« 思考のための道具―異端の天才たちはコンピュータに何を求めたか? | メイン | ノイマンの夢・近代の欲望―情報化社会を解体する »
2006年01月08日
統計はこうしてウソをつく―だまされないための統計学入門
■ 書籍情報
ジョエル ベスト (著), 林 大 (翻訳)
価格: ¥2730 (税込)
白揚社(2002/11)
本書は、「おかしい統計がどこから生まれ、なぜなかなか消え去らないのかについて」を、様々な政府の公式文書や学術調査報告書、そして「社会活動家」たちの主張の根拠とする数字の中から取り上げ、これらの社会統計の用いられ方に対する理解を深め、判断を下す力を高めることを目的としたものです。世間の多くの人々は統計数字に出会ったときに「疑いもせずに統計を受け入れる」と著者は述べています。しかし、著者が「突然変異統計」とよぶおかしな統計、数字の意味が理解できなかったり、問題を宣伝する熱意が強いあまりに、統計を劇的で関心を引く数字に「改良」し、「嘘も方便」的態度によって恋に情報をゆがめた結果などによって生まれます。
著者は、統計に出会ったときに次の3つの問いかけをすべきと述べます。
(1)誰がこの統計をつくったのか。
(2)この統計はなぜつくられたのか。
(3)この統計はどのようにつくられたのか。
社会問題の定義に関して、ケースを問題に含めるかどうかによって、「正への誤分類」(広すぎる定義)と「負への誤分類」(狭すぎる定義)の2つがあり、「新たな社会問題をつくりだそうとする活動家は、正への誤分類より負への誤分類を困ったことを見な」します。世間で広く認識されていない問題は、狭すぎる定義では問題の全容を捉え損ねてしまうので、活動家は負への誤分類が起こらないような広い定義を主張する傾向があると著者は述べています。
また、母集団を代表しない標本を元にした「便宜的標本抽出」も社会問題を宣伝したい活動家にとってはよく使われる手法です。著者は「社会問題についての統計は普通、無作為標本とはほど遠い標本に基づいている。」と述べています。
また「当て推量」も、社会活動家がよく使う手口です。活動家は統計に現れない「暗数」(警察に通報されない犯罪件数など)を多めに見積もる傾向があると述べられています。1980年代のホームレス支援活動家のミッチ・スナイダーは、ホームレスが2、300万人いるという見積もりを主張していましたが、テレビ番組でその根拠を尋ねられ、根拠がなかったことを認めています。
これらの問題点を指摘した上で、著者はよい統計の特徴として、
(1)よい統計は当て推量以上のものに基づいている。
(2)よい統計ははっきりした妥当な定義に基づいている。
(3)よい統計ははっきりした妥当な計測方法に基づいている。
(4)よい統計はよい標本に基づいている。
という4つの点を挙げています。
逆に悪い統計の代表的なものとして、著者は「突然変異統計」の問題点を挙げています。突然変異統計は、一度マスコミに登場すると、数字が一人歩きし、いつまでも蔓延し生きながらえる可能性が十分あると著者は述べています。著者は、突然変異統計を生み出す誤りとして以下の4点を挙げています。
(1)不適切な一般化・・・いくつかの事例から(証拠で裏付けられない)一般的状況を推測する。
(2)変換・・・数字の意味を変えてしまう(例:拒食症の人15万人→拒食症による死亡15万件)。
(3)混乱・・・複雑な統計がねじ曲げられる(例:純付加、オッズ比などの込み入った統計的概念)。
(4)複合的な誤り・・・おかしな統計が一人歩きし、何度も繰り返される。
本書は、衝撃的な社会問題を告発する数字に出会ったときに、ぜひ一度思い出して欲しい一冊です。
■ 個人的な視点から
本書で指摘しているような「活動家によってねじ曲げられたおかしな統計」を徹底的に調べ直し、批判しているのがロンボルグによる『環境危機をあおってはいけない』です。環境問題ほど、「暗数」の部分が大きく、不適切な一般化や当て推量がまかり通っている世界はないことが指摘されています。特に、感情を直撃するような映像、例えば油を浴びた海鳥や砂漠化した森などの映像とともに、ごく単純化したグラフや、「このペースでは百年後には××になります。」というメッセージが添えられていると人間はコロリと信じてしまうものです。
同じようなことが、経済の世界でも多くまかり通っています。例えば国家財政を家計簿のアナロジーで説明することは、わかりやすさという利点がある反面、大きな誤解を招くおそれがあります。このような場面でおかしな統計を使いたいという動機は、政府にとっても、社会問題を提起したい活動家にとっても、両方が持っているものです。
私たちは、統計に代表される衝撃的な数字を伴った主張に出会ったときは、常に「誰が、なぜ、どのように」その数字を作ったのかを再確認する習慣を持つ必要があります。
■ どんな人にオススメ?
・数字を示されるとコロリと信じてしまう人。
■ 関連しそうな本
ビョルン・ロンボルグ (著), 山形 浩生 (翻訳) 『環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態』 2005年09月19日
A・K・デュードニー (著), 田中 利幸 『眠れぬ夜のグーゴル』 2005年12月25日
谷岡 一郎 『「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ』 2005年12月13日
ダレル・ハフ (著), 高木 秀玄 (翻訳) 『統計でウソをつく法―数式を使わない統計学入門』
■ 百夜百音
【GOLDEN☆BEST】 西城秀樹 オリジナル盤発売: 2004
レイザーラモンHGが「YOUNG MAN」をカバーする、ということで話題になっていますが、決して西城秀樹のカバーではないです。自らの「芸」のコンセプトに忠実に、と言うよりネタ元に忠実に「一人Village People」をやるということでしょうか。
投稿者 tozaki : 2006年01月08日 06:00
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/640

