)という2つのアイデアを持ち、次数分布のベキ則を導出することができます。このモデルは典型的な「スケールフリー・ネットワーク」として扱われていて、本書ではこの他、「階層的モデル」や「閾値モデル」という2つのスケールフリー・ネットワークのモデルを解説しています。
本書には、モデルの解説などのために数式も数多く使われていますが、複雑ネットワークへの関心が数学以外にも物理学、社会学、生物学など数多くの分野に広がっていることを踏まえ、大半のエッセンスは数式を飛ばして読んでも理解できるように書かれている(「理数系に関心があれば高校生くらいでも読み通せるかもしれない」とのことです。)うえ、数式が苦手な人は読み飛ばせるように「ここから」「ここまで」の2つのドクロマークが随所に示されています。
バラバシやワッツを読んで、複雑ネットワークの世界に関心を持った方は、数式があるからと食わず嫌いをせずぜひ読んでいただきたい一冊です。
■ 個人的な視点から
本書の巻末の「参考図書」のページを見ると、もちろん大半は英語で書かれた数学や物理学の専門論文なのですが、本書の性質上、邦訳もされた一般書もずいぶん紹介されています。アクセルロッドの『つきあい方の科学』やエルデシュの伝記にもちろん、ワッツやバラバシなどです。
これまで自分が関心を持って読んできたネットワーク理論やゲーム理論(特に進化ゲーム関係)関連の本をつなぐ「ハブ」になるような位置づけにある本ではないかと感じました。この方向で行くとグラフ理論の本も読まなければならなくなりそうです。
■ どんな人にオススメ?
・バラバシやワッツを読んで複雑ネットワークに関心を持った方。
■ 関連しそうな本
アルバート・ラズロ・バラバシ (著), 青木 薫 (翻訳) 『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』 2005年10月24日
ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
マルコム グラッドウェル (著), 高橋 啓 (翻訳) 『ティッピング・ポイント―いかにして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか』 2005年02月12日
スティーヴン・ストロガッツ (著), 蔵本由紀, 長尾力 (翻訳) 『SYNC』
ポール ホフマン (著), 平石 律子 (翻訳) 『放浪の天才数学者エルデシュ』 2005年11月06日
安田 雪 『実践ネットワーク分析―関係を解く理論と技法』 2005年10月04日
■ 百夜百マンガ
昔から学習マンガはたくさんありましたが、最近は算数の本も増えているみたいで、微積分の学習マンガもあるようです。微積分のマンガは誰が読むのでしょうか?
投稿者 tozaki : 2005年11月18日 06:00
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