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2006年02月12日

疑似科学と科学の哲学

■ 書籍情報

疑似科学と科学の哲学   【疑似科学と科学の哲学】

  伊勢田 哲治
  価格: ¥2,940 (税込)
  名古屋大学出版会(2002/12)

 本書は、「疑似科学」を切り口にした科学哲学の入門書です。著者は執筆の動機のひとつにオウム真理教の幹部に偏差値の高い大学の理系出身者が多くいたことを挙げ、彼らが「疑う」ことを習ってこなかったのではないかという点に言及しています。
 「科学」が、「この世界がどうなっているかについて経験を通して得られる(または確かめうる)知識」を求めていることについて、「哲学」は、経験的知識を超える問題を相手にした論理学、認識論、形而上学、価値理論の4つの問題領域に渡っていると述べられています。本書は、科学と疑似科学の間の区別の問題である「線引き問題(demarcation problem)」の観点から、科学哲学の課題として以下の3点を挙げています。
(1)科学と疑似科学の間には推論の方法を始めとした方法論的側面についてどんな違いが存在するだろうか。
(2)科学が存在するとみなすものと疑似科学が存在するとみなすものの間には差があるのだろうか。
(3)科学に関する政策と疑似科学に関する政策はそれぞれどのようにあるべきだろうか。
 本書はまず、疑似科学の問題では外すことのできない「創造科学論争」を取り上げます。アメリカでは、1920年代に最初の進化論反対運動が起こり、いくつかの州では学校で進化論を教えることを禁じる法律が作られ、有名なスコープス裁判によって進化論の授業をした生物学の教師は有罪とされます。しかし、1960年代から公立学校への宗教的圧力が違憲であるとみなされ、これらの法律は廃止されますが、これに対する反応として、原理主義者から出てきたのが「創造科学」という考え方です。創造科学には、地球が比較的最近(約6000年前)に作られたとする「若い地球」派と、通常の地質学の主張を認める「古い地球」派の2つがあり、若い地球派は、「洪水地質学」という、数億年かけて堆積したと考えられる地層はノアの大洪水によって短い期間に堆積したと主張をしています。
 線引き問題を扱う以上避けて通れないものとして、ポパーの反証主義があります。ポパーは反証可能性の概念を科学理論の良し悪しや線引き問題に持ち込み、「よい科学理論とは、高い反証可能性を持つもの、すなわち大胆な予測を行うもののことである」とし、逆に、「原理的に反証不可能な仮説は科学的仮説とは言えないと考え、これを科学と疑似科学を分ける基本線」としました。本書ではこの反証可能性を使って創造科学を検証しますが、科学とも疑似科学とも明確な切り分けは難しいとしています。
 本書ではこの他、占星術や超能力、代替医療等を取り上げています。これらの中で、トーマス・クーンのパラダイム論についても解説されています。著者はパラダイム論と科学革命について、次のようにまとめています。
   パラダイムの成立
  →通常科学
  →解けないアノマリの蓄積(=危機)
  →異常科学(=新しいパラダイムの提案)
  →科学革命(新しいパラダイムの成立)
  →新しい通常科学
 また、疑似科学の問題では必ず登場するヴェリコフスキーの『衝突する宇宙』も扱われています。
 代替医療に関しては、多様な代替療法に共通する特徴として、
(1)全体的視点の強調
(2)精神的な側面の強調
(3)自然な治癒力の信頼
(4)古代からの知恵の尊重
の4つの項目を挙げています。これらの項目は、正統医学にも通じる主張ではあり、いかがわしい民間療法まで連続的につながっている点に注意すべきであるとしています。
 人がなぜ疑似科学を信じてしまうのか、という問題に関しては、「マーフイーの法則」を例に挙げながら、「代表性バイアス」と「利用性可能性バイアス」という2つのバイアスを解説しています。代表性バイアスとは、「典型的なものの頻度を実際以上に高く評価してしまうバイアス」で、珍しくないことを珍しく感じてしまい、「虫の知らせ」や「シンクロニシティ」等、必要以上に「偶然起きる確率」を低く見積もってしまうことが述べられています。また、利用可能性バイアスとは、「すぐに思いつくもの、目につくものの頻度を実際より高く評価するバイアス」を指し、ユリ・ゲラーの超能力の実演の例が紹介されています。
 本書は、疑似科学の線引き問題を入り口に、科学哲学の入門書的な解説を行っていますが、怪しげな詐欺商法や胡散臭い宗教詐欺に引っかからないためにも、科学的なものの見方を身につける重要性を教えてくれます。


■ 個人的な視点から

 占星術に関して、「バーナム効果」という効果が心理学では確認されています。これは、誰にでも当てはまりそうな文章でも自分のことだと感じてしまう傾向を言うそうです。
 これは占星術に限らず手相や血液型など占いと名がつくものならば何でも当てはまりそうです。
 また、同じように、コーチングやカウンセリングの名目で誰にでも思い当たりそうなことを「言い当て」て、それを切り口にして相手の情報を引き出すという方法も使われているのではないかと思います。
 最近チェーンメール的に「人生のどんな問題も解決する知恵」と銘打った「鏡の法則」というショート・ストーリーがばら撒かれています(本文中に、「このレポートのことを誰かに教えてあげたいと思った方は、ぜひ教えてあげてください。 その人の幸せな笑顔を想像して、ぜひ分かち合ってあげてください。このレポートは、コピーも転送もOKです。」と書かれています。)が、この文章にも疑似科学の匂いを感じてしまう人は少なくないのではないかと思います。
 本書を読んだ後で、「われわれは学校教育で、目に見えるものを対象にした物質科学ばかりを教えられて育ちましたからね。今、私が話していることは、心理学ではずいぶん前に発見された法則なんです。」という文章を目にすると、創造科学の主張との共通点を感じませんか。
 
○読んだ人の9割が涙した話!
 ショートストーリーブック(無料)
[人生のどんな問題も解決する知恵 『鏡の法則』]
http://coaching-m.co.jp/payforward.htm


■ どんな人にオススメ?

・詐欺商法や宗教を装った詐欺に引っかかりたくない人。


■ 関連しそうな本

 マイケル・W. フリードランダー (著), 田中 嘉津夫 (翻訳), 久保田 裕 (翻訳) 『きわどい科学―ウソとマコトの境域を探る』 2006年01月21日
 マーティン・ガードナー 『インチキ科学の解読法 ついつい信じてしまうトンデモ学説』 2006年02月11日
 マーティン ガードナー (著), 市場 泰男 (翻訳) 『奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究』
 マーティン ガードナー (著), 市場 泰男 (翻訳) 『奇妙な論理〈2〉なぜニセ科学に惹かれるのか』
 A・K・デュードニー (著), 田中 利幸 『眠れぬ夜のグーゴル』 2005年12月25日
 ジョエル ベスト (著), 林 大 (翻訳) 『統計はこうしてウソをつく―だまされないための統計学入門』 2006年01月08日


■ 百夜百音

ユリ・ゲラー【ユリ・ゲラー】 ユリ・ゲラー オリジナル盤発売: 0

 このCD昔なぜか買っちゃいました。カタコト日本語の怪しげな語りが素晴らしいです。
 ちなみにWikipediaの「ユリ・ゲラー」に書かれているポケモンの「ユンゲラー」訴訟に登場する任天堂の弁護士は凄すぎる!!! こういう人を頭がいい人というのでしょう。
 最近話題の「きっこのブログ」でも紹介された空手バカボンのアルバムには、「ユリ・徹・ゲラー」なる人物が登場します。


『空手バカボン』空手バカボン

投稿者 tozaki : 2006年02月12日 10:00

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