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2006年03月31日

チャーター・スクール―アメリカ公教育における独立運動

■ 書籍情報

チャーター・スクール―アメリカ公教育における独立運動   【チャーター・スクール―アメリカ公教育における独立運動】

  鵜浦 裕
  価格: ¥3,465 (税込)
  勁草書房(2001/06)

 本書は、「学校選択とまず通学区指定の公立校に行かないこと」を可能にするための手段の一つとして、アメリカの公教育の試みの一つであるチャーター・スクール制度について、サンフランシスコ統合学区の独立校の実例を紹介しているものです。
 アメリカの公教育が機能不全に陥った中で、保守派や財界からは、
(1)州の教育コード、各学区の過剰な規制が現場教員の創意工夫を妨げる。
(2)学区オフィスの官僚主義的管理が教育現場に非効率をもたらす。
(3)教員組合が無能な教員を蔓延らせている。
(4)学区オフィスが公立校を従属させ、公教育を独占している。
という点が槍玉に挙げられてきました。そして、彼らが主張する改善案には、公教育の独占状態を廃止するために学区システムに「競争・選択」の原理を導入し、一種の公教育市場を作り出すという共通点があったことが述べられています。
 本書では、テッド・コルデリーによって体系化されたチャーター・スクールの基本概念が紹介されています。
(1)学校は複数の当事者によって組織、所有、運営される。
(2)組織者はチャーターのために二つ以上の公共機関に申請できる。
(3)学校は法人格をもつ。
(4)学校は公立である。つまり、非宗教的、授業料なし、入学者を選抜しない、厚生・安全にかんする法にしたがう。
(5)学校は生徒の学業成績に責任を負う。その目的を達成できなければ、チャーターを失う。
(6)学校は制度上、運営上の慣習から自由である。
(7)学校は選択される学校である。いかなる生徒も入学を強制されない。
(8)州は学校予算の正当な部分を生徒の学区からチャーター・スクールへ委譲する。
(9)新しい学校の設計に参加する場合、教員は恩給の権利を残したまま本務校から出校許可を受ける。
 本書では、サンフランシスコ統合学区の事例として、
・クリエイティブ。アーツ・チャーター・スクール
・ゲイトウェイ・ハイスクール
・ライフ・ラーニング・アカデミー
・リーダーシップ・ハイスクール
・エジソン・チャーター・アカデミー
の5つのチャーター・スクールと、
・テンダーロイン・コミュニティ・スクール
というNPO(ベイ・エリア・ウィメンズ・アンド・チルドレンズ・センター)が支援する公立校が紹介されています。
 これらの事例の中で、父母が教育を含めて運営するというタイプのチャーター・スクールの特徴が、第一世代の頑張りが父母の世代交代に伴いどこまで続くかという問題を抱えていることが述べられています。
 また、多くのチャーター・スクールが共通して抱える問題として、資金の問題を抱えていることや、報告書の提出など官僚的な作業が多く、NPOや父母にとっての負担となっていることが指摘されています。
 一方で、成績不振の公立小学校を、営利企業が支援するエジソン・プロジェクトに対する教育委員からの反発なども紹介されています。ただし、このプロジェクトに関しては、「公教育の民営化」というよりも「民間支援」という表現の方がふさわしいと述べられています。
 本書は、まだ日本では耳慣れない制度であるチャーター・スクールをしるガイドブックとして手頃なものではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書で印象に残ったのは、「起業家」ならぬ「起校家」という言葉です。閉鎖された独占市場であった公教育の分野に、熱意を持った若い起校家が新しいアイデアを携えて参入してくる、という図式はやはり希望を持たせてくれるものです。


■ どんな人にオススメ?

・新しい公教育に関心がある人。


■ 関連しそうな本

 金子 郁容 (編著), 玉村 雅敏, 久保 裕也, 木幡 敬史(著) 『学校評価―情報共有のデザインとツール』 2005年02月25日
 金子 郁容, 渋谷 恭子, 鈴木 寛 『コミュニティ・スクール構想』
 藤原 和博, 天野 一哉 『民間校長、中学改革に挑む』
 藤原 和博 『公立校の逆襲 いい学校を作る!』 2005年06月17日
 小塩 隆士 『教育を経済学で考える』 2005年02月13日


■ 百夜百マンガ

オバタリアン【オバタリアン 】

 「オバタリアン」とか「オヤジギャル」とかという言葉が流行りましたが、最近はさすがに使う人もいませんね。
 すっかり定着していましたが、「バタリアン」自体はホラー・コメディの名作だということはどれくらい認知されているのでしょうか。

投稿者 tozaki : 2006年03月31日 07:00

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