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2006年05月10日

フロー体験 喜びの現象学

■ 書籍情報

フロー体験 喜びの現象学   【フロー体験 喜びの現象学】

  M. チクセントミハイ (著), 今村 浩明 (翻訳)
  価格: ¥2,548 (税込)
  世界思想社(1996/08)

 本書は、「困難ではあるが価値のある何かを達成しようとする自発的努力の過程で、身体と精神を限界にまで働かせきっている時に生じる」最良の瞬間に、本人が感じている「フロー」と呼ばれる感覚について解説したものです。
 フローとは、「一つの活動に深く没入しているので他の何ものも問題とならなくなる状態、その経験それ自体が非常に楽しいので、純粋にそれをするということのために多くの時間や労力を費やすような状態」と定義されています。
 著者は、ロッククライマーやダンサー、外科医、チェスプレイヤーなどさまざまな人々からの調査面接をもとにフロー体験を抽出しています。多くの人々が、自分が最高の状態の時にどのように感じたかを説明する時に、「流れているような感じだった」「私は流れに運ばれたのです」と述べています。そして、「その状態を達成している人々は、より多くの心理的エネルギーを彼ら自身が選んだ追求目標にうまく投射してきたので、より強い自信のある自己を発達させているのである」と述べられています。
 フロー体験には、大きな身体的努力や高度に訓練された知的活動を必要とし、熟練した能力が発揮されなくては生じない、とされています。「フローの継続中は意識は滑らかに働き、一つの行為は次の行為へと滞りなく続いて」いき、フローの状態にあるときは、自分の行為の必要性についての疑問や批判的な評価を省みる必要はなくなると述べられています。
 この他本書では、ゲームやスポーツ、仕事におけるフロー体験の位置づけについて述べられています。作曲・ロッククライミング・ダンス・航海・チェスなどのフロー活動が、楽しい体験を生むことをその基本的機能としていることや、仕事が常に不愉快なものであるばかりでなく、楽しいものであり得ること、経営者や管理職は事務職や工場労働者よりもかなり多く仕事中にフロー状態にあったこと等が述べられています。
 また、「自己目的的な自己」(潜在的な脅威を楽しい挑戦へと変換し、したがって内的調和を維持する自己)を発達させるルールとして、
(1)目標の設定
(2)活動への没入
(3)現在起こっていることへの注意集中
(4)直接的な体験を楽しむことを身につける
の4点を挙げています。
 本書は、同じ著者による『楽しみの社会学』と合わせて、フロー体験について関心がある人にとっては必読書となるものではないかと思います。


■ 個人的な視点から

 本書の中でフロー体験の一つの例として、日本の暴走族の例が挙げられています。
 「俺たちみんなの調子が合った時、何かが分かるんだ。(中略)……みんなの心が一つになる時なんだ。そんな時はとても楽しい。……俺たちみんなが一つになった時、何かが分かるんだ。……突然『ああ俺たちは一つなんだ』って。そして『思いっ切り飛ばせたら本当の走りになる』って思う。……俺たちが一体になっていることが分かった時は最高だぜ。(後略)」
 暴走族に関する心理学的研究としては、佐藤郁哉『暴走族のエスノグラフィー』がありますが、本書の参考文献リストには、佐藤氏の論文(英語)が確かに挙がっています。
 それにしても、この文章は翻訳者が頑張ったのか、元の日本語の文献があったのか、気になるところです。


■ どんな人にオススメ?

・何かに夢中になってしまう人。


■ 関連しそうな本

 M. チクセントミハイ (著), 今村 浩明 (翻訳) 『楽しみの社会学』 2005年02月08日
 佐藤 郁哉 『暴走族のエスノグラフィー―モードの叛乱と文化の呪縛』
 田尾 雅夫 『組織の心理学』
 二村 敏子 (編集) 『現代ミクロ組織論―その発展と課題』 2005年03月26日
 ステファン・P. ロビンス (著), 高木 晴夫, 永井 裕久, 福沢 英弘, 横田 絵理, 渡辺 直登 (翻訳) 『組織行動のマネジメント―入門から実践へ』 2005年02月17日
 金井 寿宏, 高橋 潔 (著) 『組織行動の考え方―ひとを活かし組織力を高める9つのキーコンセプト』 2005年04月27日


■ 百夜百マンガ

100億の男【100億の男 】

 TVドラマにもなった割には印象の薄い作品なのは、なんとなく先が読める展開のしょぼさにあるような気がします。
 同じ作者が『アローエンブレム グランプリの鷹』も描いてた人だというのは意外なところです。

投稿者 tozaki : 2006年05月10日 06:00

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