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2005年11月20日
異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念
■ 書籍情報
チャールズ サイフェ (著), 林 大 (翻訳)
価格: ¥2,415 (税込)
早川書房(2003/10)
本書は、歴史を通じて忌み嫌われてきた「史上最も危険な概念」である「ゼロ」が歩んできた数奇な運命を描いた物語です。無限との双子の兄弟でありゆえに持つその強力な力により、ゼロは忌み嫌われ、ある時にはゼロを語る者は火あぶりにされることさえあったことが述べられています。
本書は、数のあけぼのである石器時代にまでさかのぼります。その当時にはゼロの概念はなく、幾何学に優れた後のエジプト人やギリシア人にもゼロの概念を用いたものは見受けられません。ゼロが地上に現れるのは、今のイラクに当たる東洋の肥沃な三日月地帯、バビロニアの記数法でした(なお、「計算する」を意味するcalcuateは、計算盤で用いる小石を意味するラテン語のcalculusから来ているそうです。)。
ゼロは西洋で拒絶され続けます。現在に残る「黄金比」などの数の比率を重視するギリシアの数哲学においてゼロの概念は受け入れがたく、西洋世界に長く君臨したアリストテレス哲学と衝突する「無」と「無限」の概念は有害であったのです。
一方、東洋、インドとアラブの世界ではゼロは歓迎されます。「無」はヒンドゥー教で重要な位置を占めており、インドでは無や無限に対する恐れはありませんでした。そして、イスラム社会の広がりによって、世界中にアラビア数字とともにゼロがもたらされます(「アルゴリズム」という言葉は、9世紀のバグダッドの数学者アルフワリズムの名が崩れたものです。)。
ゼロと無限は中世ヨーロッパの教会の土台をなすアリストテレス哲学を破壊し、科学革命に道を開きます。コペルニクスの地動説もデカルト座標(デカルト本人は無は存在しないと言い続けますが)もアリストテレス哲学を揺るがしていきました。そしていよいよゼロと密接な関係を持つ微積分がニュートンやライプニッツによってもたらされます。ゼロと無限大が不可分であることがわかると、数学者はこれらと付き合っていくしかなくなりました。
そして、ゼロや無限大とは相容れない自然界の営みを扱う物理学者にとっても、ゼロは無視できないものになっていきます。絶対零度や一般相対性理論におけるブラックホール、そして量子力学においてはゼロ点エネルギーが現れます。現代物理学は量子力学と相対性理論とが衝突する場所において、ゼロと付き合っていかなければならなくなっています。
本書は、数学と物理学の発展の歴史に常に謎を投げかけてきた「ゼロ」を追うことで、現代の我々が立っている「位置」を認識することができる良質の科学書ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
教会の権威を守るために、ゼロを口にするものは火あぶりにされ、ゼロの概念が出てくる書物は禁書目録に掲載される―――現代に暮らす東洋人の私にとっては、ゼロがこれほどまで忌み嫌われてきたことに現実感がなく「キョトン」という感じでしたが、本書を理解する上では、西洋の思想の根底にある聖書やアリストテレス哲学などの理解が本来は不可欠なのではないかと感じました。
■ どんな人にオススメ?
・普段何気なく「ゼロ」を使っている人。
■ 関連しそうな本
グレゴリー・J・チャイティン (著), 黒川 利明 (翻訳) 『セクシーな数学-ゲーデルから芸術・科学まで-』 2005年11月03日
ブライアン バターワース (著), 藤井 留美 (翻訳) 『なぜ数学が「得意な人」と「苦手な人」がいるのか』
E.T. ベル (著), 田中 勇 (翻訳), 銀林 浩 (翻訳) 『数学をつくった人びと』
E・T・ベル (著), 河野 繁雄 (翻訳) 『数学は科学の女王にして奴隷』
E. ナーゲル (著), J.R. ニューマン (著), 林 一 (翻訳) 『ゲーデルは何を証明したか―数学から超数学へ』
キース・デブリン (著), 山下 純一 (翻訳) 『興奮する数学 ―世界を沸かせる7つの未解決問題―』
■ 百夜百音
【ZEROSPECTRE ~EARLY YEARS】 ZEROSPECTRE オリジナル盤発売: 2005
単に「ゼロ」がつくバンドということだけですが・・・。
昔、フールズメイトとかに元ルースターズの人たちが「ソロ出した」、「新バンド結成」とかの記事がよく載ってました。
投稿者 tozaki : 2005年11月20日 11:00
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