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2006年06月24日

イヴの七人の娘たち

■ 書籍情報

イヴの七人の娘たち   【イヴの七人の娘たち】

  ブライアン サイクス (著), 大野 晶子 (翻訳)
  価格: ¥1,680 (税込)
  ソニーマガジンズ(2001/11)

 本書は、現代人のDNAを分析することで、その中に込められた祖先から直接届いたメッセージを読み取り、私たちの祖先がどこから来たのか、という過去の謎を解き明かしているものです。本書のタイトルは、現代に暮らす6億5千万人のヨーロッパ人の母系祖先が、たった7人の女性につながっている、という分析結果に基づいています。
 著者が目をつけたのは、母方からしか受け継がれないミトコンドリアDNAの特異な性質です。この遺伝子を調べることによって、「ふたりの人間のミトコンドリアDNAが非常に似通っている場合、この遺伝子にかんする限り、それが非常に異なる人間と比べて彼らはずっと近しい関係にあること」がわかり、「ミトコンドリアDNAが大きく異なる人たちは、さらに遠い過去に共通祖先がいたこと」がわかります。さらに著者は、「突然変異のプロセスを利用することにより、ミトコンドリアDNAが時間とともに変化する速度を計算すること」ができることに着目し、進化の時間の尺度が分かることも明らかにしています。
 本書の主たる構成は、前半部分には、このミトコンドリアDNAの特異性に着目した著者が、この分析手法を用いて、それまでの人類の進化の定説を塗り替えていくこと、及びそれまで定説を唱えていた数多くの学会の権威者(その中には進化ゲーム理論を打ち立てたことで知られる大御所のジョン・メイナード・スミスも含まれます)との熾烈な論争が収められています。また、後半部分には、ヨーロッパ人の祖先である「7人のイヴ」がどのような生活を送っていたかを、当時の時代背景を交えたフィクションで紹介しています。
 著者はまず、ポリネシア人の起源をめぐる「アメリカ起源説」(コン・ティキ号の冒険で知られています)と「アジア起源説」との論争をミトコンドリアDNA配列によって明らかにしています。その後、分析のフィールドをさらに熾烈な論戦が交わされているヨーロッパ人の起源に移していきます。それまでは、ネアンデルタール人に取って代わったクロマニョン人や旧石器時代の狩猟採集民の末裔たちが、1万年ほど前に近東から移住してきた大量の農民たちの侵略によって飲み込まれてしまったとする「移住説」が定説でした。これは、遺伝学のみならず、考古学や言語学までが支持するものでしたが、著者が調べた数多くのヨーロッパ人のミトコンドリアDNAには、1万年をはるかに越えた過去の狩猟採集生活を送っていた祖先からの声高な「われわれはまだここにいるぞ」というメッセージが込められていました。しかし、著者は、「主流の説に反対すると、とんでもない波風が立つことになる」と述べているように、進化生物学者のいちばんの大御所であるジョン・メイナード・スミスから反論を受けるなど、数々の論戦を潜り抜け、ついに、数年来の攻防戦において批判の最先鋒であった旧敵から、著者の主張を裏打ちする研究成果が発表され、長い戦いにけりをつけます。このスリリングな論戦こそが、進化生物学の専門家ではない一般読者の知的好奇心をいちばん刺激する点ではないかと思います。
 本書の後半の「7人のイヴ」編は、遠い祖先に思いを巡らすには面白いものですが、基本的にフィクションであり、それほど知的刺激を受けるものではありませんでした。ただし、前半の途中で頭がこんがらがってしまった人は、いったんこちらから読んでもいいかもしれません。


■ 個人的な視点から

 本書の最後に、著者は第3の名前として、ミトコンドリアDNAと密接に一致する「母名」を受け継いでいってはどうか、ということを提唱しています。著者はその理由として、子供の母親が誰だかわからないという事態がめったに起きないことや、記録されたものだけで母系図を再構築することが父系図よりはるかに難しいことを挙げています。
 または、ミトコンドリアDNAの判別が自動化・低価格化して希望者は簡単に調べられるようにするというのも面白いかもしれませんね。一方で、鎌形赤血球形質とマラリア耐性のように遺伝病の結婚前診断に用いられるようになると問題があるかもしれません。


■ どんな人にオススメ?

・自分の祖先の暮らしに思いを馳せたい人。


■ 関連しそうな本

 ブライアン サイクス (著), 大野 晶子 (翻訳) 『アダムの呪い』
 斎藤 成也 『DNAから見た日本人』
 スティーヴ ジョーンズ (著), 岸本 紀子, 福岡 伸一 (翻訳) 『Yの真実-危うい男たちの進化論』
 道方 しのぶ 『日本人のルーツ探索マップ』
 三井 誠 『人類進化の700万年―書き換えられる「ヒトの起源」』
 クリス ストリンガー, ロビン マッキー (著), 河合 信和 (翻訳) 『出アフリカ記 人類の起源』


■ 百夜百音

時をかける少女【時をかける少女】 原田知世 オリジナル盤発売: 2002

 『セーラー服と機関銃』や『スケバン刑事』がドラマでリメイクされるということで話題になっていますが、筒井康隆好き∩エヴァ好き∩原田知世好きには見逃せないのがアニメでリメイクされる『時をかける少女』です。
 
・「筒井康隆、アニメ『時をかける少女』を語る」
http://plusd.itmedia.co.jp/games/articles/0606/20/news060.html
 
と言うことでで原田知世ですが、某ハリウッド女優がやかんを持って駆け抜ける「お湯をかける少女」というCMもありました。


『時をかける少女』時をかける少女

投稿者 tozaki : 2006年06月24日 20:00

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