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2006年04月23日
表現の自由vs知的財産権―著作権が自由を殺す?
■ 書籍情報
ケンブリュー マクロード (著), 田畑 暁生 (翻訳)
価格: ¥2,940 (税込)
青土社(2005/07)
本書は、「知的財産権法を兵器のように振り回す」巨大企業によって、万人に開かれた豊かな文化から、社会が得ることができる利益が失われている事実を、「ヒップホップ音楽とデジタル・サンプリング、植物の種子と人間の遺伝子の特許化、フォークとブルース音楽、教育と本の出版、ラウシェンバーグとウォーホルによるコラージュ、映画制作・電子投票・インターネット」等のさまざまなトピックを通じて解説しているものです。その代表的なものは、著作権保護期間を延長する「ミッキーマウス保護法」と揶揄されたソニー・ボノ法です。
本書では、有名な「ハッピー・バースデイ・トゥー・ユー」等の著作権を持つASCAPが、ガールスカウトなどの団体に、「我が祖国」「ゴッド・ブレス・アメリカ」「ハッピー・バースデイ・トゥー・ユー」をライセンス契約梨にキャンプで歌ってはならない、という通告を出したことが紹介されています。
また、マーチン・ルーサー・キング・ジュニアの有名な「私には夢がある」演説の一部を演説コミュニケーションの教科書『演説コミュニケーションの原則の諸類型』に引用しようとしたところ、キング牧師の著作権を厳格に管理しているキング財団から、出版費用全体を上回る利用料を請求されたために、この教科書から削除せざるを得なくなったことが述べられています。
過剰な知的財産権保護が社会に与えるインパクトは、出版や音楽のみならず、科学分野にも及び、ガンに関するタンパク質の特許を持った企業とその利用料が障壁となり、ガンに関する研究が進まなくなっている事実が指摘されています。ミシガン大学の国立衛生研究所のレベッカ・アイゼンバーグ法学教授は、この種の特許が「アンチコモンズの悲劇」をもたらす、という主張をしています。
そして、皮肉なことに、知的財産法に厳格な米国の国家である「星条旗よ永遠なれ」こそが、18世紀のイギリス流行歌「天国のアナクレオンへ」の無断借用であることが、「われわれは『海賊の国』なのだ。」という著者の痛烈な言葉とともに指摘されています。
第2章では、2台のターンテーブルとミキサーを使った初期のディスコDJたちによって、「ブレイクビート」のテクニックが生まれたことが紹介されています。また、過去のクラシックの作曲家たちが、民衆音楽や過去の曲から「盗む」ことによって素晴らしい作品を作り上げてきたことを、ストラヴィンスキーの「良い作曲家は真似をするのではなく、盗む」という言葉とともに紹介し、ブラームスやマーラー、ブルース・スプリングルティーン、ボブ・ディランまでの「盗みの歴史」を紹介しています。
そして、デジタル・サンプリングの技術が一般的になった1990年前後を境に、サンプリングを用いた音楽の創造は一変します。1991年にギルバート・オサリバンが「アローン・アゲイン(ナチュラリー)」を20秒使われたとして起こした裁判では、判事はサンプリングという新しい現象を知らなかったことが述べられています。また、「本を書く場合、別の本からの引用は全く許される」一方で、「歌詞集から2行も引用すると、それが全体からしたら0.001%にすぎなくても、出版社はトラブルに巻き込まれる可能性がある」ことが紹介されています。そして、既存の曲からサンプルを使用することが非常に高くつくことから、現在ヒップホップのプロデューサーたちが、既存の曲に似せてスタジオミュージシャンに演奏させるという、一見非合理的に見える方法をとっていることが紹介されています。このような事態を招いている、現在のシステムの問題点として、「ローリング・ストーンズのレコードからスネアドラムの一拍をとって、、残りの99%を創作したのなら、ローリング・ストーンズに100%分のロイヤリティを支払うのはおかしいのに、弁護士たちは悪名高くそれが合法的だと主張している。」というコールド・カットのマット・ブラックの言葉が紹介されています。
本書は、この他、著者の人生を運命付けた「メディアでのおふざけ」と「著作権法」という2つの要素を教えてくれた「ネガティブランド」とU2のレコード会社との争いが紹介されています。中でも、U2のギタリスト「ジ・エッジ」への電話インタビューにネガティブランドのメンバーがもぐりこみ、エッジ本人から、「サンプルが別の作品の一部になることは、問題ありません。」「U2のドラムがダンスレコードに使われたと聞きましたよ。私はそのことをなんとも思っていません。」という発言を引き出すくだりが最高におもしろいです。
また、カナダの高校生マイク・ローが自分の名前を使って取得した「mikerowsoft.com」のドメインネームを、マイクロソフト社が取り上げようとして硬軟織り交ぜた交渉を進める様や、海賊版のデモテープによってブレイクしたメタリカが、初期のファンへの恩返しとして、ライブを録音するための場所まで用意していることなどのエピソードが紹介されています。
本書は、民主主義を根底から支える「表現の自由(R)」が、企業によって囲い込まれることに危機感を覚える人にとっては、レッシグ教授の一連の著作を合わせて必読書ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
本書でも取り上げられている「マッシュアップ」という、複数の曲を1つの曲に組み合わせてしまう手法が、最近は表の世界でも注目されているようです。先日ラジオで、クリームの「Sunshine Of Your Love」がダンスミュージックになっている曲を聴きました。
昔は、サンプルを別の曲に合わせるのは大変で、曲のテンポを変えるとピッチも変わってしまうために、ビートを合わせた後で、計算してピッチシフトをかける必要があったのですが、最近はテンポ合わせもピッチ合わせもソフト上で自動的にできるようになっています。テンポを変えてもピッチの変わらないDJ用のCDプレイヤー「CD-J」が発売された時は驚いたものですが・・・。
■ どんな人にオススメ?
・過剰な知的財産権保護に不安を感じている人。
■ 関連しそうな本
ローレンス レッシグ 『クリエイティブ・コモンズ―デジタル時代の知的財産権』
ローレンス レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳), 柏木 亮二 (翻訳) 『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』 2005年2月1日
ローレンス・レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳) 『コモンズ』
リチャード・M・ストールマン (著), 長尾 高弘 (翻訳) 『フリーソフトウェアと自由な社会 ―Richard M. Stallmanエッセイ集』 2006年02月04日
エリック・スティーブン レイモンド (著), 山形 浩生 (翻訳) 『伽藍とバザール―オープンソース・ソフトLinuxマニフェスト』 2005年10月22日
ペッカ ヒマネン, リーナス トーバルズ, マニュエル カステル (著), 安原 和見, 山形 浩生 (翻訳) 『リナックスの革命 ― ハッカー倫理とネット社会の精神』 38654
■ 百夜百音
【Clubland, Vol. 8 [Compilation]】 Various Artists オリジナル盤発売: 0
高校のときにビースティー・ボーイズが流行って、文化祭で友達のバンドが「Fight for Your Ritgt」なんかもカバーしてました。
ギターソロは同時期に盛り上がったスレイヤーの人が弾いてます。
投稿者 tozaki : 2006年04月23日 06:00
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