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2005年12月23日
社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由
■ 書籍情報
板倉 雄一郎
価格: ¥1,680 (税込)
日経BP社(1998/11)
本書は、32歳の若いベンチャー起業家が経験した、猛スピードの上り坂と下り坂がある「ジェットコースター体験」の記録です。
19歳の時にゲームソフト会社を起こして以来、ダイヤルQ2を使った複数人の会話サービス「ボイスリンク」等の事業を経て、(株)ハイパーネットを設立し、電話を使ったマーケティングサービス「IMS (Interactive Marketing Service)」で会社を成長させた後に、顧客データベースと広告を結びつけた無料インターネット・プロバイダー「ハイパーシステム」を考案した著者は、このシステムによって脚光を浴び、事業を加速度的に拡大します。第3次ベンチャーブームの波に乗り、ニュービジネス大賞を受賞し、アメリカや韓国に事業を拡大する一方で、ベンチャー融資熱という金融界のブームの中で銀行からの融資も加速度的に拡大します。ここで著者の人生もぐんぐんとジェットコースターの上り坂を駆け上がり、白金の邸宅に住み、フェラーリを乗り回す生活を手にしたのも束の間、BIS規制への対応のための貸し渋り(と言うか貸し剥がし)によって一気に奈落の底に突き落とされます。
一緒に会社を大きくしてきた仲間が会社を離れ、起業以来相談に乗ってもらっていた取引先のキーパーソンは退社してしまい、話のわかる「友達」感覚でいたメインバンクの支店長は事業に見込みがないとわかるとビジネスの顔で資金を引き上げていきます。それまで何度も経営危機を自分のアイデアと人脈と運で乗り切ってきた著者は、自分が頼りにしていたものが根拠のない慢心であったことに気づきます。
本書のクライマックスであり、著者が経験するジェットコースターのクライマックスの地点で、ビル・ゲイツが著者に会ってハイパーシステムの話を聞きたいと言ってきます。このことが、著者を「天下のビル・ゲイツの方から俺に会いたいと言ってきた。次は米ナスダック上場だ!」と有頂天にさせる一方で、あの貪欲なマイクロソフトがこのビジネスモデルに触手を伸ばそうとしないことが「このビジネスには見込みがない」というシグナルを金融機関に発信することになってしまいます。
負債総額37億円で会社を破産させた1年後には本書を出版するという行動に感情的・道義的な非難もありますが、本書で語られている「敗戦」の経験は、起業を志す後進にとっては最高のテキストになるのではないかと思います。
■ 個人的な視点から
本書の中で一番ワクワクするエピソードは、著者がハイパーシステムのアイデアを思いついたときの細やかな記述です。酒が軽く回り、ベッドの中でまどろんでいる時に突如アイデアが閃きます。著者はこの瞬間を、
「脳みその裏でちりちりと蠢いていたさまざまな思考がだらしなく底へ沈み、あまい眠気が襲ってきたそのとき。何かが目玉の奥の方で光った。」
と書いています。
著者はこのアイデアを思い出そうとしながら眠ってしまい、目が覚めたときにパッとクリアなパソコン画面の映像とともに蘇ります。
この「閃き」の瞬間、または閃きを取り戻そうとしながら忘れてしまう経験は誰にでもあるものと思いますが、本書の記述からは著者の高揚感が手に取るように伝わってきます。
■ どんな人にオススメ?
・企業経営のジェットコースターを追体験したい人。
■ 関連しそうな本
ジェリー カプラン (著), Jerry Kaplan (原著), 仁平 和夫 (翻訳) 『シリコンバレー・アドベンチャー―ペン・コンピュータに賭けたぼくたちの会社創造ゲーム』
岡本 呻也 『ネット起業!あのバカにやらせてみよう』 2005年07月18日
田尾 雅夫 『成功の技法―起業家の組織心理学』 2005年04月23日
太田 肇 『ベンチャー企業の「仕事」―脱日本的雇用の理想と現実』 2005年07月22日
■ 百夜百音
【1984】 Van Halen オリジナル盤発売: 1984
『社長失格』の中で、深夜の首都高をヴァン・ヘイレンの『5150』をかけてフェラーリで爆走するエピソードが出てきますが、学生時代にやってたバンドっていうのはHR/HM系だったのでしょうか。
エディに憧れてギター改造したり自分でスプレーしたり、ライトハンド奏法の練習したり、シンセで「JUMP」のイントロを弾いてみたりっていうのは当時のバンド少年なら一度は経験のあることではないでしょうか。
投稿者 tozaki : 2005年12月23日 12:00
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