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2005年11月30日

社会を"モデル"でみる―数理社会学への招待

■ 書籍情報

社会を   【社会を"モデル"でみる―数理社会学への招待】

  土場 学, 佐藤 嘉倫, 三隅 一人, 小林 盾, 数土 直紀, 渡辺 勉, 日本数理社会学会
  価格: ¥2,940 (税込)
  勁草書房(2004/03)

 本書は、「数学的論理を手段として用いることにより、社会現象を記述し説明することを目的」とした「数理社会学」という新しい学問分野を、44の「なぜ」を解説することで紹介する入門書です。
 本書の構成は、扱う社会現象の分析範囲によって、「ミクロ」、「メゾ」、「マクロ」の3部に分かれており、各章ごとに、依拠する枠組みとして「行為のモデル」、「過程のモデル」、「構造のモデル」の3つの枠組みが存在します。
 ミクロ社会を扱った第1部では、「なぜ禁煙に失敗するのか」、「なぜ中古品でトクをすることは難しいのか」、「なぜ自殺するのか」など、個人または数人レベルの行動に関する分析を行っています。経済学者であるベッカーの「依存症モデル」や、「セントペテルスブルクのパラドクス」、アカロフの「レモンの経済学」、「囚人のジレンマ」、アクセルロッドの「しっぺ返し」など、経済学を学んだ人にはなじみの深いモデルの紹介のほか、コールマンの「ミクロ・マクロ図式」や人間関係のバランス/インバランスなど社会学らしいモデルの紹介もあります。
 メゾ社会を扱った第2部では、「なぜ結婚するのか」、「なぜ兄と妹は結婚できないのか」、「なぜカルト教壇は極端な行動に走るのか」、「なぜ差別しなくても外国人居住区ができるのか」など、家族や組織、地域レベルでの分析を行っています。ベッカーの「人的資本モデル」やハーディンの「共有地の悲劇」など経済学でもなじみの深いモデルもあれば、社会現象の閾値モデルやネットワーク分析、スモールワールド・モデル、「弱い紐帯の強さ」、セル・オートマトンモデルなど、多くのモデルが紹介されていて、本書のうちで最も「社会学」らしさを感じる部分ではないかと思います。
 マクロ社会を扱った第3部では、「なぜ恵まれているのに不満を感じるのか」、「なぜ高齢化は進むのか」、「なぜ公共の福祉と個人の自由は対立するのか」など、広く社会全体を扱った分析を行っています。このレベルになると、分析対象やツールが共通する公共選択理論や政治学の一部と完全に重複してしまうモデルが多くなります。ダウンズの投票モデルやシャープレイ・シュービック指数、投票のパラドクス、ナッシュ交渉などは、図書館では社会学の棚を探すよりも経済学や政治学の棚を探した方が見つかります。
 本書は、「Σに出会うと、羆にでも出くわしたかのように恐れおののき、一目散に退散する。」(単に江戸っ子だったとか?)と言われるほど数学嫌いの多い社会学の世界向けに書かれているので、「数理」社会学と言っても数式の使用は最小限に抑えられ、社会学以外にも羆が苦手な人にとってハードルの低いものになっているのではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 最近、読む分野が社会学の研究分野にだいぶ近づいてしまっているせいか、最近の本には必ずグラノベッターの「弱い紐帯」の話が出てきてしまいます。どうやらこの辺りが、経済学や経営学、社会学、政治学、心理学、数学が複雑に交じり合う「潮目」になっているんじゃないかと思います。
 ちなみに、「潮目」を辞書で引くと、「異なる二つの潮流の接する海面に現れる帯状の筋。寒流と暖流の出合う付近などに見られ、しばしば好漁場となる。しおのめ。」(大辞林 第二版)となっています。研究者にとってもこの辺りは「好漁場」なのでしょうか。ただし、乱獲はよろしくないとは思いますが。


■ どんな人にオススメ?

・社会現象の分析に関心がある人。


■ 関連しそうな本

 ゲーリー・S. ベッカー, ギティ・N. ベッカー (著), 鞍谷 雅敏, 岡田 滋行 (翻訳) 『ベッカー教授の経済学ではこう考える―教育・結婚から税金・通貨問題まで』
 ロバート・アクセルロッド (著), 寺野 隆雄 (翻訳) 『対立と協調の科学-エージェント・ベース・モデルによる複雑系の解明』 2005年11月15日
 小林 良彰 『公共選択』 2005年04月15日
 ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
 梶井 厚志, 松井 彰彦 『ミクロ経済学 戦略的アプローチ』 2005年04月04日
 ロバート ギボンズ (著), 福岡 正夫, 須田 伸一 (翻訳) 『経済学のためのゲーム理論入門』


■ 百夜百マンガ

愛し過ぎてこんな感じ!【愛し過ぎてこんな感じ! 】

 昔の月刊宝島で読者コーナーを担当していた「うのけん」こと「うのせけんいち」。下品なギャグに汚い絵。それでいて谷岡ヤスジような突き抜けた感じではなく、凡人の目線が親しまれていたのですが、やっぱり商業誌では見かけなくなってしまいました。

投稿者 tozaki : 2005年11月30日 07:00

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