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2005年12月25日
眠れぬ夜のグーゴル
■ 書籍情報
A・K・デュードニー (著), 田中 利幸
価格: ¥2,625 (税込)
アスキー(1997/04)
本書は、様々な広告やインチキ療法、圧力団体からの数字テロなど、世間に溢れる怪しげな数字を追跡する「数学探偵」たちからの報告をもとに、実社会に蔓延る「数学の罠」の実例を示し、罠の仕掛け人たちを追い込み、読者に防衛の手段である基本的な数学マインドを与えてくれるものです。
では、「数学の罠」とはどのようなものでしょうか。本書で取り上げているのは、「消費電力の200パーセント」を節約できるという魔法の電球(100パーセント節約、すなわち消費電力ゼロにしたうえに、同じだけの電力を自ら生み出してしまう?)の例を挙げた「パーセント・ポンピング法」や、「50人の不治の患者」が結果的に「治癒した」という怪しげな民間療法施設(何人来院したうちの50人なのかは明らかにされていない)の例を挙げた「フィルタリング」、パーセンテージの足し算の結果起こる「数のインフレ」等様々な例が紹介されています。
例えば、「1970年代にはテストの成績が60パーセント低下したが、それから現在までの間に70パーセント以上上昇している。」という文章を読むと、一見1970年代よりも10パーセント以上成績が上がっているように感じますが、実際には1970年代に80点だった成績が32点に低下し、その後盛り返して55点になったというだけで、実際には当初よりも下がっているのです。
また、グラフのごまかしも手が込んでいて、一番のヒットは「軌道に乗ったウィンターリゾート産業」というグラフですが、折れ線グラフをスキーのジャンプ台に見立て、最近2年間のわずかな数字の増加をさも将来への飛躍があるかのように、ジャンプするスキーヤーまで書き足されて表現しています。
統計に関するウソでは、都合のよい数字だけをCMに使うことができる「ペプシ・チャレンジ」(コーラの飲み比べてスト)や、一生の間に乳癌にかかる割合をさも現在の危険のように発表する「脱時間」という罪、女性の性生活に関して非常に偏ったサンプル(11万9000通の調査票のうち、回収できたのは7000通のみ)からセンセーショナルな報告を行った『ハイト・レポート』などが、数学探偵の槍玉に挙げられています。
本書には数多くの例が紹介されていますが、中でも傑作なのはつり銭詐欺の手口です。
・まずは店で1ドルの商品を買い10ドルを渡す。
・商品を持ってお釣り9ドルを受け取り忘れたふりをして出て行ってしまおうとする。
・「ポケットに1ドル見つかったのでさっきの10ドル札を返してくれませんか?」と言って、店員に9ドルを渡して数えてもらい、10ドル札を受け取る。
・「ここに11ドルありますので、あなたが持っている9ドルと合わせて20ドルください。これでチャラですよね。」と言って11ドルを渡して10ドル札2枚を受け取る。
これでたいていの人が引っかかってしまうというのがおかしいですが、『ドラえもん』の「世の中うそだらけ」の回にも、ジャイアンがのび太から50円をせしめる話が紹介されています。
(参考:<変ドラ第九回「世の中うそだらけ」
)
こういう話を、科学や数学の裏づけを持った大学教授やサイエンス・ライターが、面白おかしく一般向けに書いた読み物が、ぜひ日本でも出てきて欲しいものです。
■ 個人的な視点から
「数学の罠」は必ずしも数学が苦手な人ばかりが陥るとは限りません。本書では、著名な数学者がはまった「数学の罠」が紹介されています。これは、アメリカの有名なテレビ番組である「レッツ・メイク・ア・ディール」という番組に関するものです。これは、3つのドアが用意され、1つのドアには自動車が、残りの2つには山羊がいるうちで、ドアを1つ選んだときに、答えを知っている司会者が別のドア(もちろん山羊)を開きました。最初のドアをスイッチする方が得でしょうか、という問題です。この問題に『パレード』誌でコラムを担当していたサヴァント女史がスイッチすべきと書いたことで、大学教授や物理学者、数学者達から膨大な手紙が寄せられました。彼らの多くは、確率は2つのドアに均等なのでスイッチしても有利にはならない、と女史を非難していました。そしてその中には偉大な数学者であったエルデシュも含まれていたことが彼の伝記に紹介されています。
しかし、サヴァント女史の説明は極めて単純なもので、仮に100個のドアがあったとして、1つドアを選んだところ、司会者が98の山羊のいるドアを開いたとしたら、残りの1つのドアにスイッチするべきかどうか、というものでした。
つまり、司会者が必ずドアを開いてスイッチを提案する、という前提に立てば、スイッチした方が得だということです。
■ どんな人にオススメ?
・「数学の罠」に陥りたくないと思う人。
■ 関連しそうな本
谷岡 一郎 『「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ』 2005年12月13日
ダレル・ハフ (著), 高木 秀玄 (翻訳) 『統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門』
デービット・カラハン (著), 小林 由香利 (翻訳) 『「うそつき病」がはびこるアメリカ』
ポール ホフマン (著), 平石 律子 (翻訳) 『放浪の天才数学者エルデシュ』 2005年11月06日
■ 百夜百音
【Selected Ambient Works 85-92】 Aphex Twin オリジナル盤発売: 1993
子供の頃から録りためた音をセレクションしたものですが、安い音なのにとても気持ちよいです。
アンビエント系の音は、作りながら何時間もはまってしまうのではないかと想像します。
『Selected Ambient Works, Vol. 2』
投稿者 tozaki : 2005年12月25日 11:00
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