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2006年02月09日

ミュージアムが都市を再生する

■ 書籍情報

ミュージアムが都市を再生する   【ミュージアムが都市を再生する】

  上山 信一, 稲葉 郁子
  価格: ¥2,100 (税込)
  日本経済新聞社(2003/12/16)

 本書は、日本各地で存亡の危機に瀕しているミュージアムを、地域再生や社会変革の鍵として役割を見直し、都市の共生と再生の方策としてその経営と評価を論じたものです。
 本書は、ミュージアムの役割を、大企業と国家が主役の「大木経済」から、小さなベンチャーや組合組織的な中小企業群、NPOなどが担い手となり、地域が消費と生産と場となる「雑木林経済」へ移行する上でのダイナミズムを産む鍵となる存在として位置づけています。芸術文化には、世界中から人を寄せ付け雇用を生むという経済効果と、すぐれた才能をひきつけ、新しい産業をもたらす創造都市効果の2つの効果があるのです。
 著者は、ミュージアムを都市の中から浮遊した存在としてではなく、都市が持つソーシャル・キャピタルの形成がミュージアムづくりには不可欠な存在と位置づけています。ミュージアムには地域力と民度(ソーシャル・キャピタルの蓄積)を両方とを高めるブースターとしての役割が期待されているというのです。
 このような社会・都市問題としての位置づけにおいてミュージアムの経営問題を、次の4つのレベルで捉えています。
(1)オペレーション・・・現場の作業・業務手順の効率運用
(2)マネジメント・・・館の持つ潜在価値を最大限に活かすための各種戦略の発動
(3)ガバナンス・・・経営の健全性、安全性を確立するための仕組み。
(4)社会体制・・・ミュージアムの存立基盤としての資金、土地、建物、人材、ボランティアなどの資源供給、そして外部経済効果の還流のメカニズムの構築。
 このように捉えると、ミュージアムの経営問題を、現場の努力不足などのオペレーションの問題と決め付け、努力を強いるだけでは解決できない問題であることが多いことがわかります。特に、バブル期に新たなハコモノとして全国に乱立した官営ミュージアムの多くが、赤字を垂れ流す存在として目の敵にされ、単純なコスト削減を強いる予算カットによって、何年も同じ展示を店晒しにしたような「死に体」のような状態になり、その責任を現場の努力不足に転嫁されていますが、現場のオペレーション・レベル以上に、ガバナンスや社会体制に起因する問題の方が、重大である場合が少なくないことが指摘されています。
 本書は、ミュージアム関係者など関心のある人はもちろん、地域力の向上や都市の再生に関心のある人にも大きなヒントを与えてくれるものではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書で指摘されている官営ミュージアムのガバナンスの欠如の問題については、実際に川崎市民ミュージアムの経営見直しに当たって、ミュージアムを造ったら後は世話をしない「ネグレクト虐待」である、という指摘が著者らによってなされています。
 しかし、この「行政によるネグレクト問題」は何もミュージアムに限った話ではありません。予算のつき方や市民サービスに与える影響は多少違っても、公園や体育施設などの運営を行っている各種財団についても構造的には同じ問題を抱えています。指定管理者制度によってにわかに火がついたかのように報じられていますが、現場の努力不足や高コスト体質の背景にある、同じようなネグレクト虐待に目を向ける必要があります。


■ どんな人にオススメ?

・「雑木林経済」という言葉にピンと来た人。


■ 関連しそうな本

 村井 良子, 上山 信一, 三木 美裕, 佐々木 秀彦, 平田 穣, 川嶋-ベルトラン 敦子 『入門ミュージアムの評価と改善―行政評価や来館者調査を戦略的に活かす』 2005年11月17日
 三木 美裕 『キュレイターからの手紙―アメリカ・ミュージアム事情』
 上山 信一 『「行政評価」の時代―経営と顧客の視点から』 2005年01月21日
 上山 信一, 玉村 雅敏, 伊関 友伸 (編) 『実践・行政評価―事例、解説、そしてQ&A』
 デビッド ディーン (著), 北里 桂一, 山地 有喜子 , 山地 秀俊 (翻訳) 『美術館・博物館の展示―理論から実践まで』
 P・H・マン (著), 中野 正大 『社会調査を学ぶ人のために』


■ 百夜百マンガ

タイガーマスク【タイガーマスク 】

 イタリアでも放送されていた作品です。テーマ曲はさすがに「強ければ~」ではありませんでしたが。
 格差社会を象徴するような作品とも思えますが、この作品が作られた当時は格差はなかったのでしょうか。

投稿者 tozaki : 2006年02月09日 07:00

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