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2006年06月10日
著作権とは何か―文化と創造のゆくえ
■ 書籍情報
福井 健策
価格: ¥714 (税込)
集英社(2005/05)
本書は、「芸術文化活動が活発に行われるための土壌を作る」ことを最大の存在理由としている著作権を、「その目的に沿うように使ったり、設計すること」が私たちに課せられた課題として、具体例を挙げながら解説したものです。
著者は、著作権を、
(1)それがあなたの権利なら、一定の利用をコントロールできる。
(2)著作権は、著作物について、それを創作した人に与えられる。
という2つのルールによって解説しています。
本書の第1章では、著作権に関していちばんの論点となる、「創作性」(オリジナリティ)の問題を解説しています。この創作性に関してよく引き合いに出される「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という『雪国』の冒頭の一文も紹介されています。また、「単なる事実やデータは著作物ではない」ことを表した言葉として、「額の汗は報われない」と言う言葉が紹介されています。さらに、アイデアは自由に利用できるという原則と、そこか派生する問題として「パスティーシュ(作風の模倣)」は許されることも述べられています。
第2章では、よく用いられる「○Cマーク」という著作権表示が、ベルヌ条約加盟国では必要ないこと、著作権にうるさい国として有名なアメリカが、1989年までベルヌ条約に加盟していなかったこと等が解説されています。また、著作人格権の解説には必ず登場する「剣と寒紅」事件についても紹介されています。
ここまでは一般的な著作権のテキストとあまり変わりませんが、本書が俄然面白くなるのは第3章以降、様々な事例を挙げてあいまいな著作権の世界をクルーズする部分です。特に盗作かどうかを争われた裁判の解説は秀逸です。注目を集めた「どこまでも行こう」と「記念樹」の裁判に関して、真似をするつもりではなく、記憶の奥底に眠っていたメロディが作曲中に浮かび上がってきて、自分の独創だと思って発表してしまった時、それは著作権侵害なのか、という論点が紹介されています(実際にはこの裁判はJASRACという巨大な利権をめぐる権力争いだったとも言われていますが)。
また、『ウェスト・サイド物語』と『ロミオとジュリエット』の類似点の分析や、シェイクスピアの作品にも古くから代々の底本があったこと、生前のシェイクスピアが、同時代の作家から盗作を批判されていたことに関して「われわれの羽毛で着飾った、成り上がりのカラス」と攻撃されたというエピソード、『ライオン・キング』と『ジャングル大帝』の類似点の分析など、どの話も興味深く読むことができます。
第4章では、テクノロジーの発達と著作権を守りたい業界との攻防が時代を追って紹介されています。古くは、ビデオデッキの販売をめぐる「ベータマックス事件」から、MDに課せられている「私的録音録画補償金制度」、ナップスター事件などが紹介されたほか、最近のウィニー開発者の逮捕なども紹介されています(さすがに、自分の身内がウィニーを使って捜査資料を流出させてしまったことに逆切れして逮捕したとは書かれていませんが)。
また、パロディをめぐる、マッド・アマノの裁判や、『バターはどこへ溶けた?』事件の痛烈な皮肉、『脱・ゴーマニズム宣言』事件、「ミッキーマウス保護法」や日本の敗戦に伴う「戦時加算」(敗戦の影は20世紀末のDVDにまで届いているのです)等のエピソードも読み物として興味深く読むことができます。
本書は、著作権に関する入門書として、また、著作権に関する四方山話としても楽しく読むことができる一冊です。
■ 個人的な視点から
本署のp.201では、「戦うサイバー法学者」ことローレンス・レッシグ教授を「ハワード・レッシグ」と書き間違えています。では、「ハワード」は一体どこから来たのでしょうか?
サイバーつながりでは、『思考のための道具』などで知られるハワード・ラインゴールドが浮かびます。また、米大統領選に出馬し、ブログを使った選挙運動で知られたハワード・ディーン候補も浮かんできます。
実際のところ、本当は誰なのかは分かりませんが・・・。
■ どんな人にオススメ?
・盗作事件に関心を持った人。
■ 関連しそうな本
豊田 きいち 『著作権と編集者・出版者』 2006年5月4日
ケンブリュー マクロード (著), 田畑 暁生 (翻訳) 『表現の自由vs知的財産権―著作権が自由を殺す?』 2006年04月23日
ローレンス レッシグ 『クリエイティブ・コモンズ―デジタル時代の知的財産権』
ローレンス・レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳) 『コモンズ』
リチャード・M・ストールマン (著), 長尾 高弘 (翻訳) 『フリーソフトウェアと自由な社会 ―Richard M. Stallmanエッセイ集』 2006年02月04日
ハワード ラインゴールド (著), 青木 真美, 栗田 昭平 (翻訳) 『思考のための道具―異端の天才たちはコンピュータに何を求めたか?』 2006年01月07日
■ 百夜百音
【Human's Lib】 Howard Jones オリジナル盤発売: 1983
「ハワード」・ジョーンズかもしれない・・・ということはないでしょうが、この人もずいぶん長い間現役で頑張ってますね。
投稿者 tozaki : 2006年06月10日 08:00
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