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2006年03月27日

市町村合併

■ 書籍情報

市町村合併   【市町村合併】

  佐々木 信夫
  価格: ¥735 (税込)
  筑摩書房(2002/07)

 本書は、財政的な優遇措置の締め切り(2005年3月、当時)が迫り、「バスに乗り遅れまい」と合併に駆け込もうとする前に、いったん立ち止まって考えてみることを促しているものです。著者は、市町村合併を、「それぞれの市町村の団体としての自治的側面から、そして住民の自治としての自治的側面から見たサイズをどうしていくかという、地域自治のあり方を決める重要な問題」であると、その重要性を説いています。
 著者は市町村合併の歴史を振り返る中で、日本の地方行政の特徴として、
(1)地方自治体が規模を変えながら行政サービスを充実させてきたこと。
(2)国の指導力に自治体が協力する形で地域振興を図ってきたこと。
(3)高度成長期・バブル経済期の潤沢な財政状況を反映して地方単独事業を拡大させてきたこと。
の3点を指摘しています。
 また、市町村合併の背景として、政府は、(1)各自治体の「自治能力」の向上、(2)少子高齢化への対応、(3)新しいまちづくりのチャンス、(4)行革のチャンス、という4点を挙げているのに対し、著者は、より大きな背景として、
(1)行政上つくられた行政圏と実際上生活している生活圏との乖離。
(2)国、地方に共通した深刻な財政危機下にあって、効率的な財政運営の要求。
(3)中央集権から地方分権へのシステム転換に向けたスケールメリットの要求。
の3つの潮流を指摘しています。
 本書が良く引用される点としては、自治体の適正規模に関する試算を行っている点です。著者は、新しい自治体の規模を捉える視点として、(A)都市経営の単位、(B)行政経営の単位、(C)自治政治の単位、の3つが重なり合う部分を自治体の最適規模と考え、まず都市経営の規模として、サービスごとの損益分岐点を、
・消防行政・・・10万人
・ダイオキシンの発生しない清掃工場の維持・・・10~30万人
・介護サービスの供給・・・20万人
・ベッド数500の病院経営・・・20万人
とし、さらに、一人当たりの歳出額は10~30万人が効率的とされることから、理論値としては、15万人~30万人規模が適正ではないかとしています。また、行政経営の規模に関しては、専門性を高めうる職員の規模として、1万人未満の自治体(職員100人余)ではほぼ不可能、企画的な仕事を専門的に行うには500人以上の職員が、各種専門職をそろえるには1500人以上の体制が必要と試算しています。
 また、合併のパターンを、
(1)制度の活用重視・・・政令市や中核市、「市」制度の適用を目指すパターン
(2)県の指針重視・・・政府の市町村合併研究会のガイドラインや県が示した合併パターンに沿った合併を図るパターン
(3)地域づくり重視・・・地域活性化の視点から合併を構想するパターン
の3つに場合分けして論じています。
 この他、市町村合併の方式(新設合併と編入合併)の違いや、合併に対する財政支援が歪んだ合併を促進していしまうことへの懸念を示し、合併の効果(政治機能の一元化、住民の利便性の向上、サービスの高度化・多様化、広域的なまちづくり・イメージアップ、行財政の効率化)と住民の不安(住民の利便性に欠ける、中心地ばかりが栄える、政治や行政が遠くなる、行財政の効率化が進まない)のそれぞれについて丁寧に解説しています。
 本書は、まだ4年前に出版されたものであるにもかかわらず、今までずいぶん長い間このような議論をしてきたようにも感じます。それほど、ここ数年の合併を巡る動きがあわただしかったと言えるのではないでしょうか。


■ 個人的な視点から

 本書の第5章では、自治体と自治体職員に求められる能力として次の3点を挙げています。
(1)経営能力・・・政策過程全体をうまく組織化し、運営し、良好な結果を生み出せる能力
(2)政策能力・・・政策目的の明示、政策手段の構想、政策資源の調達、実施体制の明示、利害関係者への対応
(3)評価能力・・・決定段階から、実施段階、実施結果段階までの政策評価
 また、府県制度改革に関しては、
(1)連邦制への移行
(2)道州制の選択
(3)地方庁
の3つの選択肢を示しています。
 さて、本書でツボにはまったのは、合併によって政治や行政が遠くなる、という声に関して、「不思議なことに普段それほど頻繁に役所に通う用事もないのに、合併の議論をすると必ずこうした議論が持ち出される。」と言う何気ない一言でした。では、役所が便利ならばそれでいいのでしょうか。もちろん、役所が便利な場所にあって、対応も丁寧で笑顔溢れてるのが悪いとは思いませんが、本来目指すべきは、役所に出向いていかなければならないような手続きはできるだけ少ない方がいいこと、役所の存在を意識しなくてもサービスを受けられることではないかと思います。電力会社もNTTも、直接出向かなければならないような用事なんてめったにありませんよね?


■ どんな人にオススメ?

・財政的な理由だけが議論される市町村合併に疑問を感じる人。


■ 関連しそうな本

 吉村 弘 『最適都市規模と市町村合併』
 谷川 健一 『日本の地名』 2005年07月10日
 出口 将人 『組織文化のマネジメント―行為の共有と分化』 2006年01月24日
 神野 直彦 『地域再生の経済学―豊かさを問い直す』
 市町村自治研究会 (編集) 『新旧見開き対照 平成の市町村合併早わかりMAP』


■ 百夜百マンガ

宇宙戦艦ヤマト【宇宙戦艦ヤマト 】

 最近は車検屋さんの看板で目にすることが多くなったヤマトですが、昔は中学校のブラバンの定番曲でもありました。作曲者追悼ということで。

投稿者 tozaki : 2006年03月27日 08:00

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