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2006年07月12日
行政・非営利組織のバランス・スコアカード―卓越した組織へのロードマップ
■ 書籍情報
【行政・非営利組織のバランス・スコアカード―卓越した組織へのロードマップ】
ポール・R. ニーヴン
価格: ¥3990 (税込)
生産性出版(2006/04)
本書は、キャプランとノートンによって1990年に紹介されて以来、世界中の多くの企業に採用されている業績評価システムである「バランス・スコアカード」を、行政・非営利組織にとっても先の見えない「変化の森」のなかをガイドしてくれる標識として活用するためのガイドブックです。
バランス・スコアカードは、当該組織の「戦略から注意深く導いた定量的な指標のセットである」と定義され、過去の正確性や完全無欠性をあらわす財務指標への過度の依存から脱却し、顧客、内部プロセス、従業員の学習と成長、そして財務という相互に連携されつつも独立した4つの評価領域をもつことが大きな特徴とされています。また、バランス・スコアカードの「バランス」とは、
・財務指標と非財務指標
・組織の内部要素と外部要素
・結果指標と先行指標
の3つ目意味でのバランスを指しています。
著者は、バランス・スコアカードが大きな関心を集めている理由を、
(1)多発する企業の会計スキャンダルによって、あらゆる組織に対するアカウンタビリティと情報公開の徹底が求められている。
(2)成功を測定する唯一の尺度として長年信頼されてきた財務指標の限界。
(3)大部分の組織にとって、戦略の実行はきわめて困難なことだという現実。
の3点を挙げています。
著者は、非営利機関がこれまで用いてきた業績評価指標として、
・財務的説明責任
・プログラムの生産物あるいはアウトプット
・サービス提供における品質標準の重視
・関係者関連指標
・カギとなる業績評価指標(KPI: Key Performance Indicator)
・クライアントの満足度
等を挙げつつも、大半の非営利組織では、「業績の評価は本気で取り組む領域ではない、あるいは、正直に言えば、現実の結果を十分に表現したものではないといった認識が定着している」と指摘しています。その上で、公共・非営利セクターのバランス・スコアカードの特徴として、
(1)ミッションがバランス・スコアカードのトップにくる。
(2)戦略がバランス・スコアカードの中心に残る。
(3)顧客の視点が高い位置に引き上げられる。
等の点を挙げています。
また、バランス・スコアカードを「どこから構築するか」については、「トップから始めて、上位レベルのバランス・スコアカードを全組織に適用していくアプローチ」を、
(1)目標と評価指標を全職員に周知させることができること、それにより組織の重要成功要因を気づかせることができる。
(2)すべてのグループが目標と評価指標に注意を向けることで、部門間の協調が促進される。
(3)カスケードへの努力が大いに助けられ、自分たちの日々の行動が長期目標にどのように貢献するかを全職員が示す好機となる。
等の理由から望ましいとしています。
著者は、ミッション・ステートメントの重要性を、「組織の根本的な目的、そのレゾンデートル――つまり「存在理由」を明らかにするもの」とするとともに、ミッション・ステートメントを実効的かつ永続的にするための特質として、
・簡潔にして明解に
・簡潔すぎてもいけない
・変化を呼び込む
・本質的に長期的であること
・理解と伝達が容易であること
の5点を挙げ、これを構築するために、
(1)私たちは何者か。
(2)私たちの存在は、どのような社会及び公共の基本的ニーズまたは課題を満たすためか。
(3)これらのニーズや課題を、どのように認識し、先取りし、対応するか。
(4)主要なステークホルダーに、どのように応えるべきか。
(5)私たちの指導原理と組織文化はどのようなものか。
(6)私たちの独自性、特異性は何か。
の6つの質問を挙げています。
著者は、あらゆるバランス・スコアカードの中核である「戦略」について、「組織がその運営環境を認識し、そのミッションを追求しようとするなかで採択する、大づかみな優先事項を表したもの」と定義し、戦略的計画立案手法として、
(1)開始
(2)ステークホルダー分析の実施
(3)SWOT(強み、弱み、機会、脅威)分析
(4)戦略的問題の割り出し
(5)戦略の開発
の5段階のモデルを示しています。
バランス・スコアカードの設計に不可欠な業績評価指標に関しては、「戦略のストーリーを明確に表す少数の決定的な指標の絞込み」の基準として、
・戦略とリンクしている
・理解しやすい
・因果連鎖におけるリンク
・頻繁に更新される
・アクセス性
・平均に対して慎重
・「日付」がらみの指標を控える
・数量的
・崩壊
等の点を挙げています。
この他本書では、組織全体のゴールと自らの寄与を測定するために必要なバランス・スコアカードのカスケードやバランス・スコアカードと予算プロセスのリンク、ソフトウェアを使った自動化システムのメリットとデメリット等の紹介の他、バランス・スコアカード成功の最高の例として広く認められているシャーロット市のスタッフへのインタビューなどが収められています。
本書は、バランス・スコアカード自体に関心を持っている人はもちろん、現在の戦略や業績評価システムの問題点に直面している人にとっても、多くのヒントを与えてくれる一冊ではないかと思います。
■ 個人的な視点から
本書で紹介されている新しい言葉の一つに、「SPOTS」というものがあります。これは、「strategic plan on the shelf」(お蔵入りの戦略計画)の略なのですが、「戦略」や「計画」などのコンサルタントがらみの言葉には、このようなシニカルな見方が付きまとうようです。
著者は、願わくば「BSCOTS」にだけは、なるなかれ、と述べていますが、こちらは本人が認めるとおり語呂がよくないですね。
■ どんな人にオススメ?
・既存の業績評価システムに不満を持っている人。
■ 関連しそうな本
石原 俊彦, INPMバランススコアカード研究会 『自治体バランス・スコアカード』 2005年11月01日
松山 真之助 『会社を戦略通りに運営する バランススコアカードの使い方がよくわかる本』
ロバート・S. キャプラン, デビッド・P. ノートン (著), 吉川 武男 (翻訳) 『バランス・スコアカード―新しい経営指標による企業変革』
ロバート・S・キャプラン, デビッド・P・ノートン (著), 櫻井 通晴 (翻訳) 『キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード』
柴山 慎一, 森沢 徹, 正岡 幸伸, 藤中 英雄 (著) 『実践バランススコアカード―ケースでわかる日本企業の戦略推進ツール』
■ 百夜百マンガ
絵の暑苦しさには定評のある人ですが、ストーリーも負けないくらいに暑苦しいです。
投稿者 tozaki : 2006年07月12日 07:00
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