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2006年04月13日
ドキュメント平成革新官僚―「公僕」たちの構造改革
■ 書籍情報
宮崎 哲弥, 小野 展克
価格: ¥798 (税込)
中央公論新社(2004/02)
本書は、「1940年体制」を引きずった現代の日本社会の規制者であった霞が関の中で、内部変革を進め、新しい「公」の確立を目指して行動している30代、40代の官僚たちの姿を追ったものです。著者は、本書が中央官庁の官僚に舞台を絞った理由として、(1)彼らの仕事が「公的」な性格を帯びている、(2)日本の組織制度の「文化」の中心的な存在である、(3)単純な官僚叩きに一定の反論を加える、の3点を挙げています。
本書のタイトルである「革新官僚」とは、もともと、戦時中に「経済新体制確立要綱」を作成し、「日本的」とされる経済、産業体制を形成した、当時の彼ら自身の言葉を使えば、「クリエーティヴ・エンジニア」としての官僚たちを指します。戦後の日本は、彼らの末裔である官僚たちを中心に、行政指導を通じた制限的な競争環境と護送船団方式によって、安定的な発展を果たしてきたのですが、高度成長の終焉、バブル経済の崩壊、市場化の進展の中で、「1940年体制」を支えてきた官僚たち自身にも、構造改革の時代に合わせた変革が迫られていることが述べられています。
本書の各章は、各省庁が直面した課題に対し、官僚たちがどのような具体的な行動をとったのか、その中に現代の「クリエーティブ・エンジニア」たる平成の革新官僚の姿はないかを探し求めています。
金融庁のある官僚は、竹中大臣に対して面従腹背の態度をとり続ける事務方の中にあって、「日本を覆う構造的な歪みを是正しなければならないのは明らか」と、エリート官僚としての出世を放棄する覚悟で竹中再生プランの作成に全面的に打ち込みます。
また、国土交通省の中堅・若手官僚たちは、行革断行評議会が具体化を進める道路公団の民営化案を前にして、「より積極的な改革案を国民に示」さなければ、「私たちは存在理由を失い、国民から見放されてしまう」という強い危機感を抱き、多忙な予算編成作業の間を縫って、独自の改革案の作成に取り組みます。著者はこの姿を、昭和16年に「総力戦研究所」の若きベスト&ブライテストたちが懸命の机上演習によって開戦阻止の「模擬内閣」を演じた姿にだぶらせます。この「総力戦研究所」の綿密なルポルタージュを書き上げた猪瀬直樹氏が道路公団の民営化推進委員会に名を連ね、そして若手官僚たち必死に作成した改革案が日の目を見ることがなかったことは皮肉なものです。
この他にも、BSE問題やコメ改革の問題に直面した農林水産省や、「ノーパンしゃぶしゃぶ」で国民の不審を一心に買って大蔵省が解体されたことで誕生した財務省、難民先送り問題に代表される弛緩した雰囲気が漂う外務省、「ゆとり教育」の改革に迫られる文部科学省、ロースクールや裁判員制度などの司法制度改革に取り組む法務省が紹介されています。
■ 個人的な視点から
本書は、元々は『中央公論』に連載された「出でよ平成革新官僚」という連載記事をベースにしたもので、「革新官僚」という言葉のインパクト勝負なところがあり、戦時中の革新官僚とはあまり関係ないところは気にかかりますが、各省庁が直面する危機に対して、中堅・若手官僚たちがポジティブな改革に取り組んでいる姿を追っている点は評価できると思います。
ある財務省の若手官僚は、「三等国の一流官庁」のエリートにはなりたくない、一等国の日本を縁の下で支える公僕としての自負を持ちたい、という言葉を漏らします。このような気持ちを持った「革新官僚」たちが少しでもいることが、官僚に対する不審渦巻く現代において多少なりとも救いになるのではないでしょうか。
なお、2002年から2003年にかけて取材された本書ではあくまで「中堅・若手」という匿名の集団として官僚たちが扱われています。「出る杭は打たれる」という霞が関の雰囲気の中で名前が出ることに対する配慮だったのかもしれませんが、近年では、「スーパー公務員塾(竹中塾)」を運営する経済産業省の鈴木英敬氏や、「新しい霞ヶ関を作る若手の会」の朝比奈氏・小紫氏など、匿名性の壁を突き抜けて「出過ぎた杭」を目指す動きが盛んになっています。「悪しき前例主義」や「横並び意識」が蔓延する役所の世界ですが、彼らが匿名性のタブーを一度突破することによって、新たな「革新官僚」たちの姿が発信されることは望ましいことだと考えます。
■ どんな人にオススメ?
・「出すぎた杭」の官僚の姿を知りたい人。
■ 関連しそうな本
新しい霞ヶ関を創る若手の会 (編集) 『霞ヶ関構造改革・プロジェクトK』 2005年12月22日
テリー伊藤 『お笑いニッポン公務員―アホ役人「殲滅計画」』 2006年03月16日
行財政構造改革フォーラム (著), 上山 信一, 樫谷 隆夫, 若松 謙維 『新・行財政構造改革工程表―「霞が関」の三位一体改革』
西村 健 『霞が関残酷物語―さまよえる官僚たち』
稲継 裕昭 『日本の官僚人事システム』 2005年02月10日
『』
■ 百夜百マンガ
「自由」をテーマにした作品ですが、機械の身体の痛々しさと年代不明なヨーロッパ的な舞台が妙にマッチしています。
投稿者 tozaki : 2006年04月13日 06:00
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