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2006年02月23日

説得と影響―交渉のための社会心理学

■ 書籍情報

説得と影響―交渉のための社会心理学   【説得と影響―交渉のための社会心理学】

  榊 博文
  価格: ¥7,140 (税込)
  ブレーン出版(2002/05)

 本書は、社会心理学における「説得」と「影響」に関する実験例や理論を元に、日常の事例をふんだんに紹介することで、実際の生活における「説得」や「交渉」の基礎的・実践的知識を得ることができるものです。
 本書はまず、「態度」に関して、認知的成分、感情的成分、行動的成分のの3つの成分があることを述べ、態度が「判断のための枠組みであり、情報処理を簡素化する、サングラスもしくはフィルターのこと」であるとしています。また、「説得」を、「人もしくは集団が、他者・集団等を対象とし、コミュニケーションを通して、相手の自由意志を尊重しつつ、相手の態度・規範を変えるという意図を実現しようとする試み」とし、「影響」を、「他者・集団等の態度、価値、規範を変えるためのあらゆる試み」と定義しています。
 本書の中心は、説得そのものにありますが、まずは説得によらない影響力として、規範的影響と情報的影響という2つの集団への同調や、ミルグラムの実験例を引いた「代理状態」、ロジャーズの来談者中心療法、オーバーハード・コミュニケーションの例としての豊川信用金庫の取り付け騒ぎ、宗教カルトや悪徳商法が用いる「赤頭巾テクニック」「撒き餌一本釣りテクニック」「撒き餌大量テクニック」などを紹介しています。
 本書の核である、説得のテクニックに関しては、定番の「ハロー効果」などのほか、「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」(FITD、人は一度小さな要請に応じれば、次のより大きな要請に対しても応じやすくなる)、「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」(DITF、人は譲歩した相手に対しては自分も譲歩する)などが紹介されています。これらの比較として、公共の利益を訴えるような「順社会的行動」を要請するときは、自分は社会のために良いことをするタイプの人間であるという自己近くが成り立ちやすいFIDDが有効なのに対し、借金や保険の勧誘のような自己の利益につながる要請のときは、DITFが有効であるとしています。この他、バナナの叩き売りなどの「ザッツ・ノット・オール・テクニック」(相手の拒否の返事を待たずに養成水準を下げるか、相手にプラスになるものをつけていく)、「ロー・ボール・テクニック」(相手にとりやすいボールをまず取らせてしまい、後から条件を下げる)などの販売テクニックや、都合の良い面だけを強調する「一面呈示」と都合の悪い面をも述べる「両面呈示」のそれぞれが有効なケースについて解説されています。さらに、「結論明示と結論保留」、「親近効果と初頭効果」、「ソーシアル・ラベリング・テクニック」、「恐怖説得」などの様々な説得のテクニックが解説されています。
 本書には、著者独自に命名したテクニックとして、「ブーメラン・テクニック」が解説されています。これは、「相手と同じ立場の意見を主張すると相手は当初の立場と逆の方向に意見が変わっていくという現象を利用し、相手の立場と同じ立場を意図的に主張し、相手にブーメラン効果(説得方向とは逆方向への意見変化)を起こさせる説得法」としています。具体例としては、結婚に反対すると思った親が積極的になると娘の腰が引けてしまう例や、強盗に対して「これでやっと天国にいける、さあ、殺せ」と促す例などが紹介されています。
 本書は、説得されやすい人々がいるとして、その「説得されやすさ」を、「特殊的被説得性」と「一般的被説得性」の2つに分類しています。前者は、ある種の説得の仕方/問題/説得者には非常に影響を受けるが、その他の説得の仕方/問題/説得者には影響を受けない、というものであるのに対し、降車は、いかなる説得方法、説得場所、説得内容、説得者であっても影響されやすい、としています。
 本書はこの他、異文化やイノベーションの普及、マスコミ報道の影響による自殺や模倣犯罪などを取り上げています。中でも、模倣犯罪を引き起こす3要素として、(1)実行可能性が高い場合、(2)犯人の匿名性が高い場合、(3)模倣の報酬が高い場合、を挙げています。
 本書は、セールスや交渉を生業とする人はもちろん、社会的な行動の変化を読み解くための情報リテラシーとして、誰もが身につけておいて損はないことが書かれています。


■ 個人的な視点から

 本書に関心を持つ方の中には、セールスや交渉の仕事をしている人が多いのではないかと思われますが、消火器商法のセールスマンが、「書留です。」と言ってドアをあけさせた後、「書留という名のものです。消防署の方から来ました」と言って上がりこむテクニックは、さすがと思いました。
 また、政治家や官僚の接待に料亭が使われるのは、単なる贅沢好みなのではなく「ランチョン・テクニック」というテクニックとして理論的な研究がなされているそうです。


■ どんな人にオススメ?

・自分は人に言いくるめられやすいと思っている人。
・人を言いくるめてやろうと思っている人。


■ 関連しそうな本

 ロバート・B・チャルディーニ (著), 社会行動研究会 『影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか』 2006年02月16日
 マックス H・ベイザーマン (著), マーガレット A・ニール (著), 奥村 哲史 『マネジャーのための交渉の認知心理学―戦略的思考の処方箋』 2005年07月04日
 ウィリアム・L. ユーリ, ステファン・B. ゴールドバーグ, ジーン・M. ブレット (著), 奥村 哲史 (翻訳) 『「話し合い」の技術―交渉と紛争解決のデザイン』 2005年09月15日
 印南 一路 『ビジネス交渉と意思決定―脱"あいまいさ"の戦略思考』 2005年6月28日
 鈴木 有香 (著), 八代 京子(監修) 『交渉とミディエーション―協調的問題解決のためのコミュニケーション』 2005年09月30日
 パトリシア ウォレス (著), 川浦 康至, 貝塚 泉 (翻訳) 『インターネットの心理学』 38640


■ 百夜百マンガ

プラレス3四郎【プラレス3四郎 】

 「天才モデラー」って言ってもこれは作れないだろう、と思うものの、人工知能搭載のプラモデルたちのバトルに熱くなった20年前の作品。
 工業高校や高専のロボット相撲の原点はこういうところにあるのでしょうか。

投稿者 tozaki : 2006年02月23日 07:00

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