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2006年06月13日
日本のお金持ち研究
■ 書籍情報
橘木 俊詔, 森 剛志
価格: ¥1890 (税込)
日本経済新聞社(2005/03)
本書は、日本の「お金持ちたち」の実態を幅広い角度から、系統的・学問的にアプローチしたものです。
著者は、私たちがお金持ちに持っているイメージとして、
(1)何か、とんでもなく新しい発明でもしないと、お金持ちなどにはなれない。
(2)親から、とてつもない財産を相続でもしなければ、お金持ちなどにはなれない。
(3)何か素晴らしい才能に恵まれていなければ、お金持ちなどにはなれない。
(4)法律ぎりぎりの危ないことでもしないと、お金持ちなどにはなれない。
を挙げ、これを「特異な人しかお金持ちになれない仮説」と名づけています。しかし、これまで日本のお金持ち像は系統だって明らかになってきませんでした。そこで、著者は、全国6000人の全国の億万長者にアンケートを行います。著者は、この試みに対して知人から、(1)金持ち多忙説、(2)金持ち猜疑心説、(3)金持ち危険説の3つの理由から警告し、回答率は5%を切るのではないかと心配されますが、結果的には有効回答数465通、約8%の回答がありました。
この集計結果から、日本のお金持ちは、
(1)東京在住の企業家
(2)地方在住の開業医
の2つのタイプに分けられることが明らかになっています。
また、これらのアンケートおよび追加的なインタビューからは、「成功のモデルは変わった」ということが明らかになりました。企業であれば、「名門大学に行き→大企業で出世する」というサラリーマン社長のモデルからベンチャー企業を設立する起業家モデルへ、医師であれば、国立の大病院で主流の内科や外科の教授になることから、傍流の眼科、美容外科を若いうちに開業独立する医師が経済的成功のモデルになっています。
さらに本書は、日本の経営者の特性の変化について、明治期に遡って分析しています。明治期には、財閥系企業において、「身分は高く、しかも教育水準が高くて、海外経験のあるエリートが、若い時期から企業経営にあたった」ことが述べられています。戦後は、経済的に豊かではない家庭の子供にも、能力と意欲のある人には大学進学の道が開かれたため、本書では、経営者層と学歴との関係が論じられています。しかし、経営者自身の自己診断によれば、経営者になるために大切なものは、
(1)幅広い分野を経験し、全社的な見方ができるようになった。
(2)部下から厚い信頼を得、かつ支持を得ていた。
(3)自分の専門分野で大きな業績をあげた。
の3点に加え、
(4)よい上司に恵まれた。
(5)運がよかった。
の計5点が挙げられています。
日本の「上流階級」について論じた第4章では、「社会を実際に動かしている人は必ずしも経済的に非常に裕福な人ばかりではない」点に着目し、過去には、「日本の社会・経済を動かす層としては、政治家や官僚の方が大きな影響力を持っていた」が彼らの所得は一部を除いてそれほど高くない点に言及したうえで、規制改革の時代になり、「政官財の三者による支配構造の中から官が脱落する可能性」について述べています。
お金持ちの日常生活というと、「豪華客船に乗り世界一周の旅行や、週末にはクルーザーを走らせたり、自家用ヘリコプターで空中散策を楽しんでいる」というイメージがあるかもしれませんが、余暇の過ごし方の実態としては、旅行などのレジャー派と仕事人間に大別され加齢につれて仕事人間が増加する傾向があることが明らかになっています。
また、高額納税者が経済的成功をおさめるのに重要であると回答した要因は、
(1)肉体的・精神的に健康である
(2)自分の職業を愛している
(3)正直な人柄
の3点であるのに対し、重要でないと回答したものは、
(1)一流大学に行く
(2)器用さ・要領のよさ
(3)知能指数が高い・優秀な頭脳を持つ
であることが述べられています。
本書は、テレビなどで面白おかしく取り上げられることの多い日本のお金持ちの実態をできるだけ正しく伝えようという稀な一冊ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
日本のお金持ちに対するイメージは、主にマスコミを通じて形成されているのではないかと思われます。古くは、「宮尾すすむと日本の社長」を筆頭に、高田純次の「お嬢様を探せ」など、お金持ちを紹介し、その感覚のズレを笑いのネタにした番組はたくさんあります。その中では数多くの名物社長をテレビに登場させ、「素人いじり」という芸風も確立されています。古くは城南電器の「宮路社長」から、APAホテルの社長、最近ではホリエモンもお茶の間の人気者になっていました。
本書は、こういった誇張された「お金持ち」のイメージの影に隠された以外に地味な生活を垣間見せてくれる貴重な機会ではないでしょうか。
■ どんな人にオススメ?
・本物の「日本の社長」の実態を知りたい人。
・「お金持ちになれる本」がいかに胡散臭いかを確認したい人。
■ 関連しそうな本
橘木 俊詔, 斎藤 貴男, 苅谷 剛彦, 佐藤 俊樹 『封印される不平等』 2006年2月10日
橘木 俊詔, 斎藤 貴男, 苅谷 剛彦, 佐藤 俊樹 『封印される不平等』 2006年02月10日
山田 昌弘 『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』 2006年01月11日
樋口 美雄, 財務省財務総合政策研究所 『日本の所得格差と社会階層』 2006年02月01日
苅谷 剛彦 『階層化日本と教育危機―不平等再生産から意欲格差社会(インセンティブ・ディバイド)へ』 2006年02月14日
佐藤 俊樹 『不平等社会日本―さよなら総中流』 2005年03月22日
■ 百夜百マンガ
お金持ちを徹底的に揶揄したマンガですが、子供たちにはそんなことより「ともだちんこ」の方が受けたみたいです。
投稿者 tozaki : 2006年06月13日 07:00
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