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2006年02月24日
ゲームとしての官僚制
■ 書籍情報
曽我 謙悟
価格: ¥7,560 (税込)
東京大学出版会(2005/03)
本書は、官僚制の中で、様々な選択が行われる理由、「なぜある政策が成立し、なぜある政策は成立しないのか」の理由を、官僚制と議会、官僚制の内部、官僚制と市民など、様々なプレイヤー間の関係をゲーム理論によって分析したものです。著者は、「官僚制をプレイヤーのひとつとして含む政策選択ゲームの帰結がいかなるものになるかを、ゲーム理論を用いながらフォーマルに(数理的に)定式化する」と述べています。
著者は、本書で用いる方法として、
(1)合理的選択仮説:人間がある選択を行う理由は、その人間が何らかの目標を持っており、その目標を達成する上でその選択が最適であると考えたからだと想定する仮定。
(2)ゲーム理論:複数のプレイヤーが相互作用を持っている状況をゲームとして捉え、そのゲームの帰結がどのようなものに、なぜなるのかを明らかにする方法。
(3)フォーマルモデル:仮定を明確におき、その仮定だけを使って演繹的に命題を導出すること。
の3つの方法を挙げ、これらを用いる理由として、「なぜある政策が成立したのかという問いを明らかにする上で、合理的選択仮説とゲーム理論が、ともにプロセスではなく結果に注目する視座を持つがゆえに有効であり、この2つの組合せから、一般性の高い命題を論理的に導出する上で、フォーマルなモデルを用いることが有効である」ためであるとしています。
本書は、官僚制と他の政治的プレイヤーの間のゲームを各章において分析しています。
第2章では、官僚制と議会とのゲームに焦点を当て、「プレイヤーが権限や情報以外に他者にたいするどのような働きかけの方法を持つのか」を論じています。議会による官庁のコントロールを、「ゲームの構造として所与として扱ってきたものへの働きかけを通じ、政策帰結を自分に有利なものにしようとする試み」と位置づけ、(a)ゲームの参加者の変更(第三者の導入)、(b)官庁の選択肢の変更(権限委譲の程度の操作)、(c)官庁の帰結関数の変更(賞罰を与える)、(d)官庁の選好の操作、の4つのコントロールの手段を挙げた分析などを行っています。
第3章では、官僚制内部における政策決定を、官僚制内部の組織編制レベルと、上司と部下などより個人レベルの官僚間の関係に着目して分析しています。官僚制内部を対象とした先行研究としては、
(1)社会選択論の応用として、組織構造の違いが帰結としての政策を変えることを明らかにしたハモンドらの一連の研究
(2)プレイヤーの合理的選択の結果として制度を捉える合理的選択新制度論の立場から、行政組織の形態が政治的選択の結果であることを示す議論
(3)プリンシパル・エージェント間で、どのように職員のインセンティブ構造を設計するかという新しい制度経済学の視点を行政組織に援用した議論
の3つが挙げられています。
第4章では、官僚制と市民との間のゲームを、
(1)政策形成ゲームにおける市民の参加:政府内部のプレイヤーによる選択された政策を、自分の望むものに近づけるべく市民が働きかけを行う。
(2)ルールの被規制者としての市民:ルールがいかなる場合に市民の遵守を得られるのか。
(3)政府活動の市民社会に与える効果:市民の権利の確立に不可欠な政府が、市民の権利を侵害しうるというディレンマ。
の3つの問題に関して分析しています。
本書は、数学的なフォーマルモデルを用いることにより、政治学による官僚制研究の成果を経済学などの隣接分野と共有するための橋渡しの役になるものではないかと考えられます。
■ 個人的な視点から
本書の第4章では、官僚と市民との関係の文脈の中で、メリットシステムやプロフェッショナリズムなど公務員制度について、政府におけるコミットメント問題の解決策の一部として紹介されています。これらの問題は、行政学でも大きなテーマとなっていただけに、既存の行政学に慣れ親しんできた実務家にとってはこのあたりが取っ掛かりになるのではないかと思います。
また、同じく第4章では、官僚制のモラルハザードの絡みでNPM(New Public Management)についても言及されていますので、このあたりを取っ掛かりにする方法もありそうです。
■ どんな人にオススメ?
・政治学や行政学をその他の分野の社会学と連結したい人。
■ 関連しそうな本
James Q. Wilson 『Bureaucracy: What Government Agencies Do and Why They Do It』
アビナッシュ・K. ディキシット (著), 北村 行伸 (翻訳) 『経済政策の政治経済学―取引費用政治学アプローチ』 2005年02月06日
Andrei Shleifer, Robert W. Vishny 『The Grabbing Hand: Government Pathologies and Their Cures』
Jean-Jacques Laffont 『Incentives and Political Economy』
梶井 厚志, 松井 彰彦 『ミクロ経済学 戦略的アプローチ』 2005年04月04日
Jean-Jacques Laffont, Jean Tirole 『A Theory of Incentives in Procurement and Regulation』
■ 百夜百マンガ
氣志團の小ネタのネタ元はこんなところにあるのですが、地元千葉をはじめ全国に「メカドック」と名づけた車屋さんがあることを考えると、マンガが人生に与える影響の大きさを考えざるを得ません。
投稿者 tozaki : 2006年02月24日 06:00
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