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2006年03月17日

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント

■ 書籍情報

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント   【イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント】

  ジョー ティッド, キース パビット, ジョン ベサント (著),後藤 晃, 鈴木 潤 (翻訳)
  価格: ¥5,040 (税込)
  NTT出版(2004/10)

 本書は、イノベーション・マネジメントのテキストとして、世界中で使われている標準的なものです。「はじめに」によれば、本書の目的は、「イノベーションを実際的・戦略的なレベルで理解するための知識とマネージするためのスキルを、読者に与えること」とされています。
 本書のタイトルである「イノベーションをマネージする」ことが可能かという問題について、著者は4つのテーマを設定しています。
・戦略的アプローチを採用し、イノベーションとそのマネジメントの問題に取り組む。
・効果的な実行メカニズムと構造を発展させ、利用する。
・イノベーションを支援するような組織内の環境を発展させ、拡大していく。
・効果的な外部とのリンケージを構築し、維持する。
 イノベーションのための<合理主義者的>戦略と<漸進主義者的>戦略とを巡っては、前者の主導者であるアンゾフと後者の代表であるミンツバーグとの間で激しい論争が交わされましたが、本書では、この議論が、
・企業戦略は、企業が分析と経験を基に複雑性や変化により効果的に対処する方法を学習する過程であること。
・成功したマネジメントを完全に再現することは決してできないこと。
という2つの含意を持つことを述べています。
 第4章では、企業が組み込まれている国のイノベーション・システムの役割について言及されています。それは、「企業が対応を迫られる、国内の市場におけるインセンティブとプレッシャー、企業の研究能力及び製造能力、そしてコーポレート・ガバナンスの制度」であることです。これらのうち、コーポレート・ガバナンスの制度に関しては、<アングロサクソン>型と<日本-ラインラント>型の2つがあることが解説されています。
 第5章では、企業戦略が、「現在のそして将来得られるであろう技術的知識そのものの状態」と「それを利用する企業のコンピタンスの限界」という2つの制約要因のために、経路依存(path-dependent)性を有していることが述べられています。著者は、主要な技術軌道について以下の5つに分類しています。
・サプライヤー支配型:技術変化はサプライヤーからもたらされるため、技術以外の競争優位性を補強するために、他所から技術を調達する必要がある。(農業、サービス業、伝統的工芸品)
・規模集約型:生産工程の改良によって技術が蓄積され、漸進的な技術進歩とベスト・プラクティスの浸透が課題である。(バルク素材、耐久消費財、自動車、土木・建築)
・科学依拠型:社内の研究部門から技術蓄積が得られ、基礎研究から生じる進歩をモニターし続けなければならない。(エレクトロニクス、化学工業)
・情報集約型:ソフトウェアと情報システム部門、サプライヤーを技術の源泉とし、新しいシステムの開発・運用と関連サービスの開発が課題である。(金融、小売、出版、旅行業)
・専門化サプライヤー型:特殊な設計・構築・運用によって技術が蓄積され、新しいユーザーニーズの把握と対応が課題である。(機械、精密機械、ソフトウェア)
 第7章では、技術及び市場からマーケティングのプロセスが学ぶものとして、下記のようなマトリクスに分類されています。
       <技術の新規性>
          高い
 ・技術の象限:  ↑・複雑性の象限:
  既存の問題に対す| 技術及び市場の
  る新しい解決策 | 共進化
低い←―――――――+―――――――→高い<市場の新規性>
 ・差別化の象限: |・アーキテクチャ
  品質と特性に  | の象限:
  基づく競争   ↓ 既存技術の新しい組合せ
          低い
 第8章では、新しい技術、製品及び事業の開発における協力の役割を論じる中で、アライアンスの成功に寄与する要素として下記の7点が挙げられています。
・アライアンスが全てのパートナーによって重要であるとみなされていること。
・協力の<チャンピオン>(推進者)が存在すること。
・パートナー間で高い水準の信頼が存在すること。
・・明確なプロジェクトのプランニングと明確なタスクのマイルストーンが存在すること。
・パートナー間、特にマーケティング・スタッフと技術スタッフの間で頻繁な意思疎通があること。
・協力する関係者が期待どおりに貢献すること。
・利益が平等に分配されていると受け止められていること。
 この他本書では、内部プロセスのマネジメントにおけるスキャニング・ルーティン(市場関連シグナルと技術関連シグナル)や、実効性のある変化のマネジメントに関連するルーティンとして、(1)明確なマネジメント戦略をトップ・レベルで確立する、(2)コミュニケーション、(3)早期からの参画、(4)開かれた雰囲気を作り出す、(5)明確なターゲットを設定する、(6)訓練への投資、等が挙げられています。
 本書は、イノベーション・マネジメントの標準的テキストというだけに、理論とケースのバランスもよく、講義で使いやすいつくりになっているのではないかと思います。もちろん、社会人にとっても、電車の中で読むのには骨が折れますが、手軽な実用本を何冊も読むよりも、お奨めの一冊であることは間違いありません。


■ 個人的な視点から

 本書は、同じNTT出版から出ている『組織の経済学』と非常に良く似た作りになっています。ともにMBAの標準的なテキストとして用いられていることを意識したのか、とにかくレイアウトの組み方がそっくりです。そして分厚くて大きいところまで似ています(大きさはやや小さめですが)。この2冊を同じ鞄に入れて担いだら肩が抜けるんじゃないか心配になるほどです。


■ どんな人にオススメ?

・技術経営とかに関心のある人。


■ 関連しそうな本

 クレイトン・クリステンセン (著), 玉田 俊平太, 伊豆原 弓(翻訳) 『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』 2005年10月17日
 クレイトン・クリステンセン, マイケル・レイナー (著), 玉田 俊平太, 櫻井 祐子 (翻訳) 『イノベーションへの解―利益ある成長に向けて』 2005年09月29日
 クレイトン・M・クリステンセン, スコット・D・アンソニー, エリック・A・ロス (著), 宮本 喜一 (翻訳) 『明日は誰のものか イノベーションの最終解』 38653
 ポール・ミルグロム, ジョン・ロバーツ (著), 奥野 正寛, 伊藤 秀史, 今井 晴雄, 八木 甫(翻訳) 『組織の経済学』 2005年01月24日
 青木 昌彦, 安藤 晴彦 (編著) 『モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質』 2005年04月22日
 安藤 晴彦, 元橋 一之 『日本経済 競争力の構想―スピード時代に挑むモジュール化戦略』 2005年05月17日


■ 百夜百マンガ

ブラック・エンジェルズ【ブラック・エンジェルズ 】

 大人になってから見ると、ぶっちゃけ現代版「必殺仕置き人」なんですが、当時は「地獄に落ちろ」の決め台詞が怖かったです。
 銀行強盗に巻き込まれて、犯人の耳を伸ばした安全ピンで「始末」する回を覚えています。

投稿者 tozaki : 2006年03月17日 07:00

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