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2006年03月15日

「談合業務課」 現場から見た官民癒着

■ 書籍情報

「談合業務課」 現場から見た官民癒着   【「談合業務課」 現場から見た官民癒着】

  鬼島 紘一
  価格: ¥1,470 (税込)
  光文社(2005/08/24)

 本書は、「ゼネコンの勝ち組中の勝ち組」と呼ばれている大林組の元社員である著者が、「一度ゼネコン業界に身を置いた者ならば、書いてはならないもの」である談合について、赤裸々に記述したものです。本書以前に著者は、現職社員時代に、国鉄清算事業団を巡る談合の体験を元にしたフィクション『告発』を出版していますが、本書はそのノンフィクション版に当たるものです。建築業界では「談合」のことを「業務」と呼んでいて、これが本書のタイトルの由来となっているようです。
 神田にあった大林組の旧東京本社の8階には、社員から「たこ部屋」と陰口をたたかれる部屋があり、100坪足らずの部屋に100名近い天下りOBや社員がすし詰め状態になっていたことが紹介されています。「そこは建設省、運輸省、道路公団、住宅都市・整備公団、JR東日本、国鉄精算事業団、営団地下鉄、東京都、神奈川県など官庁、自治体、公的企業などから天下ったOBの巣窟で」あり、著者は、この部屋を「OBの墓場だと感じていた」と述べています。そして、企業が官庁OBを採用するのは、「OBに高い給料を払ってもなお十分なおつりが来るから採っているのだ。それは談合で確実に利益を得るためだ」と述べています。
 建築業界は土木業界などと異なり、政界を揺るがしたゼネコン・スキャンダルの後、談合の構造が変わり、「天の声」に象徴される官製談合やOBが仕切る形での談合が影を潜め、業者間でルールを作って落札業者を決める談合本来の姿に戻っている、ということが述べられています。そして、大手ゼネコンには、営業部門の中に「業務」専門部署があり、なかでも他社との連絡調整を行う「業務担当者」が公共工事の発注を取り仕切る裏組織を構成していることが述べられています。
 著者は、国鉄精算事業団の土地を専門に扱う「SJプロジェクトチーム」に配属されます。このチームには、「ミスター事業団」と呼ばれる国鉄OBが迎えられ、そのコネを伝って事業団の担当者に取り入る様子が述べられています。また、予定価格そのものを聞き出すことはできなくても、事業団が不動産鑑定を依頼した不動産鑑定事務所を聞き出すことで予定価格を推測することができることなど、この世界のきわどいやりとりが記述されています。
 平成10年10月13日の朝日新聞の一面に入札情報漏洩のスクープ記事が掲載されたときの対応も興味深いものです。新聞が掲載されるや、朝早くからチーム内の段ボール十数箱に及ぶ内部資料が、こういう事態に備えた重要資料の焼却を専門に行う関連会社の作業員によって、極秘のうちに焼却処分されたことや、手を尽くしてマスコミに圧力をかけ、記事の掲載をストップしたことが述べられています。ファックスで送られてくる没になった各社のゲラを見て、著者は、「日本の言論の自由というものが、これほど容易く蹂躙されるものだということを初めて知った」と語っています。
 しかし、著者は、このスクープの前に、重要資料を自分でコピーして抱え込んでいました。この資料の存在が、後の『告発』や本書の材料になったのです
 この他本書には、旧国鉄本社跡地を巡る外資との攻防や、法務省幹部の子弟を縁故で入社させることでシンパに仕立て上げた搦め手の戦略などが紹介されています。
 著者は、国鉄生産事業団を巡る談合を題材にした『告発』を、もちろん匿名で出版しますが、その内容によって社内では感づかれ、危険人物としてマークされ、「業務担当」を外されます。後に、退職して会社を相手取って訴訟を起こしたことでマスコミの取材を受けることになったと述べられています。
 本書は、内部告発ものの一つではありますが、「会社憎し」という感情は全く全面に現れず、またスキャンダラスに談合の実体を暴くという筆致でもなく、ただ淡々と談合の仕組みやその実際が記述されていることが特徴です。ゼネコンの「業務担当」やゼネコンに天下る官庁OBにとっては、最適な「教科書」になるのではないかと思うほどです(笑)。


■ 個人的な視点から

 本書には、大林組の悪運の強さとして、平成7年の10日間にわたる営業停止処分の様子と、その処分が解かれる様が描かれています。この処分中には営業行為と言えるものが一人でも行われれば建設業の免許が取り消されるという厳しいものであるため、総務部が中心となって、営業停止中の行動についての行動マニュアルが作成され、連日の説明会で、営業停止期間中の電話対応、来客対応、事前の得意先への周知などが徹底されたと述べられています。
 しかし、1月17日に起こった阪神大震災によって、神戸のインフラ工事を多く手がけていた大林組は、建設省の超法規的措置によって営業停止期間を1日残して解除されます。さすがにあからさまに喜ぶことはできなかったものの、社員の顔には思わず笑みが浮かんだ、と様子が述べられています。
 ちなみに、被災地への応援は、関西出身者に限られたそうです。これは、土地勘が重視されたことはもちろん、神戸にはよそ者を好まない土地柄があり、関西に縁もゆかりもないものでは仕事にならない、という理由からだそうです。


■ どんな人にオススメ?

・ゼネコンの「業務担当」の実態を知りたい人。
・ゼネコンに天下る予定の官公庁関係者。


■ 関連しそうな本

 鬼島 紘一 『告発』
 加藤 正夫 『談合しました―談合大国ニッポンの裏側』
 武田 晴人 『談合の経済学―日本的調整システムの歴史と論理』
 桑原 耕司 『公共事業を、内側から変えてみた』 2006年02月22日
 ベンジャミン・フルフォード 『ヤクザ・リセッション さらに失われる10年』 2006年02月18日
 下野新聞「鹿沼事件」取材班 『狙われた自治体 ゴミ行政の闇に消えた命』 2006年02月08日


■ 百夜百マンガ

ど根性ガエル【ど根性ガエル 】

 胃腸薬のCMでは成人したキャラ達が同窓会や結婚式で盛り上がりますが、最近は、「成人したキャラクター設定」云々の注意書きが付くようになりました。
 「あのヒロシが30歳~」とか言ってるんだからわかるでしょうに、と思いながら、こういうことにも文句付けるクレーマーがいることに驚きです。

投稿者 tozaki : 2006年03月15日 06:00

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