« 「人殺し」の心理学 | メイン | デスマーチよ!さようなら! »
2006年05月15日
問題解決ファシリテーター―「ファシリテーション能力」養成講座
■ 書籍情報
【問題解決ファシリテーター―「ファシリテーション能力」養成講座】
堀 公俊
価格: ¥2310 (税込)
東洋経済新報社(2003/02)
本書は、「組織のパワーを引き出し、優れた問題解決に導くためにはどうすればよいか」という問題意識の元で、ファシリテーションという概念を紹介しているものです。
著者は、問題解決の方法として、
(1)ソフト・アプローチ:コンテクストの共有の元、妥協と調整によって解決を図る。
(2)ハード・アプローチ:論理(事実や原則)に基づいた議論により、合意点を見出す。
(3)ファシリテーション:意見ではなくプロセスをコントロールすることで、組織の意思決定の質を上げる。
の3つのアプローチを挙げ、「論理と感情の両面に働きかけ、自律的な問題解決を促していく」点にファシリテーションのメリットがあると述べています。
本書では、このファシリテーションの考え方に基づくリーダーシップのあり方を、ジャック・ウェルチやカルロス・ゴーンの発言を引用しながら、解説しています。
また、ファシリテーターに求められるスキルとしては、
・(初期)プロセス・デザイン:チーム編成や手順など活動プロセスの設計
・(中期)プロセス・マネジメント:チーム全体の発想を広げる手助け
・(終盤)コンフリクト・マネジメント:全員が満足できる創造的な解決を目指した合意造りの支援
の3つのスキルが述べられています。
このうち、プロセス・デザインに必要な思考としては、以下の2つが述べられています。
・システム思考:
→フレームづくりの5つの要素(目的、アウトプット・イメージ、活動プロセスとスケジュール、役割分担、行動規範)
→2サイクル型の問題解決プロセス(発散(創造)思考と収束(統合)思考)
・MECE(ミッシー)思考:
→Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive、モレなくダブりなく
→多面的思考と構造化思考
→ロジック・ツリー
また、プロセス・マネジメントに関しては、「議論を理解する」ことを目的に、ミーティングにおけるファシリテーターの役割を、メッセージの意味を理解するための「ロジカル・コミュニケーション」と、議論の中に位置づけるための「議論の構造化」の推進にあるとしています。このうち、ロジカル・コミュニケーションについては、
(1)事実(起点)を共有化させる。
(2)根拠(経路)の乱れを正す。
(3)意見(終点)を明確にさせる。
(4)論理で伝えきれない知識(暗黙知)を伝え合う。
(5)復唱を使って主張の中身を確認する。
という基本プロセスが示されています。さらに、議論の構造化については、
(1)意見をハッキリさせる・・・・・・議論の先鋭化
(2)意見の固まりをつくる・・・・・・議論の組織化
(3)意見のつながりをつくる・・・・・・議論の体系化
(4)議論すべき論点を並べる・・・・・・論点の設定
というステップに沿って解説がなされています。この中で紹介されている、
・ポイントを絞り込むための質問法
(a)切断による絞込み
(b)対比による絞込み
の2つの質問方法による絞り込み方は参考になりそうです。
最後のコンフリクト・マネジメントに関しては、
(1)コンテクスト(文脈)の共有による相互理解
(2)ウィン・ウィン・アプローチによる強調的な問題解決
(3)コンフリクト解消
という3つのステップが示されています。
コンテクストの共有については、「コンテクストの三つのP」として示されている、(1)目的(Purpose)、(2)視点(Perspective)、(3)立場(Position)の3つの視点の持ち方が参考になります。また、コンフリクト解消の基本アプローチとして、
(1)創造による解決(Win-Win approach)
(2)交換による解決(Win-Win approach)
(3)分配による解決(Win-Lose approach)
の3つの解決方法が示されています。
本書の後半の応用編・実践編では、具体的なツールとしてのワークショップやファシリテーション・グラフィックの技術や、ケーススタディが示されています。
本書は、「議論を活発にして出た意見をまとめる人」と単純に思われやすいファシリテーターの役割の本質を、ロジカル・シンキングと交渉理論の視点から解説した良書です。ロジカル・シンキングの力を組織で発揮したい人には絶好の一冊ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
「ファシリテーション」という言葉は、「協働」や「まちづくり」、「ワークショップ」などの言葉と結びつきやすく、これまで理念的な部分、精神論的な部分で語られやすい傾向がありました。
本書は、ファシリテーションという技術が持つ本質的な力である、ロジックの構築と交渉によるコンフリクト解決に重点を置いていて、「ファシリテーション」という言葉になんとなく偽善的な抵抗感を持っていた人にも、納得してもらえる切れ味の鋭さを持っていると思います。
■ どんな人にオススメ?
・ビジネスツールとしてのファシリテーションに関心がある人。
■ 関連しそうな本
堀 公俊 『ファシリテーション入門』 2006年04月24日
中野 民夫 『ファシリテーション革命』 2006年04月28日
古川 久敬 『チームマネジメント』
柴田 昌治 『なぜ会社は変われないのか―危機突破の風土改革ドラマ』
■ 百夜百マンガ
サザンのヒット曲と楠田枝里子をくっつけた安易な設定にもかかわらず、人気になってしまい長きに渡って連載されていました。
途中から読むと何だか分からなかったのが残念です。
投稿者 tozaki : 2006年05月15日 07:00
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.pm-forum.org/MT3/mt-tb.cgi/974
【いとしのエリー 】