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2006年02月13日

高校を変えたい!―民間人校長奮戦記

■ 書籍情報

高校を変えたい!―民間人校長奮戦記   【高校を変えたい!―民間人校長奮戦記】

  大島 謙
  価格: ¥1,575 (税込)
  草思社(2004/11)

 本書は、アメリカで東芝の子会社の社長をしていたエンジニアが、まったくの「異界」である県立高校に民間人校長として降り立ち、企業人の目から見た「学校」というネバーランドの異質さや、学校を変えるための奮闘を描いたものです。
 アメリカでベンチャー・キャピタルの社長をしていた著者は、日本でもベンチャー企業投資をやりたい、という夢を実現すべく準備をしていましたが、9.11テロに直面し、その構想はお流れになってしまいます。転職を考え始めた著者の前に、友人から以前話をしたことのある民間人校長の公募の話が紹介されます。アメリカから一次試験の論文を応募した著者は、二次面接を経て65人の応募の中から著者ともう一人(三井物産出身)の2人が三重県の民間人校長に就任することになります。
 著者が赴任することになったのは、「周辺校」と呼ばれる県立白子高等学校です。著者は、「ちょっと問題のある学校のほうが、少しでも改善すれば効果が目に見えて出てくるし、やりがいもある。」と前向きに捉えます。この辺りの発想が役人と違うところなのかもしれません。著者は、「学校経営の改革方針」である「新・白子高校創り」の中で、「三つの力」として、「組織力」、「教師力」、「環境力」を提唱しています。
 本書の大きな柱は、企業人である著者の目から見た学校の「異界」ぶりと、学校を変えるための取組みの2つからなります。前者は、前時代的な職員会議の進行、大量のハンコの山、そしてなによりも教師の権利意識の強さに向けられます。著者が取り組んだ学校改革の手始めが、授業公開です。これによって生徒を授業に集中させたいという狙いがあったのですが、教師から「自分たちが評価されるのではないか」という反発を受けます。「生徒を評価することは違和感なく通常やっているのに、いざ自分が評価されると思うと、極端に恐れを抱く」という不思議さがここにあります。他にも、自分の受け持ちのトイレを汚されたくないために個室に鍵をかけてしまう、体育祭の公開を嫌がる、駐車カードの表示を管理強化だと反対する、など、子供のような権利意識の強さを次々に目の当たりにします。
 学校を変えるための取組として、著者は朝10分間の読書、略して「朝読」をスタートします。また、ジュリアーニ市長の「破れ窓理論」を応用したトイレ美化プロジェクトの取組では、民間と学校世界の一番の違いとして、切迫感のなさを指摘しています。企業人は会社がつぶれれば自分も職を失うが、教師は学校が統廃合でつぶれてもどこかの先生ができるから学校を守らなければという意識が薄いのだといいます。「こうした切迫感のなさが、世間の常識との違いの最たるものかもしれない」と著者は、民と官の両方に身を置いたものとして実感しています。
 著者は、民間人校長が教育現場でできることは、古い因習にとらわれた高校の非常識さを壊して時代の要請に応えるものに変えていくという「学校改革」であると述べています。著者は二年目には、「私は、校長になりたくてこの公募に応募したわけではなくて、学校改革をしたいから応募したのです。私は『普通の校長』になるために頑張るのではなくて、学校改革をするために頑張ります。だから、私は学校改革請負人なんです」というようになります。そして、企業人ならば当たり前に訓練される組織のミッションを意識するということを教師は全く訓練されていないこと、それどころか、授業で自分の教科を教える教授法すら教師になってから訓練されたことがないことに愕然としています。
 本書は、外の世界から閉ざされた「異界」(なかには魔界という人も)である学校世界を知ることができる点で一種の「冒険譚」として読むことができるものではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 著者の改革は、権利意識の強い教師たちから「管理強化だ」、「前例がない」と強い反発を受けます。中でも、イデオロギーに絡む話は特に敏感になるようで、国旗・国歌や卒業証書の西暦表記など、外国で暮らしていた著者の目には奇異に映る部分で「(世間の現実からの)逃走」じゃないて「闘争」を仕掛けられます。むしろ外国で生活し、外から日本を見てきたからこそ、日本人のアイデンティティーのなさに目が向くのかもしれません。「幻の日本・ハワイ連邦」の逸話を生徒に話したときに韓国併合にも言及したところ、飛んできてウニャウニャ言い出した世界史の教師が韓国の歴史を勉強したことが一度もないままに自虐史観キーワードを振り回し、逆に校長から勉強不足を指摘されると「もういいです、そんな話は聞きたくありません」と逃げ帰る話が紹介されています。
 著者自身は、『神風特攻隊員になった日系二世』という訳書があるくらいの人なのでこの分野は得意なようですね。


■ どんな人にオススメ?

・学校を変えたいと思っている人。


■ 関連しそうな本

 藤原 和博 『公立校の逆襲 いい学校を作る!』 2005年06月17日
 金子 郁容 (編著), 玉村 雅敏, 久保 裕也, 木幡 敬史(著) 『学校評価―情報共有のデザインとツール』 2005年02月25日
 藤原 和博 『世界でいちばん受けたい授業―足立十一中『よのなか』科』
 藤原 和博, 天野 一哉 『民間校長、中学改革に挑む』
 吉田 新一郎 『校長先生という仕事』


■ 百夜百マンガ

デカスロン【デカスロン 】

 「トリノオリンピック」という言葉を聞くと頭の中で「鳥のオリンピック」という言葉に変換されてしまいます。
 冬季オリンピックでも十種競技みたいな種目はあるのでしょうか。大変そうですが。

投稿者 tozaki : 2006年02月13日 20:00

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