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2006年01月26日
教育委員会廃止論
■ 書籍情報
穂坂 邦夫
価格: ¥1,680 (税込)
弘文堂(2005/06)
本書は、全国初の25人程度学級やホームスタディー制度など、積極的な取り組みで知られる埼玉県志木市の前市長である著者が、義務教育の実施主体である市町村の立場から見た「義務教育」と「教育委員会制度」を徹底的に検証し、「現行制度と教育現場の実態との間にどのようなズレや矛盾があり、どんな欠陥があるのか」を世に問うために出版されたものです。
著者は、教育委員会制度が住民にはほとんど理解されておらず、外部からの目に晒されることなく堅くガードされたまま半世紀が経過していることを指摘し、義務教育の実施主体である市町村や教育現場から遠く離れた国家官僚が「裁量の制度」としている、机上の理想論である義務教育制度、教育委員会制度を、社会環境の変化と現場の課題に即応できるものにすることが不可欠であると主張しています。
現行の教育委員会は、地方公共団体の長が指名し、議会の議決を得て任命された5人の教育委員から成り、任期4年、教育長は委員の互選で任命されています。この制度は、
(1)首長から独立した合議制の執行機関とすることで「教育行政における中立性、安定性、継続性」を担保。
(2)レイマンコントロールにより「地域住民の多様な意見」を反映。
(3)教育行政の一体的な推進
という理想と目的を持っていますが、著者は、現実には硬直化した創造性のない「学校の監視機関」に変質していると指摘します。
まず、首長からの独立という建前も、現実には任命権と予算編成権(スタッフの人選含む)を首長が握ってしまっています。また、住民の意思の反映を意図した合議制は前例踏襲的に陥りやすく、その責任も教育長ではなく機関としての委員会にあるため不明確になりやすいと指摘しています。現行制度では、教育行政に求められるレイマンコントロールの機能は形骸化されたまま放置され、市民の前に「専門行政」という壁が立ちはだかっているのです。
この他、「教員の質の確保」という点で大きな欠陥を持つ県費負担教職員制度について、全国で毎年1兆円近い経費がムダに出費されており、これを子供たちの直接的な指導に当たる教員に振り返れば大きな教育効果を得られると主張しています。
著者は、現行の市町村教育委員会と校長の権限に関しても、下記の3点にまとめています。
(1)個性のある学校を作るために必要な市町村教育委員会の権限が制度上弱い。
(2)学校づくりのリーダーである校長が転勤族であり、市町村教委にも人事異動の権限がない。
(3)教員の人事異動に関する校長の権限は具申権にとどまる。
著者は、現行の教育委員会制度では、上部機関に対して「従順」で「もの言わぬ」存在になってしまった「生きた化石」に過ぎず、自立した児童・生徒の育成は期待できないと述べ、市町村教育委員会の裁量を拡大し、自主権を確立する制度改革を主張しています。具体的には、国の関与は教育水準の維持と機会均等に限定し、教職員の任命権は市町村に与え、教職員給与は市町村に義務教育交付金として直接配分、校長の権限の拡大、情報公開と学校運営への住民参加、教育委員会体制の再構築、などです。
本書は、教育関係者はもちろん、子供たちが受ける教育に関心と責任を持つ保護者や地域住民(誰もがどこかの自治体に住んでいるのですが)にもぜひ読んでいただきたい一冊です。
■ 個人的な視点から
著者は、教育分野以外にも、市民が自ら行政サービスを担い、市の職員は10分の1に減らす「地方自立計画」や数々の特区構想などで知られています。本書は、著者の語り口そのままに理路整然とわかりやすくまとめられていて、非常に読みやすくなっています。
本書の内容は、2003年から2004年にかけて、犬山市長らを招いて志木市で開催された「討論:ザ・教育委員会」などでの議論を踏まえたものだと思われますが、この討論会も非常に熱いものでした。
■ どんな人にオススメ?
・地域に根ざした学校に期待する人。
■ 関連しそうな本
穂坂 邦夫 『どの子も一番になれる―本当の学力とは何か』
穂坂 邦夫 『市町村崩壊 破壊と再生のシナリオ』
埼玉新聞社 (編集) 『生き生きまちづくり 埼玉県志木市の挑戦』 2005年04月17日
■ 百夜百マンガ
知人は小学生時代に「○○クンがエッチな本を持ってきています。」と学級会で女子に糾弾されたことがあるそうです。
ご愁傷様
投稿者 tozaki : 2006年01月26日 07:00
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