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2005年12月20日
つきあい方の科学―バクテリアから国際関係まで
■ 書籍情報
R. アクセルロッド (著), 松田 裕之 (翻訳)
価格: ¥2,730 (税込)
ミネルヴァ書房〔新装版〕 版 (1998/05)
本書は、戦場で退治する敵国同士から自然界の生物の間など、様々な利害対立の中で、どのように協調関係が生まれてくるかを、コンピュータによる「繰り返し囚人のジレンマゲーム」のシミュレーションから得られた分析結果を中心に解説したものです。
著者は、コンピュータプログラムによる選手権を開催し、5つの専門分野(心理学、経済学、政治学、数学、社会学)から14名の参加者を得て、それぞれのプログラムを計12万回対戦させます。その結果、成績上位の8つのプログラムには、「自分からは決して裏切らない」という「上品さ(nice)」という共通点があることがわかりました。この中には、決して自分の方から裏切ることはないが、相手が一回でも裏切ると最後まで報復し続けるという「フリードマン」や、相手の行動をじっくりと観察し、長期的に最善の得点を稼ぐことを意図した「ダウニング」などがありましたが、最も高い得点を挙げたのは、参加したプログラムの中で最も短い「しっぺ返し」というプログラムでした。これは、相手が前の回にとったものと同じ行為を選ぶというもので、相手が裏切った後でも再び協調することができる「心の広さ」が高得点の鍵となっていました。
本書には、このシミュレーションで得られた含意が、現実の世界でも起こりうる例として、第一次大戦中の西部戦線におけるイギリス軍とドイツ軍とが長期間対峙する塹壕戦の中で生まれた奇妙な協調関係を紹介しています。ここでは、お互いに定期的に同じ場所を正確に狙撃することで、自らの報復能力を示威しながら、相手が裏切らなければこちらからは裏切らない、という協調関係が生まれました。多くのゲーム理論のテキストに引用されている有名な逸話ですが、ある時お茶の時間にイギリス側に一発の砲弾が打ち込まれ、被害はなかったがお互いの緊張が高まった時に、勇敢なドイツ兵が塹壕の上に上がり、「申し訳ない。怪我はなかったか。これはバカなプロシア砲兵隊のせいで俺たちのミスじゃない。」と叫んだ、というものがあります。
この他、ドーキンスの『利己的な遺伝子』を引用しながら、生物界における協調関係の進化などについて言及しています。
本書は、複雑系やゲーム理論の研究者はもちろん、一般向けにも、世の中との「つきあい方」を考える上でも大変おもしろく、平易な文章で書かれています。
■ 個人的な視点から
本書の邦題は、「つきあい方の科学」となっていますが、後の『複雑系組織論』にしても、タイトルのつけ方で真意が上手く伝わりにくい人なのかも知れません。ぜひ、タイトルだけ眺めて食わず嫌いせずに前書きだけでも読んでみてください。
タイトルにあるような政治学や生物学だけでなく、社会学や経済学、経営学など社会科学分野の人にもぜひ読んでもらいたい必読書ではないかと思います。
■ どんな人にオススメ?
・協調関係なんて幻想だ、と思っている人。
■ 関連しそうな本
リチャード・ドーキンス (著), 日高 敏隆, 岸 由二, 羽田 節子, 垂水 雄二 (翻訳) 『利己的な遺伝子』
ロバート・アクセルロッド (著), 寺野 隆雄 (翻訳) 『対立と協調の科学-エージェント・ベース・モデルによる複雑系の解明』 2005年11月15日
ロバート・アクセルロッド, マイケル・D・コーエン (著), 高木 晴夫, 寺野 隆雄 (翻訳) 『複雑系組織論』 2005年11月29日
土場 学, 佐藤 嘉倫, 三隅 一人, 小林 盾, 数土 直紀, 渡辺 勉, 日本数理社会学会 『社会を"モデル"でみる―数理社会学への招待』 2005年11月30日
梶井 厚志, 松井 彰彦 『ミクロ経済学 戦略的アプローチ』 2005年04月04日
アビナッシュ ディキシット (著), バリー ネイルバフ (著), 菅野 隆 (翻訳), 嶋津 祐一 (翻訳) 『戦略的思考とは何か―エール大学式「ゲーム理論」の発想法』 2005年01月31日
■ 百夜百マンガ
バイク乗りの青春を描いた昔のモーニングらしい作品。原作のオサム氏はタレントの大竹まことの兄としても有名。写真見てみたいです。
投稿者 tozaki : 2005年12月20日 07:00
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