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2006年03月14日
自民党を壊した男小泉政権1500日の真実
■ 書籍情報
読売新聞政治部
価格: ¥1,575 (税込)
新潮社(2005/06/16)
本書は、「自民党をぶっ壊す」と宣言して自民党総裁になった小泉首相の政権運営を、2004年1月から2005年間で追った読売新聞の連載「政治の現場」を再構成したものです。
本書の構成は、公明党との複雑な協力関係、特に2003年の衆院選での選挙協力の複雑さを取り扱っている第1章「自公融合」や、出身母体や世代間の違いが浮き彫りになった第2章「民主党」の与野党の対比の他、「2004年衆院選」、「新政策決定」、「50年目の自民党」という構成になっています。
第1章では、中選挙区時代、長年、公明党の市川元書記長と熾烈な選挙戦を繰り広げていたため、公明党とは距離を取っていた小泉首相ですが、首相就任後は関係強化を図ったことが述べられています。その心情を語ったのかは明らかではありませんが、自民党神奈川県連学生部のイベントでは、「政治を実際にやってみると、ものごと理論通りに動かないことがよくわかります。政治の世界では、味方はいつも味方かというとそうじゃない。敵はいつも敵かというとそうじゃない。そういうことを飲み込んで、前を向いて、希望と志を持ってがんばっていただきたい。」と挨拶したことが紹介されています。一方で、一時噂になった民主党との「大連立」構想にも言及しています。
また、第2章では、民主党に関して、現党首である前原氏ら松下政経塾出身者が大きな勢力となっていること、橋本政権下の改革を進めた官僚など若い優秀な人材が自民党ではなく民主党に流れ込んでいること、民主党の「左派」イメージを醸し出している、旧社会党系議員や労働組合への依存体質などに言及した上で、民主党の支持率低迷の要因の一つとして、基本政策における党内の隔たりが大きく、曖昧な印象を拭えないことが指摘されています。また、二大政党化によって、「民主党の看板さえあれば、小選挙区選で破れても比例選で復活できる。民主党は居心地がいい」という議員心理さえ生んでいると指摘しています。
この他、2004年の参院選に関しては、マニフェストに対する"第三者"からの目として、「政権公約検証大会」における「構想日本」による進捗度評価が、政党自身による評価とは大きく隔たりがあることが指摘されています。それでもマニフェストが普及することによる進歩はあり、曽根泰教慶大教授は、「『政権公約を軽々しく作り替えるな。反古にした印象を有権者に与えたら大変だ』と政治家が思うようになっただけでも、相当な変化だ」とコメントしています。また、自民党幹部による自民党支持団体の以下の3分類、
(1)医師会のように自分の組織だけで候補者を当選させることができる有力団体
(2)農水、国土交通など所管官庁のOBを支援する業界団体
(3)選挙ごとに派閥や候補者からの要請で支援を決める団体
も興味深いものです。
また、小泉改革における経済財政諮問会議を通じた「内閣主導」の政策決定の仕組みが紹介されています。「四人会」と呼ばれる民間議員の4人(牛尾次朗・ウシオ電機会長、奥田碩・トヨタ自動車会長、本間正明・大阪大大学院教授、吉川洋・東大大学院教授)による「民間議員ペーパー」のスピードの速さや、それに神経をとがらせる各省庁の官僚のスパイさながらの行動、数多くの改革は知事を擁し「闘う知事会」を標榜した知事会との関係などが解説されています。
最後の第5章は、50年間の自民党の歴史を振り返った解説編の趣です。年を取るほど保守的になり自民党を支持するという「年功効果」が失われていること、自民党がPRを専門とする会社「プラップジャパン」とコンサルタント契約を初めて結んだこと(民主党は、米国系PR会社「フライシュマンヒラードジャパン」を早くから起用)、幹事長のタイプに「エンジン型」(行動力で党を引っ張る)と「調整型」(気配りが持ち味)の二つのタイプがあること、などを解説しています。
本書は、小泉首相をタイトルに持ってきていますが、本書の中心は、首相によって「ぶっ壊された」自民党がどのように変貌しているのか、を解説しているものではないかと思います。
■ 個人的な視点から
本書で印象に残っているのは、本書出版後、2005年の衆院選前に小泉首相と袂を分かった亀井静香元政調会長が2004年11月に語った「小泉さんは最後の将軍、徳川慶喜だなあ。(略)残念ながら今の議員は(世襲議員ばかりで)金のサジ、銀のサジで乳母に抱かれて育っているから、まさかと思っているんだよ。選挙で落ちるなんて考えていない。自民党は本当に弱ってきているよ」という談話です。この10ヶ月後には、自民党を相手に(実際にはホリエモンを相手に)選挙を闘うことになろうとは、本人すら予想できなかったのではないかと思います。
ちなみに、「銀のサジ」とは、欧米のことわざで「be born with a silver spoon in one's mouth」、銀のサジをくわえて生まれてくる、すなわち、食うに困らない、恵まれた、という言葉にちなんでいるのですが、「金のサジ」は何でくっついてくるのでしょうか。そんなタイトルの本もあるようですが、どうしても「金の斧、銀の斧」を思い出してしまいます。
■ どんな人にオススメ?
・姿を変える自民党の姿を押さえておきたい人。
■ 関連しそうな本
ドナルド・R. キンダー (著), 加藤 秀治郎, 加藤 祐子 (翻訳) 『世論の政治心理学―政治領域における意見と行動』
佐々木 毅 『政治学講義』 2005年03月11日
丸楠 恭一, 坂田 顕一, 山下 利恵子 『若者たちの"政治革命"―組織からネットワークへ』 2005年05月11日
高瀬 淳一 『情報と政治』 2005年06月23日
横江 公美 『判断力はどうすれば身につくのか―アメリカの有権者教育レポート』 2005年07月13日
菅谷 明子 『メディア・リテラシー―世界の現場から』 2005年09月07日
■ 百夜百マンガ
週末朝のテレビアニメのエンドロールで原作者の名前を見てびっくりしました。
恋愛モノばっかり書いている人というイメージがあったのですが、子供向けの魔法マンガも描ける人だったのですね。
投稿者 tozaki : 2006年03月14日 06:00
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