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2005年12月12日
役人学三則
■ 書籍情報
末弘 厳太郎 (著), 佐高 信 (編集)
価格: ¥840 (税込)
岩波書店(2000/02)
本書は、昭和6年に雑誌に掲載されたエッセイ「役人学三則」をはじめとする、東京大学教授、中央労働委員会会長であった著者の辛口のエッセイが収められたものです。構成は大きく3部構成になっていて、第1部では、表題作である「役人学三則」と「役人の頭」という、役人の杓子定規さの理由とその批判を展開しています。特に、「役人の頭」では、「法律の世界」と「人間の世界」とを結ぶ役人の役割に言及し、「役人たる前にまず人間たることを心がけねばならぬ」という前向きな戒めになっているのに対し、「役人学三則」は、これから官僚になろうとする若者に対する心がけという形で、次の3条を示しています。
・第一条 およそ役人たらんとするものは、万事につきなるべく広くかつ浅き理解を得ることに努むべく、狭隘なる特殊の事柄に特別の興味をいだきてこれに注意を集中するがごときことなきを要す。
・第二条 およそ役人たらんとする者は法規を盾にとりて形式的理屈をいう技術を習得することを要す。
・第三条 およそ役人たらんとする者は平素より縄張り根性の涵養に努むることを要す。
どれも戦前の官僚に対する批判でありながら、現代においても全く古びていないのは、本質をズバリと衝いた指摘であるからということができます。
この他、第2部では、大岡越前守が法律の解釈のほうを曲げずに、事実の解釈をコントロールすることで名判決を出すことができたとことを賞賛する「嘘の効用」や、「小知恵にとらわれた現代の法律学」において、公平への要求と杓子定規への批判を両立すべく、「判例法主義」を主張し、法学教育におけるケース・メソッドの重要性を説いています。
第3部は、法律の初学者向けの「新たに法学部に入学された諸君へ」と「法学とは何か――特に入門者のために」という2つの文章が収録されています。中でも「法学部で学んだことは実社会で役に立たない」という批判をする者は法学部で学ぶ本質を見失っており、重要なことは個々の法律の知識ではなく「法律的に物事を考える」ことであり、実務を積むことでその力を身につけてしまった人にとって当たり前であるからこそ、自分では特にそれを持っていると意識しなくなる、というものです。
本書に書かれている文章は、新しいものでも昭和26年ですから、相当古いことは間違いありませんが、決して現代に生きる人間にとっても見逃せるものではありません。
■ 個人的な視点から
本書が古びていない理由の一つに、役人の置かれている役割や思考回路に対して、一から考察を行っている点にあるのではないかと思います。現代の役人批判の文章の多くが、既にコンセンサスとなっている「官僚主義の弊害」の受け売りの思考回路の上に個別のトピックを飾りつけただけのものに過ぎないのに対し、本書の官僚批判は、法学者としての「法律の世界」と「人間の世界」のギャップの認識を根底に、一から考察を積み上げた展開をされています。
本書に書かれているような「役人学」は、最近の新聞を一月分でもスクラップしておけば、10条くらいすぐ作れそうですが、単なる皮肉・批評の類ではなく、本質的な官僚制の問題点を指摘する文章は、やはり深い思索の上に成り立っているのではないかと思います。
■ どんな人にオススメ?
・役人の思考回路を理解したい人。
■ 関連しそうな本
城山 三郎 『官僚たちの夏』
西村 健 『霞が関残酷物語―さまよえる官僚たち』
■ 百夜百マンガ
漫画アクションの後ろの方にいつも載ってました。途中から読んでも人間関係が複雑でよく分からないのが難点。
この作品に出てくる「カルメ焼き」って凄く美味しそうでしたが、関東の人間なので実物は未だに見たことがありません。
投稿者 tozaki : 2005年12月12日 07:00
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