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2006年05月03日
暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで
■ 書籍情報
サイモン シン (著), 青木 薫 (翻訳)
価格: ¥2,730 (税込)
新潮社(2001/07/31)
本書は、一般向けのサイエンス読み物の第一人者である著者による
(1)暗号の発展史を概観する
(2)現代において、暗号は過去のどの時代にも増して重要になっていることを示す
という2つの目的を持ったものです。
前半は、暗号に代表される「秘密の書記法」の進化の歴史です。古代には、伝令の頭を剃り、メッセージの刺青を入れ、髪が伸びてから出発させる方法や、ゆで卵の殻に明礬と酢を1:20の割合で混ぜ合わせたインクでゆで卵の殻にメッセージを書くと卵の中身にメッセージが記されている、などの「ステガノグラフィー」が用いられてきましたが、伝令が取調べを受けるとすぐに解読されてしまうので、並行して「クリプトグラフィー(暗号)」が発達してきたことが述べられています。
古代の暗号の例としては、紀元前5世紀のスパルタで用いられていたスキュタレー(木製の巻き軸にひも状の皮を巻きつけ、文字を書くと紐には出鱈目の文字が並ぶが、同じ直径のスキュタレーに巻くとメッセージが現れる)や、キーフレーズを用いた換字式アルゴリズムの暗号が紹介されています。
そして、暗号の歴史は、暗号作成者と暗号解読者との戦いの歴史でもあります。換字式アルゴリズムは、アラビアの暗号解読者たちによって発明された頻度分析という手法によって、解読されてしまいます。本書では、この頻度分析による解読を実際に読者とともに解読する例が用意されています。
暗号を巡るドラマとしては、悲劇のスコットランド女王メアリーが紹介されています。このエピソードから著者は「弱い暗号を使うぐらいなら、最初から暗号など使わないほうがましだ」という教訓を述べています。
第2章では、解読不能の暗号といわれたヴィジュネル暗号と、その謎に挑んだ19世紀のコンピュータの祖先の産みの親であるチャールズ・バベッジのエピソードが紹介されています。バベッジは現代のコンピュータの基本形を作った人物として知られていますが、さまざまな分野に首を突っ込んだ天才であり、暗号解読にも優れた業績を残しましたが、暗号という機密性を重視する特殊な性質のため、その業績は50年もの間公にはされませんでした。
暗号の歴史上、大きなトピックとなったのは、暗号機の発明です。特に無線通信の発明によって、幾ら傍受されても安全なメッセージ伝達手段が必要とされたからです。そして、その中でももっとも知られているのが、ドイツが使用していた「エニグマ」です。そして、このエニグマの解読こそが、第二次世界大戦の勝敗のカギを握る情報線となりました。イギリスにはこの暗号記を解読するため、ブレッチレー・パークに大量の頭脳が集められました。現代のコンピュータ理論に大きな貢献をしたアラン・チューリングもその一人です。連合軍の勝利に大きな貢献をした彼らは、情報機関の常として、その職務内容を口にすることは許されなかったので、戦後、戦場から帰ってきた兵士たちから向けられる白眼視に耐えなければなりませんでした。同様の話は、アメリカ軍が使用した最強の通信手段である「ナヴァホ・コードトーカー」(ネイティブアメリカンの中でも特に難解な言葉を話す部族出身者から構成された通信兵たち)にも付きまとい、彼らは、1968年までその存在を機密扱いとされましたが、1982年には合衆国政府によって「ナヴァホ・コードトーカーの日」が制定され、その栄誉が讃えられました。
本書の中盤は、失われた古代の言葉を分析が中心となっていて、ヒエログリフの解読を巡る解読者たちの争いや、長年の謎とされた「線文字B」の解読などが収められています。
また、本書の後半には第二次世界大戦以降の暗号の歴史、特に公開鍵暗号の誕生を巡るエピソードや、現在世界中で用いられている「PGP(プリティー・グッド・プライバシー)」というフリーの暗号化技術を巡る、政府当局と「サイファー・パンク」たちの戦いが綴られています。
本書は、暗号や言語学に関心を持つ人はもちろん、言論の自由や監視社会に対する反感を持つ人にとって、ぜひ一読して欲しい内容となっています。
■ 個人的な視点から
第二次大戦中に日本軍を苦しめた「ナヴァホ・コードトーカー」たちの活躍を目にすると、日本軍も対抗して部外者には解読できない「ズーズー弁コードトーカー」を組織したらいいんじゃないか、と思った人は私だけではないでしょう。
実際には、暗号としての強度はまるでないんでしょうが、日本軍の通信兵たちが、すべてズーズー弁を習得して用いていたら、と想像するとおかしいです。
■ どんな人にオススメ?
・なぞめいた暗号の世界に関心のある方。
■ 関連しそうな本
チャールズ サイフェ (著), 林 大 (翻訳) 『異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念』 2005年11月20日
ポール ホフマン (著), 平石 律子 (翻訳) 『放浪の天才数学者エルデシュ』 2005年11月06日
グレゴリー・J・チャイティン (著), 黒川 利明 (翻訳) 『セクシーな数学-ゲーデルから芸術・科学まで-』 2005年11月03日
ウィリアム パウンドストーン (著), 松浦 俊輔 (翻訳) 『ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?』 2005年11月11日
■ 百夜百音
【イル・エ・エル~彼らと彼女】 クレモンティーヌ オリジナル盤発売: 1994
10年ほど前に渋谷系残党のオサレ系ミュージシャンに圧倒的に支持されたクレモンティーヌ。
「男と女」はJ-waveでかかりまくってました。
投稿者 tozaki : 2006年05月03日 06:00
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