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2006年01月07日

思考のための道具―異端の天才たちはコンピュータに何を求めたか?

■ 書籍情報

思考のための道具―異端の天才たちはコンピュータに何を求めたか?   【思考のための道具―異端の天才たちはコンピュータに何を求めたか?】

  ハワード ラインゴールド (著), 青木 真美, 栗田 昭平 (翻訳)
  価格: ¥1,890 (税込)
  パーソナルメディア(1987/12)

 本書は、「数値の計算に用いられる神秘的な装置」から、情報を知識へ変形するのを助ける思考支援の装置へと、コンピュータの可能性を発展させた人物たちの思想と功績、そしてその人物像について述べているものです。本書ではこのような人たちを以下のように呼んでいます。
・「開祖(partiarchs)」:一世紀以上あるいは数十年前のコンピュータ史上の重要な人物
・「パイオニア(pioneers」:PC技術の共同創造者であり、現在も人間の心とマシンのインターフェイスの探求に携わる人々
・「インフォノウト(infonauts)」:もっとも若く、認知科学の領域を探求する人々
 世界初のコンピュータであるENIACの一世紀も前に、もっとも古い 「開祖」であるチャールズ・ベバッジとラブレイス夫人エイダは、「解析機関(Analytical Engine)」の完成まで後一歩のところに近づきます。この英国の2人の奇人が設計した解析機関は、現代の計算機に大変類似した機能を備えたもので、「ミル」と呼ばれる計算機関を中心に持ち、「ストア」と呼ばれる記憶装置にその計算結果を蓄え、穿孔カード読取装置による入力が可能で、さらに計算結果を示すための自動植字機も設計されていました。エイダは世界初のプログラマであり、現代のコンピュータ言語の重要なアイデアである「サブルーチン(繰り返し使用される計算手順をライブラリに記憶し、必要に応じて呼び出す)」、「ループ」、「ジャンプ(もしある条件が満たされるならば別のカードにジャンプする)」を考え出しました。
 本書では、この他の「開祖」として、「記号論理学」を発明したジョージ・ブールや、数学と論理学を機械の形に統合したアラン・チューリング、現在のコンピュータのアーキテクチャを発明し「本当の人間ではなく、他のことすべてがうまいのと同じように、人間のふりをする技にたけている何か別の生物である」と言われたジョン・フォン・ノイマン、動物・人間・機械の制御と通信システムの特性に関する「サイバネティックス」の概念を生み出したノーバート・ウィーナー、情報理論の数学的基礎を築いたクロード・シャノン他が紹介されています。
 また「パイオニア」としては、対話型コンピュータを作ったJ・C・R・リックライダー、人間の知性の増幅に取り組んだダグ・エンゲルバート、ARPAnetを構築したロバート・テイラー、最初の本当の意味でのパーソナルコンピュータであるAlto計画のソフトウェアに携わったアラン・ケイらが紹介されています。
 本書は単なる計算機としてのコンピュータの歴史書ではなく、「思考のための道具」を夢見て作り上げてきた異端の天才たちの列伝として非常に読み応えのあるものとなっています。


■ 個人的な視点から

 本書の多くの章は、「開祖」「パイオニア」「インフォノウト」の誰か一人に焦点を当てていますが。第8章の「ソフトウェア史の証人:MAC計画のマスコット」では、デビッド・ロッドマンを中心に置きながらも、この章の主人公は、青白い顔に落ち窪んだ目をして、自分たちにしかわからないような隠語を使いながら熱狂的にまくしたて」、「スペースウォー」ゲームに熱中する「ハッカー」たちの最初の世代です。「自動販売機から買えるものしか食べず、ここ三年間は肌に蛍光灯の光以外のものを浴びていない、ペプシをがぶ飲みして、眠れない一途なプログラム中毒者」という描写は、その後「ハッカー」という言葉の使われ方は変わっても、生活スタイルそのものは変わらないのだと感じました。
 本書の原書は1985年に出版されたものですが、PARCに関する章では、PARCを卒業したチャールズ・シモニーが手を組んだ相手として次の世代の天才少年ビル・ゲイツが紹介されています。「マイクロソフト社は現在では世界第二のマイクロコンピュータのソフトウェア会社である。」という記述に時代を感じてしまいます。


■ どんな人にオススメ?

・「コンピュータ様」に使われるのではなく、自分が考える道具として使いたい人。


■ 関連しそうな本

 西垣 通, フィリップ ケオー, A.M. チューリング, ダグラス・C. エンゲルバート, テリー ウィノグラード, ヴァネヴァー ブッシュ, J.C.R. リックライダー, テッド ネルソン 『思想としてのパソコン』 
 アラン・C. ケイ (著), 鶴岡 雄二 (翻訳) 『アラン・ケイ』 
 ペッカ ヒマネン, リーナス トーバルズ, マニュエル カステル (著), 安原 和見, 山形 浩生 (翻訳) 『リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神』 2005年10月29日
 坂村 健 『痛快!コンピュータ学』 2005年07月02日
 山形 浩生 『コンピュータのきもち 新教養としてのパソコン入門』 2005年07月23日
 佐藤 俊樹 『ノイマンの夢・近代の欲望―情報化社会を解体する』 


■ 百夜百音

オックス VINTAGE COLLECTION【オックス VINTAGE COLLECTION】 オックス オリジナル盤発売: 2005

 オックスといえば「スワンの涙」が有名ですが、学生時代に「ダンシング・セブンティーン」はいい曲でした。「眼鏡が好き」という歌詞はけして「眼鏡っ娘萌え」という意味ではないと思うです。


『恋する眼鏡』恋する眼鏡

投稿者 tozaki : 2006年01月07日 11:00

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