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2006年04月18日

「複雑ネットワーク」とは何か―複雑な関係を読み解く新しいアプローチ

■ 書籍情報

「複雑ネットワーク」とは何か―複雑な関係を読み解く新しいアプローチ   【「複雑ネットワーク」とは何か―複雑な関係を読み解く新しいアプローチ】

  増田 直紀, 今野 紀雄
  価格: ¥945 (税込)
  講談社(2006/02)

 本書は、『複雑ネットワークの科学』の著書を持つ著者が、一般読者向けのブルーバックス・シリーズに書いた科学読み物です。
 「複雑ネットワーク」とは、complex networksの訳で、複雑系の研究の系譜に関連していることからこの名が付けられています。ネットワークに関する研究は、古くはオイラーの「ケーニヒスベルクの橋の問題」に代表されるグラフ理論などがありましたが、実社会の大規模なネットワークの研究が可能になるには、20世紀末のコンピュータの高速化を待たなければなりませんでした。そのため、ネットワーク科学のパイオニアは、統計物理や応用数学、インターネット関係の通信分野の研究者たちであることが述べられていますが、現在では、数学・社会学・生物学の研究者や、ビジネス関係、政策関係者からも注目を集めています。
 本書では、ネットワークの距離を判りやすく理解するために、この手の本では定番となっている「ベーコン数」や「エルデシュ数」が紹介されています(掲載されているエルデシュの写真の提供者が秋山仁氏であったことに目が行ってしまいました。)。本書では、この他の応用として、「ベースボールの神託」なども紹介されています。著者は、これらのゲームがウケる理由として、それぞれのネットワークの平均距離が小さいことを挙げています。
 また、スモールワールド・ネットワークの解説の中で、飲み会で行うゲームをグラフで表しているのが斬新でした。次に答える人が決まっている1次元格子のネットワーク形態になっているのが「山手線ゲーム」であるのに対し、「どびん・ちゃびん・はげちゃびんゲーム」では、「どびん」と「ちゃびん」は隣の人に、「はげちゃびん」はランダムに指名することから、ネットワーク的には格子にショートカット(はげちゃびん)を加えたスモールワールド・ネットワークに近いものになっていることが述べられています。また、ショートカットだらけのランダム・グラフになっているのが、「せんだみつおゲーム」で、このゲームでは指された人はランダムに次の人を指名します。
 本書では、この他、長い歴史を持つすごろくのバリエーションなどを紹介し、それらを以下のようにまとめています。
(1)1次元格子、正方格子(平均距離が大きい)
  山手線ゲーム
  多くのすごろく
  人生ゲーム
  多くのボードゲーム
  シミュレーション・ゲーム
(2)スモールワールド・ネットワーク(平均距離が小さく、かつクラスター性もある)
  どびん・ちゃびん・はげちゃびんゲーム
  忍者のいる戦国時代?
  本物の人生
(3)ランダム・グラフ(平均距離は小さいが、クラスター性は壊れている)
  せんだみつおゲーム
  鳥盡初音寿語六(とりつくしはつねすごろく)
 また、バラバシとアルバートが、「現実のネットワークでは頂点の次数のばらつきが意外に大きい」ことに注目し、多くのネットワークの次数分布がベキ則(スケールフリー性)に従っていることを発見したことに関して、個人の財産、地震の規模、月のクレーターの直径、戦争の激しさ(犠牲者数)、都市の大きさ、会社の規模、土地の値段などの例を挙げています。そして、彼らの作った「BAモデル」と呼ばれるネットワークのモデルの特徴として、「成長」と「優先的選択」(先に存在している頂点の中で、次数の大きいものが優先的に新しい枝を受取りやすい)の2点を挙げています。この他、2006年現在、コミュニティの自動同定が研究テーマとして流行していることにも触れられています。
 本書の後半は、応用編として、感染症の感染モデルとして、従来からある「SIRモデル」、「ボンド・パーコレーション」、「サイト・パーコレーション」、「SISモデル」などを紹介した上で、現代の感染症の伝播を説明するモデルとして、スモールワールド・ネットワークが用いられていることが述べられています。
 本書は、2006年現在、複雑ネットワーク理論に関する最も敷居の低い入門書です。まず1冊目にいかがでしょうか。


■ 個人的な視点から

 本書は2006年という時代を反映して、mixi(ミクシィ)などのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が紹介されています。このサービスは元々ネットワーク理論を下敷きにしていて、最近mixiに押されぎみのgreeは「6次の隔たり」などで使われる「次数(degree)」から命名されています。
 また、本書の最終章のビジネスへの応用の部分は、一般書向けに関心を引きやすいテーマではありますが、残念ながらインパクトの面では若干弱いがします。ビジネスマン向けのトピックが充実すると、一時流行ったゲーム理論の一般書のように、ビジネス書としても売れるのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・ネットワーク理論の入門書でも読んでみようかと思った人。


■ 関連しそうな本

 増田 直紀, 今野 紀雄 『複雑ネットワークの科学』 2005年11月18日
 ダンカン ワッツ (著), Duncan J. Watts (原著), 栗原 聡, 福田 健介, 佐藤 進也 (翻訳) 『スモールワールド―ネットワークの構造とダイナミクス』 2006年03月22日
 ダンカン ワッツ (著), 辻 竜平, 友知 政樹 (翻訳) 『スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法』 2005年09月28日
 スティーヴン・ストロガッツ (著), 蔵本由紀, 長尾力 (翻訳) 『SYNC』 2006年04月10日
 アルバート・ラズロ・バラバシ (著), 青木 薫 (翻訳) 『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』 2005年10月24日
 マーク・ブキャナン (著), 阪本 芳久 (翻訳) 『複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線』 2005年12月21日


■ 百夜百マンガ

エスパー魔美【エスパー魔美 】

 F先生には珍しい女の子が主人公の作品です。短編集に収められている「アン子 大いに怒る」を発展させたものと考えられています。

投稿者 tozaki : 2006年04月18日 06:00

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