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2006年02月17日

仕事とモティベーション

■ 書籍情報

仕事とモティベーション   【仕事とモティベーション】

  ヴルーム, 坂下 昭宣
  価格: ¥3,873 (税込)
  千倉書房(1982/01)

 本書は、個人の仕事行動をモティベーションに焦点を当てて論じた、モティベーション研究の古典です。本書の「原書」が出版されたのは今から約40年前の1964年、日本語訳が出たのは1982年と非常に古いのですが、モティベーションについて論じる上では決して外すことはできない古典の一つです。
 本書では、日常で様々な意味で用いられる「仕事」という言葉の代わりに「仕事役割」というタームを用い、「役割担当者によって遂行される機能の集合、すなわち財やサービスの生産に貢献する遂行」と定義されています。また、「モティベーション」というタームは、「人またはより下等な有機体が自発的活動の代替形態を選択する行動を支配するプロセスを意味するもの」と定義されています。著者は、モチベーションの議論における、「何が活動の形態を決めるのだろうか。どんな条件下で、有機体はある反応を選択したり、ある方向から別の方向へと移行するのだろうか。」という問題に重点を置き、「われわれは、モティベーションの中心問題は異なった自発的反応の中から有機体によってなされる選択を説明することである」と述べています。
 著者は、「人はなぜ働くのか」という問題を、「どんな条件下で彼らは働くのか」という問題として捉え、この条件として、経済学的なものとモティベーション的なもののうちから、後者に着目し、「仕事を通じて得られる諸結果のモティベーション上の意味を見ていくことによって追求していく」としています。
 本書は、下記の主要な2つの命題を、職業選択、職務満足(仕事役割への満足)、職務業績(職務役割における業績)のそれぞれについて検証するという構成になっています。
・命題1:ある人にとってのある結果の優位性は、他のすべての結果の優位性と、こういった他のすべての結果の獲得に対するその結果の手段性についての彼の認識の積の代数和の単調増加関数である。
・命題2:人がある行為を遂行するよう彼に作用する力は、すべての結果の有意性と、その行為がこういったすべての結果の獲得をもたらすとの彼の期待の強度の積の代数和の単調増加関数である。
 まず、職業選択に関しては、「職業選択は、職業間の選好によって決定されるだけでなく、職業獲得の主観確率および期待コストによっても決定されるとみなすことができる」としています。また、「個人は、自分が保有していると信じている技能の使用機会を与えてくれると信じる職業を選好したり、選択したりすると期待でき」るとしています。
 次に、職務満足に関しては、(1)監督、(2)作業集団、(3)職務内容、(4)賃金、(5)昇進機会、(6)作業時間の効果について考察したうえで、「職務満足をもたらす仕事役割は、高賃金、実質的な昇進機会、配慮的及び参加的監督、同僚との相互作用の機会、多様な職務、および作業方法や作業ペースに対する高度のコントロールを与える仕事役割である」としています。そして、職務満足は、状況変数とパーソナリティ変数の両者が作用する結果であると仮定し、これらを同時に研究することによって、それらの交互作用の複雑な性質を明らかにできる、としています。また、職務満足と離職確率の間に一貫した負の関係があること、職務満足と欠勤の間にも負の関係を見ることができることなどを指摘しています。
 さらに、職務業績に関しては、過去の研究のレビューから、「業績に対するモティベーションの効果は作業者の能力レベルに依存し、能力と業績の関係は、モティベーションに依存する」として、
  業績=f(能力×モティベーション)
という公式で表しています。そして、タスク遂行能力と、タスクを効率的に遂行しようとするモティベーションの度合いという2つの変数の間には交互作用が存在することを指摘しています。
 本書は、モティベーションについて論じる上で、欠かすことができない基本文献ですが、とにかく過去の研究の引用が多いために、実務家向きとはいえないので、気合を入れて読む必要があります。


■ 個人的な視点から

 本書は500以上の膨大な研究調査を引用したものとしても知られていますが、本書で紹介されているうち、話のネタになりそうなものとして、フットボールの賭で莫大な金額を得たロンドンの3人の工場作業者についての記述があります。この金額は、「もしも適切に投資されるならその作業者が余生を快適に暮らせるだけの十分な所得を生むほどの金額」であったにも関わらず、1人は「ルーティンな反復的な仕事」に、もう1人は組立工に、わずかな期間の後に復帰したそうです。
 このことは、仕事へのモティベーションが単に経済的な理由だけではないかとを示している例の一つとして挙げられています。
 働く人の多くが、「宝くじで3億円当たったらこんな仕事辞めて一生働かずに過ごしてやる。」ということを夢想したり冗談で口にしたりしますが、実際にはお金があっても仕事をしない生活にも我々は強いストレスを覚えるようです。
 「ニート」が単なる怠け者のように言われることがありますが、就職の機会を閉ざされ、またはチャンスを逸した彼らが感じているストレスは相当大きいのではないかと思います。私自身も、大学卒業後仕事をせずにブラブラしていたときには、大変な焦りや不安を感じました。
 労働経済学的な観点や格差の観点から論じられることが多いニート問題ですが、現在は仕事をしていない彼らの「仕事へのモティベーション」に着目した議論にも関心があります。


■ どんな人にオススメ?

・モティベーションの研究に関心がある人。


■ 関連しそうな本

 ステファン・P. ロビンス (著), 高木 晴夫, 永井 裕久, 福沢 英弘, 横田 絵理, 渡辺 直登 (翻訳) 『組織行動のマネジメント―入門から実践へ』 2005年02月17日
 金井 寿宏, 高橋 潔 (著) 『組織行動の考え方―ひとを活かし組織力を高める9つのキーコンセプト』 2005年04月27日
 金井 壽宏 『組織を動かす最強のマネジメント心理学―組織と働く個人の「心的エナジー」を生かす法』 2005年06月09日
 M. チクセントミハイ (著), 今村 浩明 (翻訳) 『楽しみの社会学』 2005年02月08日
 エドワード L.デシ (著), 安藤 延男, 石田 梅男 (翻訳) 『内発的動機づけ―実験社会心理学的アプローチ』
 沼上 幹 『組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために』 38388


■ 百夜百マンガ

昴【昴】

 根元敬まで含めて大抵の絵柄は大丈夫なのですが、少女漫画が激しく力強くなったようなこの絵はちょっと苦手でした。
 でも意欲作だと思います。

投稿者 tozaki : 2006年02月17日 07:00

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