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2006年06月22日
ブログ 世界を変える個人メディア
■ 書籍情報
ダン・ギルモア (著), 平 和博 (翻訳)
価格: ¥2205 (税込)
朝日新聞社(2005/08/05)
本書は、ブログに代表されるテクノロジーの進化が引き起こしているジャーナリズムとの衝突が、
(1)ジャーナリスト
(2)取材対象者
(3)読者
の3つのグループに大規模な変化を起こしていることを解説し、「新たなメディア」と名づけたジャーナリズムの進化を解き明かしていこうとしているものです。特に3番目の読者に関しては、「元読者」と呼ばれる人たちが、これらのツールを手にすることで、「尽きることのないアイディアを、ジャーナリズムへと昇華させていった経緯」が強調されています。
著者はパーソナル・ジャーナリズムの歴史を、合衆国建国以前のパンフレット発行人であるトーマス・ペインや、当時匿名の作者によって作成された「フェデラリスト。ペーパーズ」まで遡ります。その後、20世紀の企業ジャーナリズム時代を経て、「脅迫状メディア」(素人がDTPで作成した文書に様々なフォントが盛り込まれていて脅迫状のスタイルに瓜二つであることから)の登場、そしてウェブ時代の到来(WWWとモザイクの誕生)によって、「コミュニケーションの変容の過程が、完了した」、すなわち、「自分たちが望むとおりの形態をとることができるメディア」を私たちが手にすることができたと述べています。そして、最後の仕上げとして、
・テクノロジー:普通の人たちがジャーナリズムという創発的な「会話」に参加するためのツール。
・文化:数百万の人々がこのツールを手にしたときに、見たこともないようなコミュニティを作り出す。
の2つの道具立てをはめ込む必要があると語っています。
として、「われわれのメディアを実現するテクノロジー」として、著者は、メーリングリスト、フォーラム、ブログ、ウィキ、携帯メール、携帯カメラ、インターネット放送、ピア・ツー・ピアなどのツールを紹介したうえで、RSSによる革命に言及しています。本書(邦訳)のタイトルにもなっているブログに関しては、ジェイ・ローゼンが「極めて民主的な形式のジャーナリズム」と述べている理由から、
(1)ブログは贈与経済に由来する。
(2)ブログはアマチュアの領域である。
(3)ブログはジャーナリズムの世界の参入障壁を引き下げた。
の3点を紹介しています。また、RSSについては、クリス・ピリロの言葉として、「RSSによって、インターネットは突然、あるべき姿で動くようになった。すべてを自分で検索しまくる代わりに、インターネットが望みどおりに向こうからやってくるんだ」という言葉を引用しています。
また著者は、現代のコミュニケーション・ツールの誕生によって、「かつてはニュースをコントロールしようとしていた人々や組織」について、詳細に調べ上げることができるようになったこと、さらに、「誰かがいったん見つけ出した情報は、グローバルに広めることができてしまう」ことの重要性を指摘し、取材対象者は、この新たな現実を受け入れるべきであると述べています。
この他本書では、インターネットを使ったオープンソース政治の流れや、ジャーナリストたちの変容、コミュニティー・メディアの存在が(1)自分たちもやればできることを示し(2)巨大メディアとは逆に情報の蓄積を進めていること、等について言及しています。また、ネットのネガティブな側面である、荒らしや情報誘導に関しても、スラッシュドットのモデレーティング等を紹介した上で、「インターネットっていうのは、事実関係の自己修復機能があるだけじゃなくて、道徳的な自己修復もできるんだな」というデビッド・ワインバーガーの言葉を引用しています。また、終盤の何章かでは、ネットを巡る司法の動き、特に著作権を巡る動きを紹介し、ローレンス・レッシグ教授の主張を紹介するほか、本書の(原著)がクリエイティブ・コモンズのライセンスで出版され、著作権保護期間を明示的に14年に設定したこと、ウェブ上でも配信していることなどが述べられています。
本書は、ネットとジャーナリズムのあり方を語るという意味では、やや散漫なところもありますが、読み物としては魅力ある一冊ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
本書の日本語版序文には、著者が数年前に日本を訪れ、「2ちゃんねる」管理人の西村博之(ひろゆき)氏にあったことが述べられています。本書が日本で出版されたのは2005年で、その数年前というと、2001年頃の話でしょうか。
Wikipediaによると、2ちゃんねるがスタートしたのは1999年5月30日、その1年後にはネオ麦茶による西鉄バスジャック事件が起き、世間に大きく知られるようになっていますので、ちょうど2ちゃんねるが急成長している時期に会ったのかも知れません。
本書の中でもWikipediaの創設者であるジミ・ウェールズが、都市計画や犯罪学の分野で話題になっている「割れた窓」シンドロームの理論を、ネット上に適用しているということが紹介されていますが、2ちゃんねるが「板」によって書き込みの傾向が全く異なること、「良スレ」と呼ばれるスレッドでは、議論の質を保持したい参加者によって乱暴者のふるまいがチェックされ、すぐに軌道修正がなされることなど、本書に関連させると面白いものができそうです。
■ どんな人にオススメ?
・ネットとジャーナリズムのあり方を手探りしている人。
■ 関連しそうな本
横江 公美 『判断力はどうすれば身につくのか―アメリカの有権者教育レポート』 2005年7月13日
高瀬 淳一 『情報と政治』 2005年06月23日
菅谷 明子 『メディア・リテラシー―世界の現場から』 2005年09月07日
ドナルド・R. キンダー (著), 加藤 秀治郎, 加藤 祐子 (翻訳) 『世論の政治心理学―政治領域における意見と行動』 2006年06月19日
ローレンス レッシグ (著), 山形 浩生 (翻訳), 柏木 亮二 (翻訳) 『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』 2005年2月1日
ローレンス レッシグ 『クリエイティブ・コモンズ―デジタル時代の知的財産権』
■ 百夜百マンガ
「ヤンキー+野球」という無理のある組み合わせも、当時すでに下火であった野球マンガを盛り上げるために考え出されたのでしょうか。
今となっては、どちらも敬遠されてしまう組合せです。
投稿者 tozaki : 2006年06月22日 06:00
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