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2006年03月25日
詭弁論理学
■ 書籍情報
野崎 昭弘
価格: ¥693 (税込)
中央公論新社(1976/01)
本書は、なんとなく言い負かされてしまう「強弁」や「詭弁」のロジックを、会話の事例をふんだんに用いて楽しく読みやすい形で解きほぐしているものです。
著者は、議論の修行(反省と観察)の中で、「議論に強いからといって、頭がよいとは限らない」という真実に気づきます。「昔から『無学者、論に負けず』というように、相手のいうことなどまるでわからない(わかろうとしない?)石頭のほうが、えてして自分のいいたいことを押しとおしてしまったりする」のだそうです。著者はこの例として、古典落語の「粗忽長屋」やフーテンの寅さんと義弟の博の会話を引用しています。
著者は、理屈抜きの「押しの一手」を「強弁」とする一方で、「多少とも論理や常識をふまえて『相手を丸め込む(あるいはごまかす)』」ことを「詭弁」として区別しています。「詭弁」が詐欺・窃盗なら「強弁」は強盗、という喩えはわかりやすいものです。
先の「粗忽長屋」や寅さんのようなパターンは、「小児型強弁」と名づけられています。このタイプの厄介なところは、本人にそのつもりがないという点にあり、その原因として、(A)自信が強すぎる、(B)好き嫌いの感情が強すぎる、(C)他人に対してきわめて無神経である、の3点を挙げています。
また、権力者たちが使う、やや詭弁術に近い強弁術として、「二分法」を取り上げています。これは、「人々や考え方などを、ある原理的な基準で二つに分けてしまう考え方」を指し、本書では、中世ヨーロッパの魔女狩りにおける強弁術と詭弁術を駆使した魔女裁判のプログラムを紹介しながら、現代においても「××主義者」などのレッテルによって相手の発言を封じる二分法が使われていることを指摘しています。
この他の強弁術としては、「確かにそうだがお前だって○○だろう」と重箱の隅をつついて相手の言い分を帳消しにする「相殺法」や、「他の人もやってるのになぜ自分だけ捕まえるのか」という「公平の原則」等を紹介した上で、強弁術の要諦を、
(1)相手のいうことを聞くな。
(2)自分の主張に確信を持て。
(3)逆らうものは悪魔である(レッテルを利用せよ)。
(4)自分のいいたいことを繰り返せ。
(5)おどし、泣き、またはしゃべりまくること。
の5点にまとめています。
本書のタイトルである、詭弁に関しては、強弁と厳密に区別することは難しいとしながらも、二分法に関しては、「有無をいわさず押しつけるのが強弁だとすれば、『何となくその気にさせる』のが詭弁である」としています。また、相殺法に関しては、水俣病の原因物質がはっきりしない時に、日本化学工業協会から「敗戦のときに旧軍隊が水俣湾に捨てた爆薬が原因かもしれない」という珍説が出された話が紹介されています。
詭弁の具体的なロジックとしては、三段論法の落とし穴としての、「否定二前提の虚偽」、「不当肯定の虚偽」、「特殊二前提の虚偽」、「媒概念曖昧の虚偽」、「四個概念の虚偽」などの具体例が示されています。
著者は、詭弁術に押されたり、自らが詭弁を操ったりしないための心構えとして、以下の4つの原則を示しています。
・原則1:無理やり説得しようとするな。
・原則2:時間を惜しむな、打ち切るのを惜しむな。
・原則3:結論の吟味を忘れるな。
・原則4:「わからない」ことを恥じるな。
本書は、「詭弁」という気づかないうちに陥りやすい落とし穴を、気づかせてくれるきっかけとなる一冊ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
自らを「気が弱い」とか「議論が苦手」と思っている人は結構います。ついつい相手に言いくるめられてしまうけれども、後から考えると、どうも腑に落ちない。でも後の祭りで、自分の性格のせいにしてしまうことはないでしょうか。しかし、相手のロジックをよく観察してみると、腑に落ちない理由が納得できるかもしれません。本書は、そんな実例、特に著者自身が言い負かされてしまった実例を後からあれこれ分析しているところに好感を持てます。つまり、論理的に考えられることと、人に言いくるめられないことは必ずしもイコールでないのです。そう思って読んでみると気楽に読めると思います。
■ どんな人にオススメ?
・「自分は議論が苦手だ」と思い込んでいる人。
■ 関連しそうな本
マックス H・ベイザーマン (著), マーガレット A・ニール (著), 奥村 哲史 『マネジャーのための交渉の認知心理学―戦略的思考の処方箋』 2005年07月04日
印南 一路 『ビジネス交渉と意思決定―脱"あいまいさ"の戦略思考』 2005年6月28日
ウィリアム・L. ユーリ, ステファン・B. ゴールドバーグ, ジーン・M. ブレット (著), 奥村 哲史 (翻訳) 『「話し合い」の技術―交渉と紛争解決のデザイン』 38610
鈴木 有香 (著), 八代 京子(監修) 『交渉とミディエーション―協調的問題解決のためのコミュニケーション』 38625
フランク・W・アバグネイル (著), 高橋 則明 (翻訳) 『華麗なる騙しのテクニック 世界No.1の詐欺師が教える』
A・K・デュードニー (著), 田中 利幸 『眠れぬ夜のグーゴル』 2005年12月25日
■ 百夜百音
【春咲小紅】 矢野顕子 オリジナル盤発売: 1981
江口寿史マニアの皆さんは「♪ほ~ら春咲小蟹♪」と思い浮かべるのですが、1981年当時は、「♪ほ~ら春先神戸に♪」の方を思い浮かべる人が多かったのではないかと思います。そうです。春先にポートピアを見に行きましょう。「THE官営空港」を使って。・・・と言っても当時は空港はありませんでしたが。
本当のテーマソングはゴダイゴが歌ってました。
投稿者 tozaki : 2006年03月25日 06:00
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