« 統計はこうしてウソをつく―だまされないための統計学入門 | メイン | 人事の経済分析―人事制度改革と人材マネジメント »

2006年01月09日

ノイマンの夢・近代の欲望―情報化社会を解体する

■ 書籍情報

ノイマンの夢・近代の欲望―情報化社会を解体する   【ノイマンの夢・近代の欲望―情報化社会を解体する】

  佐藤 俊樹
  価格: ¥1785 (税込)
  講談社(1996/09)

 本書は、様々な文脈の中で繰り返し使われる「情報化社会」という神話の正体を明らかにし、技術の発展と社会変化に関する誤解を解きほぐすことで、私たちが生きている近代産業社会の夢の正体を探ろうというものです。
 著者は、世間に蔓延する「情報化社会」という言葉や「情報技術が社会の仕組みを大きく変える」というフレーズが、1960年代末から30年間の間に、何度かのブームを伴いながら繰り返し使われていることを明らかにします。1971年に書かれた『講座情報社会科学8 情報化社会論1 情報化社会の産業システム』という本には、「工業化の文明社会から脱工業化の文明後社会への転換」が唄われ、「情報化社会」がすぐにでも到来するもののように書かれています。次の情報化社会論ブームである1984年に出版された『ハイテクノロジーと未来社会』という本には、マイクロエレクトロニクスの進歩が産業構造だけでなく社会構造を大きく変える「情報革命」「新産業革命」「第三の波」という呼ばれる、という言葉が書かれています。そして、1994年の『テクノカルチャー・マトリクス』という本にも、「情報社会のテクノメディアは、世界の中で世界に向けてわれわれが行動する際に避けて通ることのできない歴史的アプリオリとなっている。」などが書かれています。著者は、30年もの間、ずっと「情報化によって社会が大転換する」ということが言われ続けていることを指摘しています。そして、「情報化社会」という言葉には2系統の使われ方があり、近代産業社会の先にある「ポスト近代社会」を意味するものと、近代産業社会のヴァリエーションの一つである「ハイパー産業社会」を意味するものとがあり、なおかつこの二つの情報化社会論が混在したまま使われ続けていたことを指摘しています。著者はこの理由を「情報化社会」という言葉には実体が存在しない空虚な記号だからだと述べています。
 著者は、「情報化社会」とは、「技術予測の名を借りた未来社会への願望に他ならない。情報化社会論は30年間、そうした願望を語ってきた」と指摘し、この願望をあたかも技術の必然であるかのように語られていることを問題視しています。技術によって社会が変化するのではなく、社会の仕組みが変化するのは我々がその方向を選択しているからであり、その責任を技術のせいにする責任回避の姿勢が問題であるとしています。
 著者は、「情報化社会論」が以上のような問題点を抱えながら30年間続いてきて、すでに一つの立派な産業になっていることを指摘しています。情報技術の展開と未来社会イメージの変遷を組み合わせたモデルチェンジをうまく使うことで、情報化社会論は永遠の若さを手に入れた「生きている死体(リヴィングデッド)」となりえたと述べています。
 「自分が聞かされている話は30年前の焼き直しではないか?」・・・・・・情報化と社会変化の関係に関心がある方には、ぜひ一度読んでいただきたい1冊ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書では、古くから行われている技術予測について、過去の文献にさかのぼって述べているので、タイトルにあるフォン・ノイマンやアラン・ケイなど、現代のコンピュータの原型を作ってきた思想家たちについて要所要所で触れられているのですが、あまり文脈上必要のない写真や画像も多く、印象を操作するために使われているようにも思われました。この辺りは著者の責任というよりも、編集者のセンスなのかもしれません。松岡正剛が編集したような感じとも言えないこともないのですが・・・。
 また、本書は内容的には面白かったのですが、社会学の人の文章というのは冗長で読みにくい傾向があるように感じました。「社会学者というのは疑り深くないといけない職業」と著者自身が述べているので、あまりサクサクとした簡潔な文章は苦手なのかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・「情報化社会論」のマンネリ商法に踊らされたくない人。


■ 関連しそうな本

 佐藤 俊樹 『不平等社会日本―さよなら総中流』 2005年03月22日
 奥野 正寛, 池田 信夫 『情報化と経済システムの転換』
 佐藤 俊樹 『00年代の格差ゲーム』
 坂村 健 『痛快!コンピュータ学』 2005年07月02日
 見田 宗介 『現代社会の理論―情報化・消費化社会の現在と未来』


■ 百夜百音

AXS SINGLE TRACKS【AXS SINGLE TRACKS】 access オリジナル盤発売: 2002

 レイザーラモンHGのネタ元がVillage Peopleだとすると、Accessのネタ元はErasureあたりでしょうか。デジタル音とアナログ音の違いはあるのですが、男性デュオがメロディアスなサウンドに載せて同性愛ネタを歌うというコンセプト的にかぶるような気がします。


『Who Needs Love (Like That)』Who Needs Love (Like That)

投稿者 tozaki : 2006年01月09日 06:00

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/641

コメント

コメントしてください




保存しますか?