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2006年04月16日

創造の方法学

■ 書籍情報

創造の方法学   【創造の方法学】

  高根 正昭
  価格: ¥735 (税込)
  講談社(1979/09)

 本書は、まだアメリカの大学院への留学生が珍しかった1963年に、スタンフォード大大学院とカリフォルニア大学で社会学を修めた著者が、その経験を通じて、アメリカの大学教育の根底にある原理を、文明史の流れの中で見出したものです。
 著者は、スタンフォードで経験したアメリカの大学教育の特徴を次の4点にまとめています。
(1)四学期制の厳しい業績主義――四半期のうちに、一つの科目につき週3回の講義を集中的に行い、日本の大学の1年分かそれ以上の内容を消化する。学期ごとに中間試験と期末試験が課せられ、年間の平均が大学でCを、大学院でBを割り込むと放逐される。
(2)読書の組織的な訓練――これはアメリカの大学院に留学した人が揃って口にすることだが、「組織的な読書の訓練が大学教育の重要な柱に」なっている。スタンフォードの大学図書館の指定図書室(Reserve Book Room:講義で課せられる必読文献を、2時間、1日、2日、1週間などの短期間で貸し出す)や書店は、それまで日本の大学の図書館しか見たことのなかった著者に大きなショックを与えている。
(3)物を書く訓練の重視――学部時代から科目ごとに「ターム・ペーパー」と呼ばれる小論文が課せられる。大学院になると、専門誌に掲載できる25ページ程度の論文が要求され、できの良いものは専門誌への発表が期待されている。
(4)方法論の重視――社会科学においても統計学など、科学の方法の学習が重要視される。
 著者は、アメリカの学会において、研究者として一人前になるためには、ひとかけらでも何か新しい知識を既存の知識の体系に付け加えなくてはならず、アメリカでの大学教育がそのような知的生産のための基礎的な訓練であることに気づきます。そして、アメリカの大学と日本の大学はその本質が大きく異なり、日本の学者には、個人個人が固有の意見を創造するという基本的姿勢を持っていないことに驚愕します。日本にはマックス・ウェーバーやエミール・デュルケムなど一人一人の社会学者の「専門家」と称する「研究者」が、彼らの研究対象がどんな文章を書き、いつどこに旅行したということを諳んじられるくらいに精通していても、例えばウェーバー中の理論と方法を駆使して、自分なりの新しい分析を行い既存の知識の体系に新しい要素を付け加えるものでないことに日米の「学者」の本質的な違いを指摘しています。
 そして、これは単に学者や大学の問題ではなく、社会一般の態度であることが、アメリカの幼稚園ではクレヨンや粘土の使い方を教えても、作るものの手本は示さず、他人の模倣ではなく自己自身の創造をさせることを例に述べています。
 本書ではこの他、当時の社会調査ではデータ・カードとカード分類器を使った気の遠くなるような解析作業を行った経験によって、サーヴェイ・リサーチの論理を学ぶことができたことや、著者が行った日本の政治エリートの研究(エリートの循環)などのエピソードが収められています。全体として昔の新書にありがちな散漫な印象を与えるものですが、昔の研究者が受けたカルチャーショックが、今も基本的には状況が変わっていないことは問題ではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 著者が日本に帰って大学で教鞭をとるようになって最初に困ったことは、社会科学の基本的な方法論を教えるための適切な教科書がなかったことだそうです。著者が帰国したのは1970年代前半ですから、もう30年以上も昔の話ですが、現在でもその状況はほとんど変わっていないのではないかと思います。
 本書のタイトルである「創造の方法学」はそういった部分を意図しているものではないかと思いますが、このような思い出話半分のエッセイではなく、しっかりとしたテキストをぜひ書いていただいていれば今頃の日本の大学もう少しましなものになっていたのではないかと思います。


■ どんな人にオススメ?

・1960年代のアメリカの大学院の様子を知りたい人。


■ 関連しそうな本

 杉村 太郎, 細田 健一, 丸田 昭輝 『ハーバード・ケネディスクールでは、何をどう教えているか』 2005年06月22日
 上山 信一, 梅村 雅司 『行政人材革命―"プロ"を育てる研修・大学院の戦略』 2005年04月16日
 梅棹 忠夫 (著) 『知的生産の技術』 2005年05月05日
 中野 不二男 『メモの技術―パソコンで「知的生産」』
 板坂 元 『考える技術・書く技術』
 渡部 昇一 『知的生活の方法』 2005年10月09日


■ 百夜百音

The Camera Loves Me【The Camera Loves Me】 Would-Be-Goods オリジナル盤発売: 1988

 透明感のあるハーモニーを聞かせてくれる姉妹デュオ。もう20年近く前のアルバムになってしまうなんて驚きです。
 イルカのCDの方は既に20年以上経過しています。ネオアコと言えばよしもとよしともと言われていた時代もありました。


『You Can't Hide Your Love Forever』You Can't Hide Your Love Forever

投稿者 tozaki : 2006年04月16日 06:00

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