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2006年03月22日

スモールワールド―ネットワークの構造とダイナミクス

■ 書籍情報

スモールワールド―ネットワークの構造とダイナミクス   【スモールワールド―ネットワークの構造とダイナミクス】

  ダンカン ワッツ (著), Duncan J. Watts (原著), 栗原 聡, 福田 健介, 佐藤 進也 (翻訳)
  価格: ¥3,570 (税込)
  東京電機大学出版局(2006/01)

 本書は、「スモールワールド現象」について、一般向けに『スモールワールド・ネットワーク』の著書を持つ著者が、理論編的な位置づけで書いたものです。
 スモールワールドの紹介で登場するのは、この分野ではお馴染みの「ケビン・ベーコンゲーム」です。これは、ハリウッドの脇役専門の俳優であるケビン・ベーコンを起点に、彼と共演したことのある俳優・女優はベーコン数「1」に、ベーコン数1を持つ俳優・女優と共演したことのある俳優・女優はベーコン数「2」を持つ、というように、ケビン・ベーコンとの共演関係の距離を数値化するものです。すると、ハリウッドでベーコン数4以上の俳優・女優は存在しないことがわかったのです。しかも、この範囲を世界中の俳優・女優に拡大したとしても世界で一番大きいケビンベーコン数はたかだか「8」でしかありませんでした。このような現象を「スモールワールド現象」の典型的な例として紹介しています。
(ベーコン数は、http://www.cs.virginia.edu/oracle/で検索することができます。)
 スモールワールド現象を扱ったものとしては、「6次の隔たり(six degrees of separation)」があり、1967年にミルグラムが行ったカンザスとネブラスカから手紙のバケツリレーでボストン在住の目的の人物に手紙を送ったところ、およそ6人の仲介者を介して手紙が到達したことから、このことを題材にした「Six Degrees Of Separation」という芝居や映画ができ、世間に知られるようになりました。
 本書は、この現象を理論的に解説する構成となっています。
 第2章では、転職の分析から「弱い紐帯の強さ」の重要性を指摘したグラノヴェッターの主張が紹介され、スモールワールド現象における重要性が指摘されています。
 第3章では、スモールワールド現象のグラフによる表現が解説されています。本書の表紙のデザインにもなっている、ランダムグラフの辺のつなぎ替えについても、秩序のある1次元格子から徐々に無秩序の度合いが高まる様子が述べられています。
 第4章では、「局所的に密度の濃い構造」を持つ完全グラフである「穴居人グラフ」や、完全拡張グラフ(「すべての頂点が等しくk個の他の頂点と連結するものの、そのk個の頂点が互いに隣接関係にはない状態を保った」グラフ)である「ムーアグラフ」などが紹介されています。
 また、第5章では、以下の現実の3つのグラフに理論を当てはめています。
・ケビン・ベーコングラフ:協調グラフのハリウッド版であり、そのつながりは二人の俳優が一緒の映画に出たことがあることを意味している。
・西部州送電グラフ:そのなのと折り、ロッキー山脈以西のすべての州に電源を供給している、発電所と高電圧線の地図である。
・C.エレガンスグラフ:有名で数多くの研究がなされている線虫"Caenorhabditis dlegans"の神経結合を表している。
 この他、ケビン・ベーコン数の元祖に当たる「エルデシュ数」についても触れられています。同様に、科学文献の引用関係や、単語の関連性、組織のネットワーク、WWWリンクなどについてもグラフ化の期待がされています。
 この他本書では、セルオートマトンや、進化ゲーム理論、結合振動子の集団同期などをグラフで読み解く試みがなされています。
 本書は、スモールワールド・ネットワークに関心を持った人に理論的な解説を与えるという意味で、日本語で手に入る文献の中ではトップに位置するものではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 ものすごく面白い世界が、本書の中に広がっている、という「勘」は働くのですが、数式が多くて特に前半の理論編のところは全く手に終えないという感じでした。軽い気持ちで手に取ると相当ハードルが高いと思います。
 ただし、後半は現実のグラフへの応用や、セルオートマトン、ゲーム理論など関連分野への応用になりますので、こちらに戻ってやや息を吹き返したという感じです(それでも数式は辛いですが)。
 数式に疲れた人は、5章から読んでみるといいかもしれませんが、こういう面白い話を一般向けにわかりやすく書いてくれる科学読み物のありがたみを感じます。


■ どんな人にオススメ?

・スモールワールドの理論を学びたい人。


■ 関連しそうな本

 ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
 増田 直紀, 今野 紀雄 『複雑ネットワークの科学』 2005年11月18日
 アルバート・ラズロ・バラバシ (著), 青木 薫 (翻訳) 『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』 2005年10月24日
 マーク・ブキャナン (著), 阪本 芳久 (翻訳) 『複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線』 2005年12月21日
 ポール ホフマン (著), 平石 律子 (翻訳) 『放浪の天才数学者エルデシュ』 2005年11月06日
 安田 雪 『実践ネットワーク分析―関係を解く理論と技法』 2005年10月04日


■ 百夜百マンガ

YAIBA【YAIBA 】

 『名探偵コナン』で知られる作者のそれ以前の代表作。アニメ化もされました。
 話が進むにつれて敵がどんどんインフレするパターンになるので後半は苦しかったのではないかと思います。
 その点、いくらでも連載を続けられるパターンを作った「コナン」はさすがです。

投稿者 tozaki : 2006年03月22日 08:00

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