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2005年12月31日
フォークの歯はなぜ四本になったか―実用品の進化論
■ 書籍情報
ヘンリー ペトロスキー (著), 忠平 美幸 (翻訳)
価格: ¥3873 (税込)
平凡社(1995/11)
本書は、フォークやゼムクリップなどの日用品のデザインがどのように進化してきたのか、という進化の歴史を解説したものです。生物が進化するように、人工物には人工物の進化があります。そして人工物の進化を推し進める原動力は、そのモノに付随する欠点であることが述べられています。著者は、「完璧なものなど一つもなく、そのうえ完璧さに対するわれわれの観念でさえ定まっていないのだから、ありとあらゆるモノは、時の流れとともに変化を余儀なくされる。」と推論しています。そして、既存のモノの欠点に気づき、それを修正して行くことを発明家の才能であると述べ、多くの発明家を紹介しています。
本書の原題は、訳書の副題に相当する『The Evolution of Useful Things』となっていますが、訳書のタイトルとなった第1章の「フォークの歯はなぜ四本になったか」はタイトルに持ってくるだけあって非常に引き込まれる内容になっています。それは、単に食器のデザインにとどまらず、どのようにして食事の方法やマナーが進化してきたかを紐解くものであり、また、その進化の仕方には他の生物の進化や歴史と同じような「経路依存性」があることが述べれらているからです。1000年前の人たちはナイフ1本で肉を切り、ナイフの先端を刺して口に運んでいましたが、その後、2本のナイフを使うようになり、左手のナイフで肉を固定し、右手のナイフで切る習慣ができます。しかし、食べ物を押さえるのには適していないというナイフの欠点がフォークの発達を促します。元々のフォークは、台所で肉を切り分ける時に使う2本の歯を持つものでしたが、イタリアでは14世紀頃から食卓用のフォークを使う習慣が始まります(他の国ではまだ肉は手で押さえて切るものだったので、フォークを使う人は「華美で女々しい道具」としてけなされたそうです。)。
当初は2本だったフォークの歯には、小さな食べ物を拾えなかったり、食べ物が滑りやすいという欠点があるために、3本目、4本目の歯が追加され、現在の形に近いものになります。また、食べ物を突き刺す役割がフォークのものになったために、ナイフの刃先は丸みを帯び、ナイフの面に食べ物を載せる役割を持つようになります。
この他、本書では、ゼムクリップに代表されるペーパークリップの進化や、ファスナーの誕生、ハンマーや缶切りの形状など、様々な人工物がどのように進化して行ったかを、欠点の発見と改良、受容と拒否などの観点から解説しています。
完成したように見える身の回りの実用品のデザインが、どのように今の形状に進化してきたのか、思いを馳せるきっかけになる一冊ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
フォークとナイフの使い方に関して、ある程度以上の年齢の方ならば、子供の頃、ライスなどの細かいものはフォークの背に乗せて口に運ぶ、と教えられた経験があるのではないかと思います。この方法は18世紀のヨーロッパで標準的な使い方になっていたもので、フォークの歯をいくらか湾曲させることで、フォークの柄を高く持ち上げなくても食べ物を口に運ぶことができるようになったという歴史を持っています。
しかし、植民地時代のアメリカではフォークは珍しく、主にナイフとスプーンで食事をとっていたそうです。伏せたスプーンで肉を押さえつけ、ナイフで切るという食べ方をした人もいたということが述べられています。その後、スプーンを右手に持ち替え、すくって口に運ぶという食べ方が一般化します。この食べ方はフォークが一般化した現在でもアメリカ流の食べ方として残った「右往左往(ジグザギング)」という習慣となっています。フォークが一般的でなかったアメリカでは、後から輸入されてきたフォークのことが「先割れスプーン」と呼ばれていたことも、アメリカではヨーロッパとは違った食習慣が定着していたことを物語っています。
このように、現時点でおかしなマナーとされているものでも、将来にはそちらの方が主流になる可能性があるかもしれません。
■ どんな人にオススメ?
・身の回りの実用品のデザインの由来を知りたい人。
■ 関連しそうな本
ヘンリー・ペトロスキー (著), 忠平 美幸 (翻訳) 『ゼムクリップから技術の世界が見える-アイデアが形になるまで』
ヘンリー ペトロスキー (著), 渡辺 潤 (翻訳), 岡田 朋之 (翻訳) 『鉛筆と人間』
ヘンリー ペトロスキー (著), 池田 栄一 (翻訳) 『本棚の歴史』
テッド・ヴァンクリーヴ 『馬鹿で間抜けな発明品たち』
■ 百夜百音
【イン・コンサート】 仙波清彦とはにわオールスターズ オリジナル盤発売: 1991
昔、J-WAVEで土曜日の夕方にやっていた番組で流れていた味の素のCMの、調理の音をパーカッションに見立てる「キッチンパーカッショニスト」シリーズが好きでした。
投稿者 tozaki : 2005年12月31日 14:00
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